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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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どちらが先に

16/02/03 コンテスト(テーマ):第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:860

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出撃命令はでた。
銃をかまえたオサムは、やはり隣で戦闘態勢に入ったプジョーに声をかけた。
「おい、お前と俺のどちらが先に敵を倒すか、金貨一枚賭けないか」
プジョーは目を光らせた。
「いいだろう。ところで、給料前だというのに、金貨はあるのか」
「もちろん。元手なしに賭けはやらんさ。お前はどうだ」
プジョーは胸のポケットからまばゆく輝くコインをとりだしてみせた。
「いいだろう」
戦士たちが待機する基地の扉が、重々しげに上りはじめた。
この惑星の基地にオサムたちが宇宙艇で運ばれてきたのは、いまからひと月前のことだった。かれらは全員選りすぐりの戦闘隊員たちで、これまでにも数々の惑星の侵略に参加してきた猛者ばかりだった。
そのかれら戦士たちも、この惑星の住人たちには手を焼いていた。闘争精神に富み、その使用する武器もまた殺傷力がきわめて高かった。もっともだからこそみんなは闘志を燃やした。どちらが生きるか死ぬか。その覚悟があればこそ、オサムたちはこれまで多くの惑星で死闘を繰り返しては勝利をものにしてきたのだ。
戦闘のさなかに賭けをするのも、いつものことだった。戦いに勝利して歓喜するのは上層部のおえらいさんたちで、かれら前線の戦士たちの喜びは、賭けに勝ってえられる金貨一枚の重みだった。
扉は完全に開いた。みんなはいっせいに基地の外にのりだしていった。
基地周辺の、焼き払った大地を突き進むオサムとプジョーは、さすがに緊張が隠せなかった。敵はまちがいなく、前方にたちはだかる赤味をおびた密林地帯に潜んでいる。敵は、青みがかった皮膚をのぞけばほぼ人間と同じ体格だが、際立った特徴が一つあり、それはかれらの首がのび縮みすることだった。オサムたちが『青首野郎』と呼ぶ所以だった。その首がどのような進化発展の結果でできたのかは定かではないが、首がのびない我々にくらべれば、視野の点だけみてもかれらの方が有利なのは疑いようがなかった。
オサムのすぐそばを、光の矢がかすめ過ぎた。密林地帯に踏み込んでいくらもたたない間のことだった。
「ふせろ。敵の攻撃だ」
プジョーが叫びながら、前方にむかって銃を放った。茂みが、蔓が、枝が、次々にはじけ飛んだ。オサムも地面に腹ばいになりながらしやにむに撃った。他の地点からも銃撃音が響いてくるところから、あちこちで戦闘がはじまっているのはまちがいなかった。
オサムは銃を乱射しながらも、プジョーとの賭けのことは忘れていなかった。プジョーも同じ思いでいるのにちがいない。かれらが、自分たちの相手にしている敵をそれからも執拗に追いかけるのもそれがあるからで、二人は極力そばを離れないようにしていた。
「倒してもいないのに、先に倒したなんていわれちゃかなわんからな」
とプジョーがいえば、オサムも負けずに、
「賭けに勝ちたいばかりに、だれかが倒した敵を、自分の手柄にしかねないのはお前のほうだろ」
そんなやりとりをしながらも二人は、たがいを援護しながら敵の反撃をかわしつつ、密林をつきすすんだ。
急に視界がひらけ、目の前に焼け爛れたような赤黒い巨岩がころがる場所があらわれた。背後には幅広い絶壁がそびえている。
ここまでくるころにはオサムもプジョーも、自分たちが追いかける敵がいつまでも離れずにいることに、何かひっかかっていた。ときおりみせる反撃も、まるで自分たちの居場所を教えるためにやっているようにもみえた。
しかしオサムは、その疑念をふりはらった。敵も死にもの狂いなんだ。ここまで命からがら逃げてきて、とうとう追い詰められたというわけだ。
オサムとプジョーは目配せしながら、前傾姿勢で岩場に迫った。二個の巨岩がもたれあうようにして横たわる間にできた裂け目の中に、うごめくものがあった。
「あの中にいる。援護射撃するから、お前は岩の横にまわって手榴弾を投げこめ」
「俺に勝たせるのか」
「しょうがない。非常事態だ」
プジョーは意気込んでかけだした。オサムが穴にむかって撃ち続けているあいだに、彼は巧みに物陰を利用しながら、岩のすき間に忍びより、腰から手榴弾を抜いた。
その瞬間、頭上から襲いかかった光の矢が彼の胸をつらぬいた直後に、その体は爆発を起こした。オサムはそのとき、巨岩の上から首のない敵が銃を構えているのをみた。穴の中のいた頭は岩の間をするすると縮んでもとの体の上にもどった。
「プジョー」
夢中で飛び出してきたオサムに敵の攻撃がたたみかけた。激痛にうめきながら倒れたオサムの前に、二人の敵かたちはだかった。
その一人が、衣服のポケットからとりだしたなにやらきらめくものを、たったいまプジョーとオサムを射止めた者に渋々手渡すのがみえた。
異星人の表情にはくわしくないオサムでも、その者が賭けに負けて地団太を踏む様子ぐらいは容易に察することができた。




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