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三条杏樹さん

好きなものを好きなときに。

性別
将来の夢
座右の銘 人間だもの。

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不定期アンフェア

16/01/27 コンテスト(テーマ):第73回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 三条杏樹 閲覧数:997

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やりたかったことと違う。


そう言って肩を落とす友人の気持ちが、痛いほどに分かった。
どんなに情熱があっても、どんなに愛情があっても、全ての願いは叶わない。それが現実なんだと悟るには、私達はまだ大人ではない。

世界が自由になった。しかし多くの人が自由を選択できるようになり、自由に勝負に挑むことができた分、個人の失敗する確率は上がった。

勝つものと負けるもの。
何が違うのだろう。
才能?技量?要領?努力?


目の前の友人が、とても努力が足りないとは思わなかった。
それでも成功する人間と失敗する人間がいるのは、誰の願いなんだろう?

ただ友人の涙がはらはらと落ちる様子を見るだけで、なんの言葉も浮かばなかった。自分が器用な人間ではないことは分かっていた。
ましてや、同じ経験をしているというのに。

自分が負けて、他が勝つ。
憎らしい。妬ましい。羨ましい。
そのとき周囲が自分に言った言葉は「努力不足」だった。
そうか、と納得する他なく、私は10年余り抱いていた夢を105回の挑戦の末、諦めた。

夢を諦める。好きなものを諦める。
勝者に敗者の気持ちは分からない。

だから、私には友人の気持ちが分かる。



鼻をすすり、目を真っ赤にして立ち上がった。どこへ行くのかと尋ねると、勝者たちに祝いを述べなければと言った。

歯をくいしばって歩き出す。
友人は、己の年齢より倍の数を挑戦し、そして敗れた。
その末に別の道を選ばざるを得なかった。
その道が正しいのかどうかは分からない。合っているのか否かは誰にも分からない。

だけど、君がふとしたときに、ふと昔を思い出してふと夢を諦めたことを思い出したとき。
それは君の力になるだろうか。

ぎこちなく成功を告げる彼らに、満面の笑みでおめでとうと言う君の、その感情の名前はなんなのだろう。
だけど、君のその腫れた笑顔が、敗れたときの態度が、いつか君の大きな財産になって、君の道を誇りにする唯一の感情なのだと、思う。


やりたかったことと違う。
その思いを背負って生きる君の、重い肩は私が十分理解している。
泣かないでほしい。でも、羨ましがってもいい。後悔しないで欲しい。でも、妬んでもいい。

君の挑戦した勇気と諦めた勇気は、全部私が覚えているから。


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