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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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龍ちゃんプール

12/08/23 コンテスト(テーマ):【 プール 】 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2881

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 鬱蒼と茂る木々、一帯にムーンと熱気が籠もってる。
 それでも良樹は全身に汗を噴き出させながら、道なき道を前へと進む。多分もう少しだろう、目指すポイントに辿り着けるのは。

 それは十日ほど前のことだった。ネット内の航空写真で遊んでいた時に見つけたのだ、満々と水を湛(たた)えた青い泉を。山あいを細い清流がくねくねと縫っていた。それはそのそばにあった。
 だが拡大してみると、明らかに長方形。どう見ても自然にできたものではなく、人工物のようだった。
「これって、まるでプールじゃないか。なんでこんなところに?」
 こう疑問を持ってしまうと、もういても立ってもいられない。それは何かと自分の目で確かめたい。
 さらに検索すると、昔、この辺りに龍神村と呼ばれる村落があった。しかし、時の流れの中で、山の人々は町へと移り住み、ついに廃村となった。

 だが、なぜこんな人住まぬ山奥に大きなプールが。しかもわざわざ清流の脇に? ひょっとすれば、村興しだったのかも? 良樹はそんなことを思い巡らせながら、ここまで出掛けてきた。

 朽ち果てた村を通り過ぎ、深い木々の合間をくぐり抜けやっ川へと下りてきた。そこに航空写真通りの青いプールがあったのだ。
「これってスゴイなあ、まるで遺跡だよ」
 良樹は感嘆しながらプールを覗き込んだ。だが底が見えない。ひょっとすれば底なしかも。少し恐い感じがする。それでも良樹は泳ぎたいという衝動に駈られ、リュックを近くの椅子に放り投げた。しかし、ハタと気付く。
「えっ、なんでこんな所に、椅子が? 誰もいないはずなのに」
 辺りを見渡してみると、向こう岸からこちらをじっと窺(うかが)ってるヤツがいる。その連中の姿は身体は緑色、そして頭に皿を乗せて甲羅を背負ってる。滑稽な輩(やから)たちだ。
「それにしても奇妙な所に来たもんだ。カッパがいるなんて……」
 今ある状況が読めてきた。

 そんな瞬間に、ピカピカピカ……ドカーン!
 これぞ本当の青天の霹靂。夏の青空に閃光が走り、近くに落雷した。そして、瞬く間に山の清流に暗雲が立ち込めた。それからプールの水面は大きく波打ち、高く盛り上がった。
 良樹がそれに目を取られていると、黒くて長い生き物が天に向かって跳ねたのだ。いや、空中に飛び出したと言った方が当たっているかも知れない。良樹はぶったまげた。
 頭は駱駝(らくだ)、胴は蛇。背中には鱗が。そして手の平は虎で、爪は鷹。喉の下に逆さに生えた一枚の鱗、逆鱗が目視できる。そんな爬虫類に似た生物、そう、龍が頭上でぐるぐると舞っている。良樹はもう生きた心地がしない。そんな良樹にドラゴンが声を発した。

「なあ、良樹、よくぞこの山奥まで訪ねて来てくれた、礼を言うぞ」
 良樹は耳を疑った。しかしこれでホッとしたのか、適当なことを口走ってしまう。
「龍ちゃんプールで泳ぎたくって、来てしまったよ」
「ハハハ、良樹はいつも調子が良いのう。龍神の滝壺が土砂崩れで埋まってしまってのう、村人たちが気を利かせて、この龍ちゃんプールを作ってくれたのじゃ」
 こんなドラゴンからの話しに良樹はふんふんと頷くだけだった。しかし、ドラゴンは人間と喋るのは久し振りだったのだろう、嬉しそうに続けてくる。
「なあ良樹、見たところオマハンは、まだまだ欲でギラギラしちょるぜ。苦しいんとちゃいまっか? ここに人間の欲を封じ込める如意宝珠(にょいほうじゅ)、つまり龍玉があるんだべ。よってもって、おまえの醜い煩悩一つを封じ込めてやるちゃ」
 こんな方言ごちゃまぜのドラゴンの進言に、良樹は思わず「ご出身は?」と訊きそうになった。

 しかし、これもやりたい、あれも欲しいの、ガツガツした現代生活に疲れてるところもあったため、「はい、それではお言葉に甘えて……、名誉欲を捨てます」と軽く返してしまった。
「はあ? 名誉欲? 良樹にとって、一番縁遠いのが名誉だぜ。そんな欲より、今一番カリカリきてる金銭欲なんかをあっさり捨てたらどうじゃろ?」
 しかし良樹は譲れない。
「いやいや、まだ生活のために金銭欲は捨てられません。無難な名誉欲あたりでご勘弁を」
 良樹が頼み込むと、ドラゴンは「まあ、仕方がないか」と呟いて、良樹の頭上で息を吸い込み、手にしてるドラゴンボールに吹き付けた。
「さあ、これで良樹から一つ煩悩が落ちた。これからの生涯、少し気楽になるぞ。また苦しくなったら、この龍ちゃんプールに来い。邪悪な欲を抜いてやるから」

 こんな異次元的な出来事があってから随分と歳月が流れた。されど、あの山奥の廃村にある龍ちゃんプール、それは今も現存しているとか。ただ少し様子が変わったらしい。
 夏ともなると、無欲なヨシキ仙人と呼ばれるお爺さんが現れて、カッパたちやドラゴンと無邪気に泳いでいるそうな。


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このストーリーに関するコメント

12/08/26 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

「龍ちゃんプール」面白いね。
龍神様のプールで泳いだら、魂が浄化されてキレイな心になれそうです。
ファンタスティックでロマン溢れる「龍ちゃんプール」楽しく拝読しました。

12/08/28 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

面白く読んで頂いて、光栄です。

こういう物語に挑戦したかったです。

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