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リアルコバさん

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同窓会

16/01/17 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:694

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「コバか久しぶりだなぁ」「よう純ちゃん」
「あれ〜お前誰だっけ」「あはは禿げたなぁ」

 地元での同窓会なんてものにとんと興味はなかったが、50歳の節目、と云うより近年何人かの友人の訃報などを風の噂で知り(会えるうちに会っておこうか)そんな気になったからだ。
 しかし会場に来て少し後悔した。余りにも皆歳をとり、田舎町の話題は退屈だった。
ところが手持ち無沙汰で作り笑いを浮かべていると、彼女が目の前に現れたんだ。

「お久しぶり私覚えてる?」「えっ・・・みー・・・ちゃん?」
トクトクと鼓動が聞こえ耳の後ろが赤くなるのが分かった。忘れていた遠い昔の私の習性だった。
「良かった覚えててくれたんだ、なら持って来ればよかったなぁ」「何を?」
「池田くんのこと知ってる?」「ん?池田・・・」
昔と変わらぬ若々しい小顔が曇ったことでなんとなく分かった。
「・・・死んだの・・・か」
家が近所だった3人は小学校低学年まではよく遊んでいたものである。


 小学校卒業と同時に隣町に引っ越すことになった彼女を見送ろうと言いだしたのは私だった。それは友人だからとかではなく、一人で見送りに行くことが気恥ずかしくて出来なかったからだ。

『コバはみーちゃんが好きなんだろ、俺は行かないよ』
あの頃多分、私の気持ちは友人にもみーちゃんにもバレていたのだろう。
『違うよ、だって会えなくなっちゃうんだぜ』
渋る池田を説得してたらギリギリの時間になったしまった。
『みーちゃん〜みーちゃん』
駅まで全速力で走ってやっと彼女が改札を抜けるすんでのところで追いついた。
『みーちゃん、あのね・・・あの・・・』
ゼーゼーしながら何を話そうとしたのか、ただ耳の後ろが赤くなっていったのは走ってきた動悸のせいではなかった。
『早ぇーよコバ、コバがどうしても行こうって・・・俺付き添い』
私は必死にポケットをまさぐった。入れて来たプレゼントが無いのだ。
『コバ、池ちゃんありがとうね、ずっと友達でいようね』
(ない、ない、ない)滲んでいた汗は冷や汗となって首筋を濡らした。
『じゃバイバイ』
その間みーちゃんと池田がどんな話をしたのか覚えていない。ただ失くしたことを否定するようにジャンパーやズボンのポケットに何度も手を入れているだけだった。


 中学生になって部活も違うと友人とも疎遠になる。ましてや高校も違う所に行くと池田ともわざわざ会うようなことはなくなった。そしてミーちゃんのことも忘れたわけではないが、東京の大学へ行き普通に就職して平凡な結婚もした。
 恋愛論を語る気はないが、思い返してみると(どうしても好きになってしまった)そんな感情は一度もなく、従って耳の後ろが赤くなる習性もすっかり忘れていたほどである。


「5年前に始めて同窓会に来てさ、池田君に会ったの』
彼女は携帯の写真を見せてくれた。
「そしてこれが2年前・・・」
池田の顔は驚く程痩せこけていた。
「同窓会の後たまにメールしてたんだ、コバのこと知らないかって」
「池田が?実家に尋ねればいいじゃないか」
「そう云うの苦手なタイプだったじゃない」
「まぁちょっと変わり者ではあったな」
「でね、去年ちょっと会えないかって、凄く痩せちゃってさ、大腸癌で余命半年だって」
「家族は?」
「離婚してたみたい、親はほらとっくに・・・」
小学生以降の池田のことを何故か全く知らない。実家に帰ってもごく近所だが尋ねる気すら起きたことはない。
「それでウチに来て急に真顔になって『俺お前が好きだったんだぜ』って、嬉しいけど困っちゃうじゃん・・・」
「ちょっと待てウチにってみーちゃんの家?」
「あっ知らなかったっけ、私栄町で店やってんのよ」
どうりで妙に若々しく生活感のないことに合点がいった。
「そしたら『嘘だよ、お前だって知ってたじゃん、コバだよ、お前のこと好きだったのは、ほらこれ返すよ』ってキーホルダーくれたの、I・LOVE・YOUって書いてやつ」
私の耳の裏はまた激しく赤くなっていた。
「駅へ走ってたらコバのジャンパーから落ちたんだって、ちょっとした悪戯で黙ってたけどその後ずっと言い出せなくてコバと会うこともできなかったって、だから返すって」
彼女の眼からみるみる涙が溢れ出していた。溢れたものを拭こうともせずに必死に繕った笑顔がとても綺麗に見えた。私の失くしていた友情と恋心が耳たぶまで赤く染めた。

「ヒューヒューなんだお前らまだ付き合ってたのかお熱いねぇ」
既に酔っ払って冷やかしていく彼など昔のまんまの悪童顔でやたらと懐かしく、辺りを見回すと皆それなりに頑張ってきた顔をしている。
「たまにはお店寄ってよ、いっぱい話すことあるから、お父さんのところ来るんでしょ」
「あぁそうだな」

失くしていた大切な何かが戻ってきた気がした。


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