睦月 希結さん

駄文ですが、お付き合いの程を。 素敵な創作を拝読しつつ至らなさを痛感しています。精進・精進。 色々ご指摘真摯に受け止めさせて戴きます。 勿論お褒めのお言葉・ポイント等は24時間受け付けております・笑。

性別 女性
将来の夢 元気に、程々長生き。ポックリ祈願。
座右の銘 残ったもん勝ち

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卒業

15/12/22 コンテスト(テーマ):第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】 コメント:4件 睦月 希結 閲覧数:1217

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ドアの前 微かな笑い声と会話が交わされているようだ。書かれてる看板の名前を確認しノックする。
応答の後 足を踏み入れる俺の姿を確認すると、中の雰囲気が変わった。

幾人もの見知った顔と見知らぬ顔。
そして中央に座って居る人の表情は、見慣れたものとは少し違っていた。

振り返り安堵の様子を見せたかと思えば、つと視線を反らし「きっと幸せになるから」
と、涙が溢れそうになるのを堪える顔は、見慣れているものだった。

その言葉に返事をせず「また後で」と周りに会釈し部屋を出た。

俺は暖色系の絨毯が敷かれた廊下を歩き出した。

周りの反応が変わるのも無理はない。

今日の主役は、俺では無い別の相手と此処で式を挙げる。
皆は知っている。

今まで俺と彼女が周りが呆れる程の親密さを見せていたから。
何時か「俺の元へ嫁ぐんだ」と、さっき部屋に居た人物達は、何度も聞かされていたはずだ。

俺は彼女を心から愛していたし、彼女も同じ想いだったはずだ。


お互いの誕生日・バレンタイン・ホワイトデー・クリスマス・お正月。
イベントと名のつくものは必ず何かを贈り合い、時を過ごして来た。
旅行にも国内外を問わず出掛けたりもした。

俺が怪我で入院した時も、息を切らし病室に駆け込んできて
無事だと解ると大粒の涙を流して、俺をポカポカと叩いた。

初めは魚の形の炭なのか?と思えた物も、俺好みの味付けを覚えたいと、料理教室に通い披露してくれた。

手編みのマフラーを貰った時は歪な物だったが嬉しかった。
段々と上達して、模様編みのセーターをプレゼントとして貰えるまでになった。

そう彼女は俺が喜ぶ姿を励みに、俺も彼女の笑顔が見たくてアレコレ心を砕いていたんだ。

俺はこの蜜月が、永遠に続くと信じて疑った事はなかった。

チョッと半年前に何度か帰宅が遅いのを咎めると彼女は、俺達が住んでいた所から飛び出していった。
幾度 呼び出し音を鳴らしても、無機質の案内が繰り返されるだけだった。

そして数日後 帰宅した彼女は、今日の新郎を伴い「この人と結婚するから」と告げるのだった。

今度は俺が部屋を出て行く番だった。

一時の気の迷いだ。麻疹の様なものだ。俺以外の男と遊んでみたかったんだ。
確かに より多くの男から選ばれた方が、俺の株も上がるってものだ。少しすれば熱も冷めるだろう。

何より俺達の仲を知っている周りが取りなすだろうと、楽観していた俺を尻目に。
俺の居ない間に、部屋の中の彼女の荷物が無くなっていた。

「勝手にしろ」と捨て台詞を吐いたことが原因なのか。
それを承諾と受け取ったのか、改めての断りもなく今日の準備を進めていたのだ。

本当なら式に参列などしたくはなかった。
彼女が「私の最後の我侭だから」と懇願するから仕方なくだ。

だが、俺にもプライドがある。
会場に同行する旨を顔見知りの何人かに打診されたが、全て断り俺は単独で姿を現した。

先程の彼女の態度を思い返すと、やはり新郎より俺の方が大切な人間だと確信が持てた。

そうだ。今日こそが、千載一遇のラスト・チャンスなんだ。

昔の映画のように花嫁を奪えば良いだけだ。新郎と持ち上げられている道化と化した奴から。
彼女は、俺への当て付けに式を挙げるだけなんだから。

今時バツイチなんて俺達の愛の前では何の障害もない!!
これからの長い年月に比べれば、ほんの瞬きほどの時間なのだ!!
そして俺の良さを改めて見直し、惚れ直すに違いない!!

俺は意を決し、足早に廊下を駆け抜けた。

周りの視線など気にする暇は無い。
そうだ時間も無いはずなんだ。

角を曲がると、介添え人に手を借りて、ウエディングドレス姿の彼女が待っている。
その微笑みは、今 俺だけに向けられている!!

あがる息を整え、服を直し、ゆっくりと近づいていく。

「遅かったね。待ちくたびれちゃったよ」と頬を膨らませる。

そうだ!そうだろう。彼女は、やっぱり俺の事を待っていたんだ!!

肘まである絹の手袋をはめた指先を伸ばし、何時ものように俺の腕に絡ませる。


そして今になって別れの言葉を口にするのだった。


「今まで有り難う。お父さん」

パイプオルガンの行進曲の中 俺達は大きく開け放たれた扉から、祭壇に向かって歩き出した。





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このストーリーに関するコメント

15/12/26 クナリ

ラストで「なんだーそういうことかー!」となったのですが、もう一度読み返すと、だからこその切なさがかえって胸を打ちますね…!

15/12/26 睦月 希結

クナリ様初めまして。コメント有難うございます。ラストまで普通?のストーカーチックな話ですが・笑。ある意味 究極の片思いですから、切ないです。きっと彼は二次会のカラオケで「娘よ」を熱唱することと思われます。

16/01/22 光石七

拝読しました。
オチがわかるまですっかり騙されていました(笑)
男親にとって娘は特別だと言いますが、主人公も溺愛していたのでしょうね。
切ないけれど、彼女の幸せのためにぜひ祝福してあげてほしいです。

16/01/22 睦月 希結

光石様、こんなものまでお目汚しを・笑。ラストで驚いていただけて作者冥利につきます。これでもか!と目いっぱい熱愛ぶりを吐露してもらいました。オチを知ってる身内に「蜜月はキモイ」と言われましたが、それが大事なんじゃぁ〜!!と息巻きました。ギャグ風に新郎を酷い目に遭わせ犯罪スレスレのネタと迷ったのは秘密です。

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