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土井 留さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

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消えた娘(4〜6)

16/01/11 コンテスト(テーマ):第七十一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 土井 留 閲覧数:1158

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【四】

 追加の手当について短い相談をして、サイカは屋敷を出た。ウェイ・シェンはサイカの言値をあっさり飲んで、ひょっとすると一夜で終わるかもしれない仕事に金貨二枚を約束した。報酬の半分の金貨一枚をその場で受け取り、壁際で待っていたリュウに先導されて、港のはずれに出る石の階段を駆け降りた。
 眼下には夜の売春街の道筋が赤い筋状に光っている。隣接する歓楽街からは、音楽と歓声が伝わってきた。一方、サイカ達が向かっているナガマの港は、黒々とした海に沈んでいる。吸い込まれそうな漆黒の向こうに小さな漁火が揺れ、海から来る風が湿気を含んで重たく感じられた。
 階段を降り切ると、港に向かう細い道に出た。しばらく無言で歩いていると、明かりをもって先に立っていたリュウが、ふいに話しかけてきた。
「元締めに気に入られてらっしゃいますね。」
「ありがたいことだと思っている。」
 サイカが答えると、リュウは振り向かずに言った。
「お気を付けなさいまし。」
「どういことだろう?」
 リュウは少しの間黙っていたが、サイカにわずかに顔を向けて、小さな声で答えた。
「あの方は、気に入った男を見つけると嬲って殺したくなるご性分なのです。」
 あの人に気に入られて嬲られるなら、死んでも構わないというお人も中にはいますが、と付け加えてリュウは黙った。
 ウェイ・シェンは美しいが、同時に逃げ出したくなるような圧迫感を感じることがあった。あれはそういう訳だったのかとサイカは思った。女の白い肌に強く惹かれたが、毒花の芳香に酔いしれてみたいと思うほどには、サイカの精神構造は風流にできていない。
「気を付けよう。」
 しばらく間をおいてサイカは答えた。
 無言で歩き続けると、道は次第に平坦になって、二人は港の一角に出た。
「着きました。あの奥に見える船がそれです。船尾に明かりがともっているでしょう?」
 湾のはずれに、うずくまるように黒い塊があった。リュウが言うとおり、船尾には小さな光が波音に合わせてわずかに揺れている。サイカはここからは俺が先に立つと言い、船に歩み寄って訪問を告げた。
「街の顔役の一人、ウェイ・シェンの手の者だ。船長に会わせてもらいたい。」
 甲板がざわつくのが感じられた。しばらく待つと、奇妙に膨れたヒルコの頭がひょこりと現れ、四本しかない太い指が甲板から縄梯子を下ろした。サイカが登ると、四人のヒルコが彼を取り囲んだ。ちらりと後ろを振り返ると、リュウが、ちょうど梯子を登り切って甲板に上がってきたところだった。なかなか肝が据わっていると感心していると、ヒルコの船長が甲高い声で話しかけてきた。
「祟りを恐れずやってくるとは見上げたものだ。要件を聞こう。」
「そちらの積荷に用がある。娘を一人乗せているはずだ。それを渡してもらいたい。」
 サイカが言うと、船長は仲間のヒルコたちはサイカがわからない言葉で短いやりとりを交わし、探るような様子で答えた。
「それなりの金を払って手に入れた。街の顔役とはいえ無法だ。渡せんな。」
「あんたたちには正当な取引だったかもしれないが、あれは親元から連れ去られてきた娘だ。ことと次第によっては腕ずくでも連れ帰る。」
 サイカが言い終わるのを待たず、船長以外の三人が腰の小刀を引き抜いた。しかし、サイカは刀を抜いた間を見逃さず、一気に踏み込んで中央のヒルコに強烈な前蹴りを見舞った。まともに蹴りを受けたヒルコが、腹を押さえてうずくまるのに目もくれず、サイカはすぐさま左手のヒルコに体を寄せた。刀の間合いを奪われたそのヒルコは、大柄なサイカの体に圧倒されて何もできないまま押しやられ、船縁に側頭部を強打して甲板に転がった。
 刀を抜いた最後の一人が、船縁に突っ込んだサイカの背中を狙って襲いかかってきた。だがサイカは、それを察知して右足を軸に腰を沈めて回転していた。急激な動きについていけず、振り下ろされた小刀は空を切った。動きの勢いを利用してヒルコの後ろを取ると、素早く腕を取って背中を強く押し、船縁に激突させた。肩口を掴んで動きを封じ、腕をねじりあげると、ヒルコの手から小刀が落ちた。
「やめておけ。俺には祟りなど関係ない。まだ襲ってくるなら次は殺す。お前たちの命を気に掛けるゆとりはない。だが俺の雇い主は違う。お前たちを殺して悪い評判が立つのは困る。必要とあればまとまった金を払うだろう。」
 サイカは落ちた小刀を踏みつけ、丸腰になったヒルコを船長の方に突き飛ばした。
 派手な啖呵を切ったものの、よほど危なくならなければ、刃物を抜く気はなかった。危険は避けるに越したことはないのは、相手も用心棒もお互い様である。船長は少しの間思案していたが、不意に表情を変えて、こちらの緊張を解くように笑った。
「娘は人間の商人から売られたものだ。傷物にはなっていない。」
「その商人もこの船に乗っていると聞いている。金はそいつから回収できるはずだ。そいつも引き渡してもらおう。ウェン・シェンに恩を売るのは悪い話じゃないと思うが?」
「娘だけだ。男は娘の代わりに売り払う。迷惑料として金貨二十枚を払ってもらおうか。」
 船長の返事にサイカが答えようとしたとき、甲板の蓋が開いて、中から中年の男が転げるように出てきた。どうやらこれが娘を売り払った男らしい。男は海に飛び込もうと右舷に駆け寄った。ヒルコの船長が咄嗟に服の端を掴んで引き止めたが、自分より大きい男に引きずられそうになる。サイカは素早く男に近寄ると、足払いをかけて転がし、男の肩甲骨の間に膝を当てて甲板に押し付けた。
 リュウが魚臭いロープを持ってきて、男を縛り上げた。しばらくするとサイカにやられたヒルコたちが回復し、船長に促されて男の見張りをサイカ達と代わった。
 カンテラを掲げて開いたままの船倉を見下ろすと、両手を縛られた少女が怯えた目を向けてきた。
「確かに無傷のようだ。返してもらうぞ。迷惑料は俺の連れと相談してくれ。」
 サイカが言った時、縛り上げられた人買いの男が叫んだ。
「待ってくれ!俺は娘を売った金を半分しか持っていない。女中だ。全部女中が考えたことだ。俺は手を貸しただけなんだ!」
 
 【五】

 娘を船倉から救い出すと、サイカはリュウに娘を背負わせてウェイ・シェンの屋敷に戻らせ、人買いの男から話を聞いた。
 中年の人買いは、少しでもサイカの心証を良くしようとしてか、脅すまでもなく事件の全貌をすらすらと話した。
 男に取引を持ちかけてきたのは、娘が連れていた女中だったという。そもそも男は人買いではなく、北からやってきた行商人だった。つまり女中の口車に乗せられてしまい、出来心で娘の誘拐の片棒を担いでしまったという訳だった。
 もっとも、サイカが真っ当な商人が人間の売り買いなどするかと怒鳴りつけたら、苦笑いを浮かべて沈黙するばかりだったから、男が後ろ暗いことをずいぶんやってきたことは間違いない。
 ともかく、自称行商人の男が商品を仕入れていると、使用人風の地味な少女が、儲け話があるが乗らないかと声をかけてきた。最初は子供の言うことだと取り合わなかったが、少女の話を聞いているうちに気が変わった。
 男をその気にさせたのは、少女の動機に面白みを感じたからだった。
「自分の主人が許せねえ、って言うんですよ。」と男は少し笑って言った。
「珍しいことではないだろう。脱走する使用人はざらにいる。」
「いやそれが、自分に親切にしようとしたお嬢様が許せない、だから売ってしまおうと思った、ってことです。」
「よく分からんな。」
「私もあまり深くは聞かなかったんですが、その女中は昔から御嬢さん、私が売ろうとした娘のことですが、そいつを羨ましく思っていた。まあ当たり前ですがね。自分の手に入らない物は何でも持っている。同い年でも、女中は下働きで、御嬢さんとは生きている世界が違う。」
「何年か働いているうちに、女中には主人の手がついたそうです。つまり、御嬢さんの父親の愛人になった。正直なんでまた、って私はおもいましたがね。自分の娘と同い年のガキに手を出すなんて。あの娘は肌はきれいだったが、最初はこれと言って目立たない、大人しい感じのガキにしか見えませんでしたからね。」
 最初はという言葉に引っかかりを感じたが、サイカはそのまま男の話を聞いた。
「一年くらいお妾さんをやっていたら、ある日御嬢さんが、つらいでしょう逃がしてあげると言ってきたらしい。娘からすれば、父親のことが気持ち悪くてしょうがなかったんでしょうが、ずいぶんと能天気なことを言ったもんですよ。」
 サイカは思わず苦笑いした。サイカが仕事場にしている売春窟では、裕福な家の妾といえば、多くの女が第一に憧れる立場である。世間の世知辛さを知らない箱入り令嬢の無垢な同情を聞いたら、最下層の女たちは激怒して口から炎を噴きかねない。
「大人しそうな娘でしたが、そいつが目を吊り上げて、憐れまれた方のみじめな気持がわかっていない、許せないって静かに言ったんです。」
 サイカにもその気持ちは分かった。何かを憐れむことは、憐れな状態にない人間の特権だ。憐れみをかけられることは、相手との格差をはっきりと見せられることなのだ。自分ではそれほど悪くないと思っているのに、それを他人から憐れと言われては、屈辱以外の何物でもない。
「そして、御嬢さんは薬で眠らせるから、使用人のふりをして堂々と宿から運び出せばいい。私が一緒にいれば宿の者も怪しまないだろう、って言ってきたんですよ。こちらをひっかけようとしているようには見えなかったから、乗ってみようという気になったんです。」
「うまく立ち回って女中も一緒に売り払うつもりだったんじゃないのか?」
 サイカが言うと、男は真顔で首を振った。
「いや、とんでもない。あの女が怖くなったんですよ。」
「怖くなった?」
「ええ。当分まともな人間とは話せないかも知れないんだ。まあ聞いてください。俺が引き受けると、あの女は男物の服を渡してこれを着ろという。言われるがままに服を着替えて、御嬢さんが泊まっていた宿にすんなり入った。すると、部屋で裸の男が殺されていたんですよ。」
「殺されていた?お前が殺したんじゃないんだな?」
「いやいや。誓って本当です。ありゃ護衛か何かだったんでしょう。多分あの女に誘惑されて殺されたんだ。部屋の中で胸を一突きでした。」
「その死体はどうやって処理した?ちゃんとした宿で死体が発見されたら、すぐに大騒ぎになるはずだ。」
「荷物を入れる大きな行李に入れて、表玄関から運び出しました。あの女の知恵です。血が出ないように刃物は死体に刺したまま、ありったけの衣類と一緒に詰め込んで縄で縛ってね。御実家への土産だからと言って、宿から荷車を借りて、堂々と玄関をくぐりました。死体は今頃魚の餌です。」
「それで、肝心の娘はどうやってさらった?」
「最初に言った通りですよ。あの女が薬を飲ませて眠らせたんです。お嬢様の具合が悪いから、かかりつけの医者に見せると言って、私が負ぶって連れ出しました。後は商売用の倉庫に閉じ込めて、買い手を探したって訳です。」
「娘をヒルコに売ったのは偶然か?」
「そいつもあの女の智恵でした。ヒルコの船なら、調べも甘いし海賊も嫌がるってね。お分かりでしょう?私が怖くなった理由が?」
 なるほどとサイカは思った。地味で従順な幼い愛人は、実は毒の牙を隠し持っていたらしい。あるいは、同い年の娘に対する憎悪が、ただの大人しい娘を魔物に変えたのかも知れなかった。
「まったく、あんな女に関わらなきゃよかった。ここ何回かの儲けがすっ飛ぶでしょうね。」
「その分だと、自分を買い戻す讃嘆はありそうだ。運が悪かったとあきらめるんだな。」
 これから商品として売り払われようとしているくせに、男は明るさを失わなかった。ナガマ気質だなとサイカは思った。この街では一瞬の失敗や油断が命取りになることもあるが、命さえあれば這い上がるのもまた早いのだ。
「まあ、お察しのとおりです。向こうの港に着いたら金を借りて出直しますよ。縁があったらまたお会いしましょうや。」
 そう言うと、男はヒルコに促されて船倉に続く梯子を下りて行った。

 【六】

 売春街の用心棒最後の日である。
 リュウに一声かけて、サイカは最後の見回りを始めた。
 支払いはいいが、長く続ける仕事ではない。サイカはこの仕事を引き受ける度にそう思う。
 やっていてみじめなのだ。夜が中心の仕事だから、帰るのはいつも真夜中で、昼過ぎになってようやく寝床から這い出す生活になる。また、酔っ払いを相手に凄んだり、乱闘を治めたりしても、武人として全く張り合いがなかった。結局のところ、この種の用心棒は雇主の組織力に物を言わせて弱者ににらみを利かせているのであって、対等の敵手と相争っているのではない。ヒルコと渡り合いは、サイカに久々に武人の血を思い出させてくれたが、そこから離れれば、しがない場末の生活が待っている。またああいう仕事が無いかとサイカは思ったが、そう都合よく好みの仕事が転がっているわけもなかった。
 港での騒動から十日が過ぎていたが、主人の娘を売り払った女中の行方は分からないままだった。娘を無事に送り届けた代償に、ウェイ・シェンはかなりの額の謝礼を受け取ったらしい。二日ほどしてから、サイカはよくやってくれたと追加の報酬を受け取った。人買いから聞いた女中の話をすると、ウェイ・シェンはなかなか面白い小娘じゃないかと機嫌よく笑い、もし女中を見つけたら連れてくるようにと指示した。人買いの男にとっては幸いなことに、彼女の注意は女中の方に向いていて、事実上高跳びした男は眼中に無いようだった。
 まだ日は高く、閑散とした女たちの街は、夜の化粧をはぎ取られて、みじめな素肌をさらけ出していた。ぶらぶらと歩いていると、三十過ぎの女が、お世話になりましたと言って、町屋の入り口でから出てきた。
 借金を払いきって店を辞めるのだろう。どこにでもいそうな平凡な顔立ちの女だった。贔屓の客が多かったに違いないが、腰のあたりに豊かな肉付きがあることを除けば、男を惑わす色気は少しも匂ってこなかった。女はサイカとすれ違い、足早に去って行った。
 売春街のはずれまで歩いて行き、そのまま繁華街に出た。もぐりの商売をする女を追い散らすためである。最底辺の女たちに脅しをかけるのは気の進まない仕事だったが、サイカは多少の目こぼしをするとはあっても、用心棒としての評判を守るために任務を全うしてきた。人間は、こういうところから腐っていくのかもしれない。現実に妥協を重ねていくうちに、気付かぬままに多くのものを失っていく。
 そんな風にうらぶれた自分の身の上を想いながら歩いていると、繁華街の一角にある茶店の軒先に、見かけないあでやかな女が座っているのが目にとまった。サイカの側からは顔は見えないが、長い漆黒の髪とほっそりとした首筋が、体にぴたりとした濃い紺色のドレスによく映えていた。店には堅気の客が何人か入っていたが、女は一人で茶を飲みながら路地を眺めているようだった。
 横目で女の姿を確認すると、大きく開いたドレスの胸元のあたりに、何か変わった飾りがついていた。サイカは女の横を取り過ぎて店に入り、茶を一杯注文した。
「表に座っている美人は、よく見かけるのか?」
店の男はサイカがウェイ・シェンの下で働いていることを知っている。
「いえ。昨日が初めてでしたね。少なくとも、安っぽい商売女じゃあないです。」
そうかと答えて、サイカはドレスの女の方に向かった。
「ちょっと座らせてもらう。」
サイカは娘の向かいの座席に腰かけた。女はほほ笑んで低い声でどうぞと答えた。こうして向かい合ってみると、まだ少女と言ってよい年頃の娘である。
「この辺は一歩裏に入ると、怪しいのがごろごろしている危ない所だ。一人歩きは感心できないな。」
 サイカが言うと娘は大きな笑顔を作って頬杖をついた。甘い体臭がサイカの鼻をくすぐった。
「危ないお仕事をしている人でしょう?やっぱりこういうところで商売をするとルールが厳しいの?」
 理由は全く分からなかったが、サイカは肌が粟立つのを感じた。よく見れば、店に入る際に飾りのように見えたのは、大きく開いたドレスの首元から覗いて見える、女の左の鎖骨の下に入った黒い刺青だった。
「もし、商売をするなら、出る所に出て話を通した方がいい。見逃してもらえるとは思わない方がいいな。」
 サイカは少し身を引いて言った。
「月並みな言い方だが、そういうことはやめた方がいい。帰る所があるなら大人しくそこに帰れ。」
「せっかくの親切だけど、頼れるひとはいないの。あなたの親分さんは頼りになる人?」
「一人か?」
「ええ。この服は、ちょっとした臨時収入で買ったの。助けてくれそうな奴がいないでもないけど、あんな男のところに行っても、ろくなことにならないわ。」
 そういって女は笑った。白い肌にかすかに血がのぼって、鎖骨の下の刺青がうごめいた。ドレスに隠れていたが、恐らく蜘蛛の入れ墨だった。意匠化された細長い足の先端が、何かを誘うようにわずかに曲がっていた。。
 サイカの瞼の裏にウェイ・シェンの唇の赤さが浮かび、女の刺青と重なった。
「それは主人を売って作った金か?」
 サイカが言うと、女の笑みが深くなった。
「あの子は家に帰ったの?」
 答えた女の頬に血がのぼっていた。いっそ凄艶なくらいの眺めだった。これが護衛の男を誘惑して殺し、同い年の娘を売り払った女中の脱皮した姿なのだ。従順で大人しかった娘は、血を吸って魔を宿し、食われる側から食う側に回って、さらに次の獲物を求めているようだった。
「ああ。足りない頭のまま能天気に生きているだろう。」
 女の毒気に影響されたのか、サイカの返答も辛辣になった。
「そう。まあいいわ。もう、どうでもいいことだし。」
 言い終わると女はすっと立ち上がった。
「よかったら、あなたの親分さんのところに連れて行ってくれない?私は、きっと売れっ子になると思うの。」
 考え直す気はないかと言いかけて、サイカは思いとどまった。目の前の女は、とうに後戻りできる境界を超えて魔物になりかけている。どうせ戻れないなら、いっそ魔物として完成したほうが、この街ではうまく生きていけるように思えた。
「ついて来い。」
 サイカは不機嫌に言って歩き始めた。女の足取りは対照的に軽かった。
 ウェイ・シェンの屋敷がある高台が、霧に隠れてかすんでいる。


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