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海音寺ジョーさん

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超ライトノベル盛衰記

16/02/01 コンテスト(テーマ):第100回 時空モノガタリ文学賞 【 純文学 】 コメント:0件 海音寺ジョー 閲覧数:1109

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「そのねー、ウチねー、あの人の本が好きだわ。なんてったっけ?名前」
「アレっしょ、蚊流葉墨屁太、カルハズミペータでしょ。アタイも読んでるんよ」
 約200文字。ラノベより、ケイタイ小説よりも薄くてチャラい究極の大衆小説、超ラノベという新たな金脈をほじくり当てた屁太先生は、いまや女子高生、女子中学生の大人気を博していた。
「登場人物も3人以上出てこないしねー」
「チョー字数少ないし、絵文字鬼盛りだし、ほんと読みやすいよねー」
「イケメンキャラのさー、ギャグまみれのセリフも超うける」
 
 しかし屁太先生にはこだわりがあって、絶対に紙の本しか出さないのだ。電子書籍は一切出版しない。
「ぼ、ぼくは紙の本にこだわりがあるんです。小さい頃から、虚弱体質でしょっちゅう虐められていたぼくの心を支えてくれたのは、偉大な文学者たちの、熱くも優しい、紙の厚みを握りしめて読む物語だったから」

 屁太先生のポリシーにうたれる読書家、編集者は少なくなかったが、時代が時代だ。またたく間に海賊版が流通し、ただで飛ぶように違法ダウンロードされていった。
「薄いしなー」
「そりゃ、みんなスマホで読むわな」
 屁太はそれでも頑張って、紙の書籍にこだわり続けた。

 売上の低迷で大手出版社も書店も次々と倒産していき、コンビニからはマガジン売場が消えた。実質、紙製の本で残ったのは辺境の図書館や、市政庁で以前から管理維持してた住民票、役場議事録の類、公衆電話ボックスの電話帳、田舎の幼稚園の本棚のストックぐらいであった。

 屁太は私財を擲って自主出版社を立ち上げた。その名は「書肆夏目鷗外」
 日本で唯一の、紙の書籍を発行する出版社となった。
 屁太は、しかし想定できなかったのだが、紙出版文化の衰滅の危機で食いっぱぐれた文士たちが蟻が砂糖に群がるように、書肆夏目鷗外にドッと押し寄せたのだ。
「ワシの本も是非、復刻してくだされ」
「いや、私の本こそ」
「いえ、拙者の作品こそ世に残さねばならぬ日本文学史に名をとどめる至玉の・・・」
 屁太は叫んだ。
「なんだよ!まだまだ需要はあるじゃねーか」
 屁太は全額自費出版なら、という契約で順繰りにオンデマンド式で本を拵えていった。
「うーん」
 文士たちは唸った。
 結局、書く人=読む人だから利益は生まれないのである。専業作家はこの世から消えた。一握りの電書ベストセラー作家をのぞいて。

「くっ、もはやここまでか」
 屁太は、電書作家に転向した。もともと海賊版が流通しすぎていたために、屁太の一大決心と人生転針に気づく読者はいなかったのだが。
 屁太は作風を変えた。苦悩とか葛藤が馥郁と絡む、真剣な長編小説を指向した意欲的野心作に。
 しかし、それらは全然売れなかった。


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