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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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ラプラスの魔眼

16/02/05 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:18件 石蕗亮 閲覧数:2430

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 競馬で大負けをした。
今月の家賃も突込んでしまった。
やばい。
残る金で今月はのりきれない。
今日は馬との相性が悪い、と考えてしまうのがギャンブラーの悪い癖である。
自覚があってもやめられない。
これもギャンブラーの悪癖である。
そして僅かな残金を持ってパチンコ店へと足を向けた。
河岸を変えれば風向きも変わるであろう。
そう思ったものの、それは只の妄想にすぎず、ツイてない時はとことんツイていないものですぐに残金は尽きてしまった。
後から座られた隣の台はずっと当り続けている。
うらめしそうに隣の奴を見ると見覚えのある顔だった。
 こいつ…さっきの競馬場で万馬券当てた奴じゃないか。ツイてる奴はとことんツイてるんだな…。
そう思いながらそいつの顔を見ていたが、おかしい。
普通当ってる奴は嬉しそうなはずだ。なのにこいつときたらとても詰らなさそうだ。
 なんなんだ?こいつ
訝しげに見ていたらそいつと目が合った。
「出ませんでしたか。」
言われてカチンときたが怒る気力も無く「見ての通りですよ。」と応えると
「続きどうぞ、あと5回は出ますから。」
そいつは声を掛ける間もなく、それまで出ていた分を持って席を立つと行ってしまったので慌ててその席に移った。言う通り当りは5回続いた。
換金所に行くとそいつとまた行き会った。
「さっきはどうも。」
 「気にしないでください。」
手の平を向けるそいつの表情はやはり詰らなさそうだった。
「具合でも悪いんですか?」思わず声を掛けた。
 「いえ、そういう訳では。」
「しかし、あなた競馬場でも大勝してたでしょう。なのにそんな浮かない顔して。」

 少しの沈黙の後
 「奢りますんで一杯付き合いませんか?」
タダ飯に釣られ私は即答して連れ添った。

「で、何があったんです?」
そう言った俺に「まずは。」とそいつはビール瓶を差し出したので「どうも。」とグラスを向け互いに注ぎ合った。
互いにグラスを空け、もう1度注ぎ合ったところでそいつは語り始めた。
 「私ね、未来が視えるんですよ。」
「唐突ですね。超能力者ですか?」
 「いえ、いや、まぁ、今はそんなもんですかね。元々ではないんですよ。」
「修行か何かで身に付けたんですか?」
 「いや、譲ってもらったんです。」
「誰に!?」
 「わかりません。」
「え!?」
 「私もね、こんな風にギャンブルで負けが込んで、もう借金で首が回らなくなって首でも吊るしかないって時に、その先代というべき人に声を掛けられたんです。」

 直後、俺の脳裏には御都合主義な妄想が疾走した。
この話の流れだと次は俺にその能力を譲るってくるんじゃないか!?
 「実はですね。」
「はいっ!」相手の台詞につい大声で返事をする。
 「貴方にこの能力をもらってほしいんですが。」
キターっ!!来ました!来ましたよ!!
うぉーっトリ肌立ってきた!!
「喜んで!!」
 「ちょっと待ってください。いくつか注意事項があるんで、それを聞いてからの方が良いかと。」
「なんでしょう。教えてください。」気持ちはもうもらった体である。
 「視える未来は自分の未来だけです。」
「はい。」
 「見えた未来は変えることができません。」
「はい。」
 「見えていない未来は当然ですが変わる可能性があります。」
「当然ですね。」
 「この能力は眼にラプラスという悪魔が宿るためだそうです。」
「悪魔ですか?」
 「実際見たことは無いんですが、能力を使う度にその悪魔に命を削られ最後は自分の死が視えるそうです。」
 「え!?」
「ですから自分の死が視える前に能力を他人に譲らないと死ぬ未来を変えられなくなるんです。」
 「あ、なるほど。だから浮かない顔を。」
「そうなんです。借金は無くなりそれなりに蓄えもできました。しかし、いつ自分の死が見えるかと思うと、もう精神的に辛くて。で、如何ですか?」
 要は死ぬ未来予知を見る前に他人に譲ればいいんだろ。
少考した後「喜んで。」と応えた。
直後パチンと瞼の辺りで何かが弾けた。
瞬きする俺を見て「あ、今移りましたね。」と言われた。
 「因みに視える未来は30分位先なんで宝くじは無理です。競馬やパチンコくらいしか儲けられなかったです。その場に行って眼を凝らすと見えますから。いやぁ、おかげですっきりしました。」
そう言ったそいつの顔は晴々としていた。

 翌日から俺は儲けまくった。
近所のパチンコ店に開店から閉店まで居続け、次々と台を変えては当り続けた。
それが1ヶ月も続くと怪しまれるのは当然だが、有頂天になっていた俺は周囲の反応に気付かなかった。
「お客様、ちょっとよろしいですか。」
声を掛けられ振り返ると強面の店のスタッフが3人で俺を囲んでいた。
腕を掴まれ引っ張られた直後、路地裏で息絶える自分が視えた。
 


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このストーリーに関するコメント

16/02/06 クナリ

人の欲と業、石蕗さんらしい主題が軽妙に書かれていて読みやすく、面白かったです。
教訓めいたり必要以上に酷にならず、シンプルなラストも好きです(悲しいけれど(^^;))。

16/02/06 石蕗亮

クナリさん
コメントありがとうございます。
らしいと言われ嬉しいです。少し表現を変える試みをしているので、自分らしさが残せていれば良かったです。
今回もいつもの如く文字数過剰で削る作業で苦労しました。
2000文字ぴったりでまとまりました。
次回、久しぶりに講義を書こうと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。

16/02/07 ラズ

ちゃんとした話作りになっててわかりやすく面白かったです。
特殊能力によるリターンが大きいだけにリスクも相応で、
まさに最後まで人生ギャンブル、主人公はその勝負に負けた
のかなーと思わされました。

16/02/07 草愛やし美

面白い、ラストまで一気に読み楽しめるお作でした。

ギャンブルって勝っても結局収支は、
負けになるとわかっているのにねえ、
負けがこめばこむほどのめり込んでしまうもの。
それって呪われた魔術にかかったようなものです。
ギャンブルという魔に陥っているときに
この男が現れれば誰もが主人公のようになってしまうでしょう。
納得できるだけに、嗚呼って溜息が出てしまいました。

16/02/08 石蕗亮

ラズさん
コメントありがとうございます。
何事も適度があるというオチです。過度になると反動(リスク)が大きくなるというのは往々にしてあると思います。

16/02/08 石蕗亮

草愛やし美さん
ギャンブル自体が魔物とはその通りだと思います。
この男のような存在は実はそこら中に居ます。
ただし本当に能力をもっているわけではない詐欺なので相手にしてはいけませんが。
さて、この魔物の正体は。次の講義にて描かせていただきました。

16/02/13 石蕗亮

小狐丸さん
実際魔術能力の継続発動で長時間は難しいと思います。
発動条件を満たすための特殊行動が持続できないためです。
専門的な説明になるので端折りますが、現実的には30分でも長いと思います。
おっしゃるようにオチに絡めるための30分設定でした。
読みやすかったのであれば嬉しいです。最近の自己課題です。
人間の感情模様の表現も褒めて頂き嬉しかったです。
ありがとうございました。

16/03/02 光石七

拝読しました。
ギャンブラーの性(さが)や能力を譲ってもらう際の気持ちの高ぶり方など、いかにもありそうですね。
シンプルなオチもお見事です。
軽妙な語り口で読みやすく、とても面白かったです!

16/03/12 斗真

拝読致しました。
1回で良いからラプラスの魔眼欲しいですね。
1回で良いから...。

16/03/13 石蕗亮

光石七さん
コメントありがとうございます。
今回は結構ノリノリで書きました(笑)
お褒めいただきありがとうございます。

16/03/13 石蕗亮

斗真さん
コメントありがとうございます。
欲しいですよね(笑)
一回でいいから。よく分かります!

16/03/14 白虎

拝読しました。
ラプラスは確率を操り100%の確定運命をだすものと思っていましたが講義と合わせて読んでなるほどと思いました。面白かったです。

16/03/14 夜降雪都

こんな能力貰えるならテンション上がりますよね!
一カ月で寿命尽きるなんてどれだけ未来を見たんでしょうね。
でも使い過ぎる気持ちも分かる気がします。

16/03/16 石蕗亮

白虎さん
コメントありがとうございます。
私も最初は確立変更の能力だと思っていましたが、調べてみたら講義にあるように確定した未来を知っている知性体という仮定存在でした。
ですので使用者の願い通りに未来を変えるのではなく、確定した未来を使用者に教えるものとして描いてみました。
楽しんでいただけたようでうれしいです。

16/03/16 石蕗亮

夜降さん
今回登場人物の年齢は考えていませんでしたが、言われてみると結構な使用料取られているように感じますね。
残り寿命50年だと仮定して1ヶ月で尽きたとすると1日で約1.7年の使用。
パチンコの営業時間が約14時間ですので1時間当たり44日の使用料になりました。(コメント書きながら計算機たたきました)
結構な使用料ですね。笑
割りに合ったんでしょうか?

16/03/20 滝沢朱音

とてもおもしろかったです。
「喜んで!!」が某居酒屋風?で、笑ってしまいました。
ラプラスを知らなかったので検索して、ラプラスの悪魔を初めて知りました。勉強になりました。
ラストにびっくりΣ(゚Д゚)たいへんなギャンブルになってしまいましたね!

16/03/28 石蕗亮

滝沢朱音さん
コメントありがとうございます。
ラプラスって日常会話には出てこない単語ですからね〜。
ラストはまあ、人生賭けて負けたようなもんですよ。イッツ、ギャンブル!

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