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鬼風神GOさん

冬が好きです。コーラも好きです。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 やってやれないことはない。やらずにできるわけがない。

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恋愛アンドロイド

15/12/28 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:0件 鬼風神GO 閲覧数:799

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「モットーは人間よりも人間らしく≠ナす。当社の最新恋愛アンドロイド、TZR5000ー乙は初期設定段階で千の質問にお答え頂き、お客様の嗜好に性格を最適化します。従来の恋愛アンドロイドにみられるようなひたすら従順なだけでなく、不定期でわがまま機能が発動されまして――」
「あー、もういいからこれちょうだい。あんたの会社のやつは前買ったときも使用感よかったからまた買うよ。この子かわいいし」
 販売員は非常にわざとらしい満面の笑みで応える。
「ありがとうございます! では、こちらが契約書でございます。保証期間は二年となります。また、電池の交換時期ですが――」
「前に買ったんだからだいたい分かってるよ。とにかくサイン必要なものだけ言って。あと、支払いはカードで」
 ハラダは面倒くさいほどに丁寧な説明を聞き流しながら機械的に数枚の用紙に黙々とペンを走らせる。その後TZR5000ー乙の簡単な動作確認を行い、自宅への発送の手続きも済ませた。
「では、×月×日にお届けいたします。楽しみにお待ちください」
「この前どこかのメーカーが突然アンドロイドが主人を殴り始めるっていうリコールのニュース見たんだけど大丈夫だろうね」
「も、もちろんです。当社の現時点の最高傑作であると自負しております」
 販売員は額に汗を浮かべ、ここまできて契約を逃すまいと懇願するような目を向ける。
「まあ、あんたを信じるよ。もう人間には飽きたんだ」

 数日後ハラダの自宅にTZR5000ー乙が届いた。さっそく起動し、初期設定を行う。流暢な機械音声が流れ始める。
『この度はTZR5000ー乙をご購入頂き誠にありがとうございます。快適な恋愛ライフを送るためいくつかご質問させて頂きます。しばしお付き合いくださいませ』
 ハラダは電池の残量や目の色、肌の色、髪の長さなど詳細な設定を行うタブレットに表示される質問内容に手早くタッチ操作して設定を完了させた。
『大変お手数おかけしました。あと十二分五十六秒でさやか≠ェ起動いたします。ハラダ様の恋愛が素敵なものとなることを祈っております』
 恋愛アンドロイドには必ずさやかと名付けている。ハラダは別れてもう五年になる愛し合った女性の笑顔を思い出し、自嘲した。
 ほどなくして、さやかがゆっくりと目を開いた。
「あ、ごめん! 寝ちゃった。もう映画終わっちゃった?」
 先ほどの質問内容で映画鑑賞が趣味であると答えたためだろう、自慢のホームシアター用のプロジェクターは稼働していないが、ハラダは優しく微笑んだ。
「いやいや大丈夫だよ。ご飯食べてからまた観よう」
「ありがとう。ご飯作る? それともどこか食べにいこうか」
 悪くない。ハラダはさやかの長くてきれいな黒髪にそっと手をやり、何かを確かめるように何度もなでた。

 どうやらあの販売員の言葉に嘘はなかったらしい。ハラダはさやかと充実した日々を送った。
 常にハラダの言うことに従うだけでなく、ときには自身の主張をしてけんかしたり、またあるときはハラダのいたらない点をさやかは指摘した。だがそのことがお互いの距離を深め、ハラダはより近くにさやかを感じることができた。

 事件は唐突に起こった。さやかを起動して二年が過ぎたある日、買い物に出かけると言い残し、さやかが姿を消したのだ。
 前兆は薄々感じていた。一週間ほど前から返事がそっけなく、ハラダより先に寝ることが多くなっていた。
 すぐにあの販売員に連絡をとり、店へ急いだ。ハラダの慌てぶりを気にする様子もなく、その販売員はあの軽薄な笑みを浮かべパソコンのキーボードを叩き、言った。
「ご安心ください。ハラダ様の契約状況を確認させて頂いたところ、TZR5000ー乙は電池交換の時期でした。新しい電池に入れ換えて、明日の十三時二十四分にハラダ様の自宅に帰ってきます」
 ハラダは全身を脱力させ、必要以上にふかふかとした椅子に沈んだ。
「そんなこと、契約のときにちゃんと言ってくれよ」
「すでにご存知とおっしゃっていましたので、省略させて頂きました」
「だいたい、電池交換ごときで回りくどいなあ」
 待ってましたとばかりに販売員はのたまった。
「ハラダ様、我が社のモットーは人間よりも人間らしく≠ナす」

 帰宅し、ソファに乱暴に身体を預ける。本当によかった。今からさやかと何を話そうかと想像をふくらませる。
「ったく、あの販売員、モットー、モットーうるせえな。だから俺は人間には飽きたって言ってるじゃねえか」
 ハラダは首に手をやりハッチを開け、充電ケーブルを差し込み目を閉じた。


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