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つつい つつさん

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惨劇、再び!

16/02/04 コンテスト(テーマ):第101回 時空モノガタリ文学賞 【 お茶 】 コメント:6件 つつい つつ 閲覧数:958

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 よりによって、成人式の後にお茶会をやるだなんて、どうかしてる。町のお偉いさんが落ち着いた大人の女性になってほしいと企画したらしい。もう、あの事件を忘れたのだろうか。いや、たぶん知らないのだろう、私達が中学生の時に起こった、あの惨劇を。
 成人式を行う町の公民館は、たくさんの人で溢れていた。もちろん私も参加し、久しぶりに中学の時に仲の良かったリサとエツコにも会った。
「しかし、サキにはびっくりするね。もう、女じゃん。それもめちゃくちゃいい女」
 三人共晴れ着姿だったけど、リサが私を見て感心したように言った。それもそのはずだ。中学の頃の私はバレーボール部で髪はショート、性格も男勝りで、いつもスカートの下にジャージを履いて女の子らしいキャッキャッしたのが大嫌いだった。正直、学校一もてていた。まあ、女の子にだけど。
 相変わらずプニプニでユルキャラみたいなエツコが意味ありげに言う。
「お茶会……行く?」
 私とリサは顔を見合わせる。やっぱりみんな覚えてるんだ。あの時のことを。
 お茶会に行くのをためらっていたけど、高校の友達や大学の友達とも合流する内気づくとお茶会会場に来ていた。会場にはお茶会の場所が設けられ、みんな並んで自分の順番を待っていた。私達も否応なしに並ばされると、いつのまにか昔のことなんてどうでもよくなっていた。そして、しばらく待つと私の順番がやってきた。ちょっとした茶室がこしらえられていて、五人で並んで座った。お茶の先生は年輩のおばさんで少し気難しそうな雰囲気を持っていた。
 先生がお茶をたてはじめたので、そんなもんかとぼーっと眺めていると、私の方をキッと睨んだ。
「みなさんもただ座っているだけじゃなく、集中してくださいね」
 私は、かしこまりながらも、こういう先生ってあの言葉使いそうだなって、悪い予感がした。私はあの言葉を聞くと、あの映画、あのセリフを思い出す。中学の時、師匠と崇め夢中になったあの人を。しかし、この流れはまずいなって思い、これ以上何も言われないように姿勢を正した。だけど、隣の子がつまんなさそうな顔で「早く茶、たてろよ!」って感じでモゾモゾしはじめた。私はやめてくれって隣を睨むけど、全然気にしてない。一番端に座っていたリサが私を不安そうに見る。いや、大丈夫、あんなこと二度と起こらないからってうなづいてみせる。でも、そんなザワザワした雰囲気をお茶の先生が気づかないはずもなく私達を見てきつい口調で言った。
「お茶というのは、ただお茶を飲むだけじゃないんですよ。一連の動作が重要なんですよ」
 隣の子はケッて顔してたけど、やばいやばいやばい。この先生言いそう。こういう時言いそう。あの言葉を。だめだ、耐えなきゃ。もし、あの言葉を言われても耐えないとダメだって、私は歯をくいしばり、両手をギユッと握った。
「わかりますか? 心を落ち着かせて無になるのです。何も考えてはいけません!」
 あっ……言った。
 Don’t Think,Feel!
 私の脳裏に映像が浮かぶ。反射的に勢いよく立ち上がり、唇をぬぐいポーズを決め叫ぶ。
 オチャァアアァアア ウオォォオゥオォオゥゥウ!
 やっちゃったと思った瞬間、リサも立ち上がり、私の真似をする。それに呼応したように私と同じ中学だったものがその場その場で叫び始める。すると、つられたのか同じ中学じゃない人も、高校の友達も、全然知らない人まで次々と叫び始める。
 オチャァァァ! オチャァァアァァ! オチャアチャァァァ!
 会場中に奇声がこだまする。振り袖姿の女性が次々と雄叫びをあげるという異様な光景が繰り広げられた。先生は口をポカンとあけたまま固まり、今にも倒れそうだった。結局、中学の時の体験お茶会で繰り広げられたあの惨劇がまた再現された。
 逃げるように会場を後にすると同じように逃げ出してきたリサやエツコが不思議と満足そうな顔をして私に言う。
「やると思った」そう言われながらも仕方ないじゃないって思う。考えるなって言われると、ついあのシーンが浮かぶんだ。テンションがあがるんだ。抑えられない衝動が身体を駆けめぐってしまうんだ。
 成人式で起こった今日の惨劇は今年のお騒がせ成人として、全国のニュースで流れることとなった。だけど、ニュースを見た人もアナウンサーもコメンテーターも、なぜこんなことになったのか理解出来ないみたいだった。TVの映像では最初に叫んだ私じゃなく、五番目くらい叫んだ同じ中学のアミが映されていた。雄叫び女子として有名になったアミは今ではバラエティにひっぱりだこの有名人となった。人生なにがあるかわかったもんじゃない。だけど、私はもっと修行してお茶会で叫ばない大人の女になろうと心に誓った。


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このストーリーに関するコメント

16/02/05 南野モリコ

つついつつさん、拝読させて頂きました。

お茶というテーマから想像できない面白さでした。
つついさんのお茶は「楽しいお茶」「みんなのお茶」ですね。

ところで、
私は時空モノガタリの利き茶パーティーの
スタッフとして手伝わせてもらっています。

Facebookの利き茶パーティーイベントページにて
『惨劇、再び』のリンクを貼らせて頂きます。

Facebookをされているようでしたら、
是非ご覧ください。

突然のご連絡で失礼致しました。

**ミナミノモリコ**

16/02/05 つつい つつ

ミナミノモリコ 様、感想ありがとうございます。
オチャァァと叫んでるイメージが頭に浮かんだので、勢いで書きました(笑)
Facebookはしてないのですが、リンクありがとうございます。
スタッフご苦労さまです。頑張ってください。

16/02/05 土井 留

爆笑しました。
着物の女性の顔がブルース・リーの濃い顔に変わりました。若い人にはわからないかもしれませんね〜。

16/02/07 つつい つつ

土井 留 様、感想ありがとうございます。
何も考えるなとか、無心になれ、とか言われると、ついついブルース・リーが浮かんでしまうので書きました。笑ってもらえて嬉しいです。

16/02/09 滝沢朱音

「オチャァアアァアア」!
うわ、来ましたね…!
この「惨劇、再び!」という、重金属な邦題っぽいタイトルからは
想像もつかなかった…完全にやられました。
ごちそうさまでした!( ^^) _旦~~

16/02/10 つつい つつ

滝沢朱音 様、感想ありがとうございます。
ゆるい内容なんでタイトルはベタなホラーみたいなもので、落差をつけました。真面目な内容よりコミカルなほうが投稿するのは恥ずかしいですが、楽しんで書けました。

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