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よしざとめぐみさん

最近になって引っ越し。 知り合いの居ない土地で右往左往。 投稿予定のデータを誤って二回削除。 落ち込んで浮上ならず

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こんにちはハピネス商会です

16/02/14 コンテスト(テーマ):第73回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 よしざとめぐみ 閲覧数:855

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最近ついてないことが多い。
出掛けに雨が振り出し慌てて傘を取りに引き返したら、電車に乗り遅れるし。授業の準備をしてきたつもりが、日を勘違いしていたために意味がなかった。あげくに、彼女からは別れをつげられた。
今日はラッシュの人並みに流され、気づけば反対側の電車に押し込まれていた。これは自分の体力のなさだとは思う。彼女から振られたのも、男らしくないと言われたわけで。
だから見覚えのない駅のホームでイスにもたれて深いため息をついていたとしても仕方ないと思う。
今更学校へ向かっても試験には間に合わないし、まぁどうせ追試になるだろうし。
変に静かなホームに響く幾度目かのため息をついていると、目の前に影が射した。
興味なさげに頭をあげると真っ白なヒラヒラしたものが視界に入る。更によく見れば春色のスーツに、白いストールを巻いた女性が満面の笑みでたっていた。
怪しい宗教かと身構える。
「こんにちは、私わたくし『貴方にハッピーのお届けハピネス商会』のものです」
あ、やばい本当に怪しい宗教だ。
これ以上、嫌なことには関わりたくない。
「間に合ってます」
慌てて視線を外しその場を離れようとした。
「お待ちください」
俺の目の前に回り込むと女性は再び怪しい笑みで逃げ場をふさぐ。助けを求めようと辺りの人を見るが、関わりを持ちたくないのか俺達の方にはけして視線を向けず避けるように歩いていく。
「ずっとため息をついてらっしゃいましまよね?私ずっと見ておりました」
「いや、関係ないですから」
「まぁまぁ、そんなことおっしゃらずに」
笑みを絶やさない女は不機嫌な俺の言葉も態度も気にしていないらしい。
「先程から申し上げておりますが、私ハピネス商会と申しましてご存じないでしょうか」
無視して行こうとしても回り込まれる。
「もちろん金銭などは必要ありません。ハッピーをお届けし、貴方に笑顔が戻ることが私共の使命なのです」
「だから、要らないから」
「けれど、ハピネス商会のご利用は一生に一度になりますので、もしも今お断りをされますと…」
あまりの押し売りに、かっとなる。
女性が相手とはいえ、あまりに腹が立ってきた。
「本当に幸せにできるもんならしてみろよ」
「ありがとうございます」
さっと頭を下げるとぐいっと一歩近づいた。
「なんだよ」
「人によっては幸せの基準が違います。まずは貴方様にとっての幸せをお聞かせくださいませ」
「それは」
口を開いてそのまま閉じる。
信じている訳ではないが、下手な返答をすればかえってこの女の策略に引っ掛かるかもしれない。
悩みを伝えれば神が助けてくれるから宗教に入れと言われるかもしれないし、彼女が欲しいと言えば変な女をあてがわれるかもしれない。
試験に合格させろと言うべきか、それとも一生お金に困らないようにするべきか。
「どうされました?」
深く考え混んでいると女の言葉に我に返り自嘲気味な笑みを浮かべた。
危うく策略に乗るところだった。
「そうだな、じゃあこれから一生笑顔でいられるようにしてもらおうか」
この女の笑みを見ながら、嫌みも込めて返した。すぐに浮かぶであろう女の困った顔を想像し、にやにやと笑う。
自分としても性格が悪いとは思うが、嫌なことが続いて落ち込んでいたところに声をかけた方が悪い。
しかし、女の表情は変わらない。
変わらないどころか驚くことに更に笑顔になった。気味が悪いくらいに。
「まあ、素敵なお願いですのね、もちろん叶えさせていただきます」
背筋が冷たくなる。
笑顔なのに恐ろしいのだ。
更に近づく女。
「一生だぞ、生きている間ずっと笑顔でいられるなんてことあり得ないだろ」
ひきつった笑みが張り付いたまま、否定の希望も込めて後ろへ下がる。
「大丈夫でございますよ、だって貴方はいま笑顔を浮かべていらっしゃるじゃありませんか」
その意味を聞き返す間もなく、更に下がった俺の足から力が抜ける。違う、足の下に地面がなかったのだ。
その意味を覚った瞬間、今まで静かだと思っていた周辺の音が一気に耳に流れ込む。
電車がホームに入ってくるベルの音。
人の悲鳴。
そして、電車のブレーキなのかカネの擦れる嫌な音。
大勢の人間のざわめき。
俺の視界にはホームと電車と女の笑顔。
情けなくも恐怖に笑いが混み上がったが、体に衝撃が走った瞬間にすべては終わった。

「ハピネス商会ご利用ありがとうございました」

女は深々と頭を下げる。



「『貴方にハッピーのお届けハピネス商会』は人生最後の瞬間に最高のハッピーを届けさせていただきます、ハピネス商会のご利用は一生に一度となりますのでよくお考えの上ご利用くださいませ」


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