1. トップページ
  2. 道の先

憂苦トウヤさん

書き物はじめました。 Twitterやってます →@yu_kuto_ya

性別 男性
将来の夢 何もないよ
座右の銘 安定第一

投稿済みの作品

0

道の先

16/01/23 コンテスト(テーマ):第100回 時空モノガタリ文学賞 【 純文学 】 コメント:1件 憂苦トウヤ 閲覧数:1012

この作品を評価する

いつからだろう。
僕はいつから『僕』になったのだろう。
僕はいつから『夢』を見失ったのだろう。
僕はいつから『道』を歩くのをやめたのだろう。
物語の始まりは高校生だった。
まだ自分のことを俺と言っていた。俺という言葉はその人の自信の表れだと僕は思ってる。つまりは、高校生の自分はまだ自分に『自信』を持てたのだろう。
あの時は何もかもが輝いていた。何をしても成功すると思っていた。失敗なんて恐れない。自分は正しいのだと。なんの迷いもなかった。
そんな俺が選んだ道は『演』の道だった。
どこにでもよくある演劇部でひたすら何かの役を演じてた。そして演じてる自分に酔っていた。そんな自分を心の底で愛していた。
自分が見えないからこそ、たくさんの可能性を潰した。そしてそのことに気づかなかった。気づかなかったからこそ、自分の進む道を『夢』と称した。
自分のまだ先の見えない道を『夢』の一言で片付ける。たったそれだけで、俺の人生はとてもキラキラ眩しいものに感じた。眩しいからこそ間違いがないと思っていた。
そんな俺は高校を卒業のも我慢できず東京に出た。東京で自分の力を魅せたいと思った。
しかし、世の中そんなに甘くない。
俺はことごとく失敗した。オーディション、人付き合い、制作活動。何もかも失敗した。そしてそれを反省しなかった。一つ一つ馬鹿みたいに時間をかけて、愚痴をこぼすだけこぼして、何一つ反省をしなかった。つまりは、何も学ばなかったのだ。
しかしそれにすら気づかない愚か者の俺は、それでも道を進んだ。自分は正しい。何一つ間違っていないと何の迷いもなく進んだ。
そんな俺はある時、『愛』を知った。相手は同じ『道』を歩む者。それ以上も以下もない。
俺は自分が彼女を守らないとダメだと自分に言い聞かせました。自分のために進むのではなく、他人のために守ることを選びました。すると俺は、いつの間にか『僕』になってた。
しかし傲慢な僕は、自分の夢を諦めずに愛も手に入れようとしました。
僕ならできる。根拠のない自信ばかりが彼を前に進ませました。何の意味もないことを経験と称して、何の取り柄にもならないことを個性と言い張って、足掻くように前に進んだ。
誰にでもできる、どこにでもいる存在。それを認めたくなくて自分を高く見せました。
しかし、高ければ高いほど、低いところと言うのは見えないものだ。
自分を高く見せるが為に、自分という存在より下がどのくらいか見もしなかった。下がわからないからこそ、自分の客観的立場を理解できなかった。故に僕は『演』の世界で嫌われていった。
常に傲慢で他人を見下す人間が好かれるわけがない。これは当たり前のことだ。だけど僕はそれすら理解できなかった。なぜなら、僕には彼女がいたから。
彼女はとても優しい人だった。だからこそ僕の全てを受け入れてくれた。良いところも悪いところも、全て。
しかしそれは僕にとって足枷でしかなかった。なぜなら悪いところがわからなくなり、前に進む意思を邪魔するからだ。自分が認められる為の世界で、1人に認められて満足したのだ。それで十分だと思ったのだ。
その瞬間、僕は『夢』が無くなった。
落とし穴に落ちて消えたように無くなった。
彼女がいてくれれば良いと思ったからこそ、その為に僕は頑張るのだと決めたからこそ、僕から夢が消えたのだ。
そう考えると人間とはなんとも簡単な作り方だと思う。原動力なんてなんでもいいのだから。大事なのは自分を突き動かすだけのパワーを持つ何か。それさえ満たされれば何だっていいのだから。少なくとも僕にとっては『夢』という原動力はその程度のものでしかなかったようだ。
そして僕は彼女のために生きてきた。何ヶ月、何年もの時間と、あまりにも莫大なお金をかけて愛を育んだ。それが正しいと思ったからこそできたのだ。
だがしかし、それは永遠ではなかった。
ある日忽然と、彼女は消えた。
原因は些細な喧嘩だった。しかしそれが亀裂を生み、全てを崩壊させたのだ。
彼女のスマートフォンに溜まる僕の通話履歴と留守電。しかし彼女はそれを取ろうとしない。いや、取れないと言った方が正しかったのか。
彼女は、喧嘩して別れたその日に死んだのだ。
僕が謝ることもなく、雨の中車に轢かれたそうだ。僕がそれを知ったのは一週間後のニュースだった。そこには彼女の名前と写真があった。間違いようのない姿だった。
この瞬間、僕はやっと学んだ。
人生は正しいことだけじゃない。むしろ理不尽なことしかないと。
では正しいことがないならばどうすればいいのだろう?自分が今まで糧にしてきたものはなんだったのか?わからなくなった。
その瞬間、彼は『道』を歩くのをやめた。
手に取ったのは縄とイス。うまく縄を首にかけて、イスから落ちた。
最後に彼が聞いた音は、どこかの学校のチャイムだった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

16/01/23 芝原駒

拝読しました。
『何の意味もないことを経験と称して、何の取り柄にもならないことを個性と言い張って』という文章が巧みだと感じました。俺から僕への転調部分の文章が読みづらかったです。語り部の自己満足で話が終始収束しているせいか、結末も他者への自己主張のような身勝手さに感じられ読後もんやりとした気持ちになりました。

ログイン