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竜聖炎武さん

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いつもの通勤電車の彼女

16/01/17 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:0件 竜聖炎武 閲覧数:995

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いつもの通勤電車のいつもの車両
そこでいつも見かける女性がいた。
彼女はビジネススーツがよく似合っていた。

僕は彼女と話したことはない。
だから名前も年齢もどこに住んでいるかも知らない。
ただいつも同じ電車に乗っているだけだったが
彼女も僕の顔を覚えてくれているのか
たまに目が合うとにっこりと笑って会釈してくれる。
こちらも会釈で返す。
いつもそれだけだった。


僕は転勤で地方の営業所に配属された。
住むところも通勤電車も変わった。
当然彼女とは会えなくなった。


それから数年後
僕は再びこの町に戻ってきた。
以前と同じ通勤電車。
以前と同じ時間に同じ車両に乗った。
だけど彼女はいなかった。


仕事が終わって帰りの電車
僕は座席に座って本を読んでいた。

ふと前を見るとそこにはあの彼女がいた。

彼女の隣には人柄の良さそうな男性がいて辛そうな彼女を支えていた。
彼女のお腹は大きくなっていた。
辺りを見ると空いてる席はないようだった。

「ここどうぞ」
僕は女性に席を譲った。
「あ・・・すみません、ありがとうございます」
女性は綺麗な声でそう言った。
思えば声を聞いたのは初めてだった。


自宅の最寄り駅で電車を降りた。
改札へ向かって歩こうとしてふと振り向くと
彼女がこちらを見ていた。
僕は彼女に向かって会釈した。
すると彼女はあの時のようににっこりと笑って会釈してくれた。

「覚えててくれたんだ・・・・ありがとう・・・そして幸せにね」


僕は嬉しいような悲しいような気持ちになりながら家路についた。


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