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seikaさん

かつては女子中学生でした。

性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
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不思議なアパート

16/02/02 コンテスト(テーマ):第101回 時空モノガタリ文学賞 【 お茶 】 コメント:0件 seika 閲覧数:817

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私は六歳までをあの石造りのアパート「板井アパート」で過ごした。板井アパートが一体いつ建てられたかだれもしらない。それは遠い太古、人類の誕生とともに存在していたような建物だった。そしてこの当時この界隈ではズバ抜けて高い建物だった。
この雪の深い雪脳市だが、この板井アパートの地下にはマグマと繋がっていて、そして熱い水蒸気が建物内のパイプや坑道を通って各戸や各室に行くようになっている。そんなわけで寒さの厳しい雪脳市にあってこの板井アパート内だけは暖かい幸福が灯っていた。
 板井アパートは六階建てのたてものであり、最上階には時折白い宇宙船のようなスポーツカーを乗り回す若い夫婦が住んでいた。一方地下には老人が住んでいる。この老人、一体何歳なのか誰もわからない。しかし向かいのお菓子屋のばあちゃんが子供の頃から老人だったという。この老人、何でも知っている。アパート北側に生えるキノコのうちどれが食べられてどれが毒キノコなのか、何でも知っている。この老人の部屋を通って大浴場に行く。大浴場は天井がドーム型で白い大理石で出来ているのでとても明るく感じる。ここはいつでも暖かいのでバナナや椰子など熱帯の植物が生い茂っている。言うまでもないがこの地下の大浴場がアパートの住民たちの社交場でもあった。
さて、例の老人だが、彼は何でも知っていた。おそらくこのアパートがいつ建てられたのかも知っているだろう。このアパートはおそらく人類誕生時から存在していたのではないかということは誰もが囁いていた。さらに人類誕生の秘密もこの老人は知っているに違いない。人はどこから来てそしてどこに行こうとしているのか、そして人はなぜ存在しているのか・・・そういう永遠の公案に対する答えも彼は知っているに違いなかった。あるとき私はこの老人のところにいったことがある。老人の部屋は地下にあるはずだが窓からはキレイな星空が見えた。たとえおもての空がどんよりと曇っていてもあるいはおもてが雨が降っていたとしてもこの老人の部屋の窓からはキレイな星空が見えることは誰でも知っていた。もちろん昼間でもこの老人の部屋の窓からはキレイな星空が広がっているのだ。星の輝きはおそらく人類誕生のときからまったくといっていいほど変わっていないだろう。老人は私を自分の部屋に入れてくれた。窓からはキレイな星空が見えそし時折流星が横切る。それはあたかも海のようだった。
老人は窓を開けた。すると夜空に白い階段が現れた。老人はその階段を登ってわれわれ人類の故郷に行ったり来たりしていた。
 さてそのアパート「板井アパート」はここからすぐ近くの東原町にいまでもある。ここから石造り四階建ての板井アパートを望むことはできる。しかし実際に徒歩であるいは自転車などで板井アパートにいこうとしとてもどうしてもたどり着くことは出来ない。気が付くと板井アパートの先にある阿部郵便局や庄司醸造所の前に来てしまうのだ。大人になってからはどうしてもたどり着くことの出来ないところ・・・それがあの板井アパートだ。
 

 


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