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デーオさん

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格闘料理ショー

12/08/25 コンテスト(テーマ):第十三回 時空モノガタリ文学賞【 格闘技 】 コメント:4件 デーオ 閲覧数:1649

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【格闘料理ショー】という新番組が始まった。課題の料理をしながら自分のブースから相手のブースにいる対戦相手の料理人に対して妨害をすることが許されるのである。食材を投げつけてもいいし、包丁を投げつけてもいい。ただし、包丁や器具は数の制限を設けている。そして揚げ物は、沸騰した油の中に物を投げつけられると火事になる恐れがあるので禁止事項になっている。

当然防具は必要になる。その選択は料理人に任される。例えばフルフェイスのヘルメットをかぶったり、手袋をしていれば料理がしにくい。最低限防刃チョッキは着用が義務づけられている。

食材ゾーンは共用でそこから左右に調理ブースがわかれていた。本日の料理人赤コーナー中国料理人の源、青コーナーは和食の平だった。日中源平合戦である。本日のお題は夏向き麺料理だ。もちろんグルメを自称する審査員が見守っていて試食をして判定するのである。

ゴングが鳴って、両者が小走りに食材ゾーンに向かった。まず平が真っ赤に熟れた大きなトマトに手をかけた。すかさず源も同じものに手を出す。
「オレが先に掴んだんだ。離せ」
「いいえ私の方が先に触れてました」
なんとトマト一個で日中紛争かとアナウンサーがはやし立てる。
制限時間は45分だった。両者ともこんなことをしている場合ではないと悟ったか、平は掴んだトマトを源の顔にぶつけて、鮮魚コーナーに走った。源は曲がったキュウリを平に投げつけた。まるでブーメランのような軌道を描きながらそれは平の後頭部を直撃した。

工事用ヘルメットを被っていた平は、ちょっと頭に手をあてたが、そのまま大きな真鯛を掴んみ、乾麺の稲庭うどんを手にして調理場に向かった。そしてすぐに野菜コーナーに戻り、トマト・きゅうり・ナスという夏の定番野菜を選んだ。手堅く素早く料理し、残った時間を元の料理妨害にあてる腹づもりのようだ。源もまた同じ作戦か、鶏肉、キュウリ、鶏卵などを選んで、麺は生麺を使う様子だ。

平はとりあえず出刃包丁を使う下ごしらえを済ませると、包丁を持って食材ブースに行き源の様子を窺った。背中を見せている。チャンスだ。平は出刃包丁を源の太腿目がけて投げつけた。観客がざわめいたのを敏感に察した源は後ろを振り向き、飛んで来る出刃を中華包丁で叩き落とした。源はそのまま中華包丁を投げつけようとして、かろうじて踏みとどまった。まだ使わなくてはならない。その間に平は自分の調理場に戻った。

源はコショーの瓶から中身をそっくりラップに移して、簡易爆弾をこしらえると、平に出来るだけ近付いて投げつけた。しかし、丁寧にくるみ過ぎたのか、平のそばにぼてっと落ちただけで、粉が舞い上がることは無かった。ん? 面白そうだと、荒川は小麦粉3sほどをビニール袋に詰め替えて、口は開けたままで源目がけて投げつけた。

それは航空ショーのアクロバット飛行のように空中で白い煙の線を残しながら源の足元に落ちた。舞い上がる白煙。一瞬視界を失った元は大きな中華包丁を団扇のように使って視界を確保した。凄い腕力だ。それを見た荒川は、格闘ではかなわないと料理に専念しようと思った。時間も残り少なくなっている。

カンカンカンと残り5分を知らせるゴングが鳴った。

源はほぼ料理を終えようとしていた。棒々鶏と麺に、あとは巧妙に本物に似せたフカヒレスープをかけるだけである。妨害するなら今だと空になった中華鍋を盾がわりにし、中華包丁を手にして平の方に近付いて行く。

一方、平は茹でて水洗いした細目のうどんに、薄く削いだ鯛を載せ、茹でた野菜、生の野菜を盛りつけていた。そして特製タレを手にするために横に一歩動いた時、もの凄い音がした。平は(しまった、料理に夢中になって源のことを忘れていた)と思いながら音のした方を向いた。綺麗に盛りつけた器が割れ、麺や野菜が飛び散っていた。源の使っていた中華包丁が床に転がっていた。

平は手にしていたタレの入った鍋とお玉を持ったまま源の方に向かった。源は勝利を確信したように笑顔だった。料理の前でガードするように立ちふさがった。目一杯近付いたところで持っていたお玉を投げつけた。源が横に少し動いて逃げた。その僅かな隙を目がけて平は鍋ごとタレを投げつけた。あとはスープをかけるだけだった源の料理に平のタレがかかった。

平は急いで戻り、散らばった料理を新しい器に移し替えた。タレが無い。平は咄嗟に醤油とマヨネーズをかき回し、かけた。

ブーッと大きな終了を知らせる大きな音がして司会のアナウンサーが両者を呼び寄せた。

審査結果は源の勝利だった。源の料理本体と平の作ったタレが絶妙の味を醸しだしていると審査員全員の意見が合ったのだった。

ヘルメットを脱いだ二人が笑顔で握手をする。観客が大きな拍手を続けて、なかなか止まなかった。



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このストーリーに関するコメント

12/08/25 デーオ

誤字あり 20行目 元は源の変換ミスでした。

12/08/25 ゆうか♪

ふぅ〜〜 なんだかとっても大変なお料理になったみたいね。笑

それにしてもオチが絶妙の味になっていたとは・・びっくり!

実は私も料理に関する格闘技の話を考えていたので、一瞬ダブルかとヒヤヒヤしたけど、違った! 良かった〜(*^-^*)

12/08/25 ゆうか♪

あ、今気が付いたけど、主人公の名前は平家と源氏からだね!?

12/08/25 デーオ

ゆうか♪さん

早々とコメントありがとうございます。
最初野球にしようかと思ったが2000文字じゃ無理なので、料理にしました。
最後は平和に終えてよかったでしょう(^-^)

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