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爪痕

15/12/28 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:0件 りんご 閲覧数:747

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僕は誰にも言えない秘密がある。
彼が好きだ。

僕は小さい頃体が弱かった。
消毒液の匂いがきつい白い建物が嫌いだった。
でも、家よりもそこにいる時間の方が何十倍、何百倍も長かった。

中学生になると学校に通えるようになった。
誰も知っている人はいない。
腰をズボンではくことが中学生の粋なんてことも知らない。
なんて話しかけたらいいかも分からない。
そんな僕に話しかけてくれた。
彼とはゲームの話で盛り上がった。
すぐに仲良くなれた。自分でも驚いた。こんなに早く友達が出来るなんて。
それからしばらく経つと友達から親友に変わった。
そしていつしかそれは恋心に変わった。

中学3年生のとき体調が悪くなって入院することになった。
彼は忙しい受験勉強の合間をぬってお見舞いにきてくれた。
体調が良くなればもっと一緒にいられるのにと思っていた。
その思いが強くなればなるほど体は病に蝕まれていった。

ある日悟った。
僕の命はもう長くないのだと。
僕はこのとき、絶望というものを初めて知った。
何も考えたくなかった。感じたくなかった。
僕の頭、つぶれろ。つぶれろ。
頭に手をあてた。頭が小さく感じた。
僕の頭はこんなに小さかったのかな。
これくらい小さかったら潰せるんじゃないかと思った。
頭をおさえた。おさえればおさえる程怖くなった。
死ぬのが怖くなった。

彼がお見舞いにきた。
心が重くなった。
僕が死んだら彼はどうなるのだろう。
答えは、変わらない。
一時的に悲しくはなるだろう。
だが、僕がいなくなっても彼は生きていけるのだ。
人間の脳は悲しいことが記憶から消されるようにできている。
悲しいのはどっちなのだろう。
記憶が消えずに毎日苦しむか、
記憶が消えて毎日楽しく過ごすか。
僕が死んだら、僕が生きていたことを誰か覚えてくれる人がいるだろうか。
僕が死んだら、僕が彼のことを好きだったことは、なかったことになる。
ゼロになる。いや、今現在ゼロなのだ。
僕は誰にもこの事実を言っていない。
言っていないことはゼロに等しいのである。

僕は更に心が重くなった。そして苦しくなった。
そして僕の気持ちを、生きた証を残したくなった。
・・・言ってしまった。
ただそこには、僕の心が少し軽くなったことと少しのドキドキしか残っていなかった。
僕の心が少しだけ軽くなったのは、
これから先、彼が自分のことを忘れられないであろうと思ったから。
そしてなぜ少ししか軽くならなかったかというと、
彼に対して罪悪感があったから。
そして、僕は僕のことしか愛していないと気づいたからである。
最後のドキドキは彼の返事に対しての期待だ。
僕は最後のドキドキにあとわずかな人生をかけた。


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