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しーぷさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 疲れない程度にがんばる

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レンチン3分

16/01/18 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:2件 しーぷ 閲覧数:994

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「別れよ」
 女の言葉に男は固まる。
「なんていうか、女慣れ? してなさすぎて。まともに喋ってもくれないし。顔は好きだったけど、意味ないっていうか」
 女が部屋から出ていった。男は黙って俯いていた。

 異性とまともに喋れない俺は、女の子と普通に喋る男たちが理解できない。
 もちろん女は好きだ。真面目な顔して、街行くかわいい子を見つけてはひわいな視線を飛ばしている。だが、いざ向かい合ってみるとどうだ。妄想の中の俺なら、壁ドン、股ドンから顎クイへとコンボを決めているところ、現実ではもじもじ、もごもご。
 こんな俺に告白してくれた子にも、ついさっきフラれてしまった。
 告白されたから付き合ってみたけれど、もし俺の理想の子だったらもっと積極的に行けたのでは。手放したくないと強く思える子なら、部屋から出ていく彼女を引き止められたのでは。

 ため息をひとつつきPCを立ち上げ、目的もなくネットを泳いだ。
 30分ほどした頃、男の手が不意に止まった。
「理想の彼女、届けます?」
 とあるサイトの広告。興味をひく文言。ちょうどそんなモノが欲しいと思ってたところだ。すぐさまクリックした。
 飛んだ先は通販サイト。画像はなく、価格と先ほどの文言。商品名にはレンチン彼女。
「2万……」


 大学から帰ってすぐ、インターホンが鳴った。届いた箱を開いてみると、中には冊子が1部、さらに小さな箱、それと人型の紙。
 男はまず冊子を開いてみた、書かれていたのは理想の彼女の作り方。人型の紙に彼女に求めるものを書き込んでく。容姿性格能力。なんでもいいらしい。
 男は中に入っていた小さな箱に視線を移した。
 中に入っていたモノを冊子を見ながら組み立てていく。できたのは小さな電子レンジ。
 男は自分がばか正直にこんなものを組み立てたことに笑った。冊子によれば、この電子レンジに要望を書き込んだ紙をいれて3分、するとびっくり理想の彼女ができるという。
 男はふっと鼻で笑う。ばかばかしい。騙されたんだ。こんなものに2万。
 しかし2万。2万もあれば部屋に女の子を呼べるだろう。指名もできるかもしれない。
 男はふらふらと立ち上がりペン立てからボールペンを1本抜き取った。組み立てた電子レンジの上に乗せておいた紙に書き込んでいく。
 顔は、あの芸能人にしよう。胸はもちろん大きいほうがいい。優しくて従順で。
 男はありったけの欲望を書き込んだ。表と裏。隅から隅まで。

 コップに水をため、そこに紙を沈めた。ちょっと膨らんだ気がする。コップを電子レンジに入れて、3分までしか目盛りのないタイマーをめいっぱい回した。

 あと1分。

 30秒。

 コップの中の水がぼこぼこと沸騰を開始した。その激しさにコップがことことと揺れる。
 とっさに壁際まで逃げた。

 次の瞬間、ポンっという音とともにレンジが開き真っ白な蒸気が部屋を覆い尽くす。頭を抱えてうずくまる男。
 少ししてから男は恐る恐るレンジの方を見た。そこには裸の女性。紙に書き込んだ通り、理想がそこにいた。男が立ち上がると、彼女と目があった。
「私の名前は」
 彼女が最初に発した言葉だった。男が目のやり場に困っていると、女はまた同じ言葉を発した。奇妙な状況に男は困惑した。落ち着け。自分に言い聞かせる。
 かけてあったパーカーをとり、女の肩にかけ名を与えた。

 まさに理想。
 紙に書き込んだもの、全てがそこにはあった。

 女性は苦手だったのに、不思議と気を遣わなくてすんだし、居心地が良かった。笑顔が絶えなかった。2人でただコンビニに行く。それだけのことに幸せを感じられた。

 しかしそれも長くは続かなかった。レンチンから2時間。トイレに行ったっきり女は帰らなかった。
 分かっていた。考えないようにしていただけだった。いつかいなくなってしまう。当たり前のことだ。
 冊子の最後のページ。使用期限という項目に答えはあった。理想の彼女は作り出してから2時間で自然消滅するそうだ。

 1週間が経った頃、男はレンチンで作った女が忘れられずにまたサイトの購入ボタンをクリックした。

 3度目、4度目。バイトで金を稼ぎ、男はレンチンを繰り返した。不満点を見つけては次の彼女では改善をしていき、限りなく理想を追求していった。

 そんな生活を繰り返していたある日、男は同じ大学の女に告白をされた。
 男はその女の気持ちに適当な返事をして付き合ってみることにした。

 ある日、男はふと思った。目の前にいる女は自分の理想ではない。
 あれも嫌。これも嫌。
 いいところなんてひとつもないじゃないか。どうしてこんなのと付き合っているんだろう。

 女と別れて数日が経った。
 恋することを忘れた、失った男は。
 サイトの購入ボタンを再びクリックした




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このストーリーに関するコメント

16/01/27 光石七

タイトルからコメディをイメージしていたのですが(失礼!)、なんとも皮肉で静かな恐さを感じさせる展開でした。
恋や愛は育んでいく部分もあるのに、レンチンで手軽に理想が手に入ってしまえば、こうなってしまうかもしれませんね。
主人公は今後もずっとレンチンを繰り返し続けるのでしょうか……
面白かったです!

16/02/17 しーぷ

光石七さんへ

大丈夫です、CPUのは大体コメディですふざけてます←
何でも便利な世の中になりつつありますが
レンチンで彼女や友達までできてしまうのかなーと
ほんとはカップ麺のようなインスタント彼女にしようかと思ったのですが
わりとすでにそういうのを考えていたひとがいたようで
3分はその名残(笑)

コメントありがとうございましたm(_ _)m

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