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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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愛さえあれば

16/02/16 コンテスト(テーマ):第103回 時空モノガタリ文学賞 【 同棲 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:927

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パメラにむけられるゼンジのまなざしは真剣だった。
「いっしょにすもう」
一瞬パメラはあたりの客たちをうかがった。バーには、多くの異星人たちが酒をのんでいた。自分たちのように、男女のカップルも少なくない。都市では、異なる星同士の男女の、結婚を認めていなかった。恋愛関係はあくまでプラトニックに限定されていた。おそらくこの店の男女もそれは同様だったにちがいない。仕事上や友情のつきあいは奨励されても、こと恋愛に関しては厳しく制限されていたのだ。
「いいの、そんなこといって。みつかったら、都市から追放されるのよ」
「覚悟の上だ」
彼の気持ちがゆるがぬものだとしると、パメラは心から歓んだ。これまでキスひとつ交わさず、手も握らずにきた二人だが、精神的にはすでにすべてをゆるした仲だった。彼がいいださなかったら、きっと自分のほうからおなじことを口にしていたことだろう。
「住居は確保できている。宇宙都市の最北にあるラ・リューシュだ」
「なるほど、あそこなら」
ラ・リューシュは、宇宙都市ができたとき、遠方から飛来する異星人たちのために用意された総合住宅だが、都市で成功をおさめた異星人たちがつぎつぎ退去していきいまでは低所得者や、無職となって行き場をなくした連中が無断で棲みつき、一種のハーレムと化した地域でもあった。
ゼンジもパメラもそれぞれ仕事をもっていて、れっきとした納税者だった。同郷の者同士となら、二人とも引く手あまたで、周囲から祝福される結婚ものぞめたことだろう。しかしパメラは、自分とおなじNS31星出身の連中には、一度として心を動かされたことはなかった。それはゼンジも同様で、地球Y人の女に対する興味は自分でもおかしいほど抱いたためしがなかった。
「あなたをひと目みたとき、強くひかれるものを感じたの」
とパメラは、宇宙観光船内で偶然隣同士になった座席ではじめて言葉を交わしたときのゼンジの印象を、熱い口調で語った。
「僕もあの瞬間に、こうなることを予感していた」
パメラもゼンジも、宇宙都市では禁じられている異星人と異星人の結婚の、先駆者に自分たちがなるのだという意気込みに燃えながら、ラ・リューシュをめざした。
文字どおり、ハチの巣状に夥しく重なりあった部屋のひとつに入るなり、二人は夢中になって抱擁を交わした。
パメラはそして、持参した食材の調理にかかった。出身地はことなっても、口にいれるものに相違はなかった。テーブルにむかいあって、皿にもられた料理を食べる様子は、都市にすむ多くの異星人たちがそうであるように、ごくありふれた人々の食事風景以外のなにものでもなかった。パメラもゼンジも、頑として我々の結婚を認めようとしない都市の法律に、いままたはげしい憤りをおぼえた。異星人とはいえ同じ人間同士が愛によって結ばれることに、なぜこうも頭ごなしに反対するのか、いくら考えても二人には納得がいかなかった。
その気持ちがいっそうつよまったのは、二人がベッドで身をよせあったときだった。体の構造が致命的に異なるとかいうのならともかく、じつにスムーズに二人は交わりあうことができ、そして両者とも最高に満ち足りた気持ちで最後の瞬間を迎えることができた。
「バメラ、僕たちはこれからも、ずっといっしょだ」
「ゼンジ、何があっても私をはなさないでね」
「もちろんだよ、パメラ」
二人はまた強くお互いをもとめあった。
いつしか二人は眠りこんでいたらしい。ゼンジはつけたままの照明の明かりに、ふと目をさました。なにげなく隣りで寝ているバメラをみた彼の目が、そのときギョッと見開いた。まるで全身に入れ墨を施したかのように、極彩色に肌が染まっている。その肌の上を得体のしれないおぞましい見かけのいきものが這い回り………そう、それは明らかに動いていた。やがて体から離れてこちらに牙をむいて迫ってきた。とっさにゼンジはその怪物を手で払いながら、ベッドからとび離れた。パメラの体の異変はそれからも続いた。肩口からいきなり流れだした水のなかから、これまた奇怪な生き物たちが頭をもたげ、太腿には遠近法を無視した家屋や塔がにょきにょきとたちはだかり、建物の一つがパッと炎をあげて燃え盛った――。
「パメラ」
恐怖に震える声で彼が叫ぶと、ベッド上の怪異現象は次第に収束していくとともに、彼女もやがてもとの姿にもどっていった。
「私、寝ていたようね。いろんな夢をみたわ。流れる水のなかから顔を突き出す生き物たち、無数の建物のひとつがいきなり燃え上がったり………」
それを聞いたゼンジは、パメラが寝ているときにみる夢は、現実の姿をとって現われるということをしった。
「バメラ、僕たちまだまだお互いをしらなさすぎる。やっぱり、都市が定めた法律にしたがうことにしょう」
と彼は、力のない声でそれだけいうのがやっとだった。


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