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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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コーラの湯割り

15/12/16 コンテスト(テーマ):第七十回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1091

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もしかしたらこれまでにも誰かが飲んでいるかも知れない。
私の周辺ではまだこれを飲んだという話は聞かない。あるいはどこか地方で、新年を迎えるにあたり、除夜の鐘を聞きながら家族団らんでコーラの湯割りを楽しむところがあるかもしれないが、私はしらない。
もともとコーラはあまり飲まないほうで、ファミレスのドリンクバーで、他のドリンクに飽きてしかたなく飲むことや、旅行先でふと飲みたくなって自販機等で購入することがたまにあるぐらいだった。
最近歳のせいか胃腸が弱くなってきて、冷えた飲み物を口にするとお腹をこわしやすくなった。ホットならそういうことはまずないので、ドリンク類はたいてい温かいものを買って飲むようにしている。
私の知人に、無類のコーラ好きがいて、彼の家に行くと出てくるものはかならずコーラだった。冷蔵庫の扉の裏にはずらりとコーラのボトルがならんでいる。気の置けない友人で、話しだすと時間のたつのも忘れて夢中に喋りつづけ、当然喉も乾き、つい目の前におかれたコーラのグラスに手がいってしまう。気がついたら2杯は空けていた。友達のところにいる間はまだ大丈夫だったが、家にかえって一息つくころになって、お腹がしくしく痛みはじめるのがいつものパターンだった。
友達のところには週に二度、多いときにはもっと訪ねることもあって、そのたびにコーラが出てくる。自分がコーラ好きなものだから、私もきっと同じだと彼が思い込んでいるのはあきらかだった。
いくら親しい間柄でも、ほかのものを出してくれともいえず、お腹を気にしながらもコーラに手をのばすしかなかった。コーラのようにポピュラーではないが、よく似た飲物にルートビアがある。どうせ冷えたものを飲んで腹をこわすのなら、こちらのドリンクにしてもらいたいのだが、もちろんそんなこともいえず、やはり出されたコーラをのむほかなんの選択肢も私にはなかった。
世の中には私のように、冷えた飲み物を苦手にする人も多くいることだろう。べつに苦手でなくても、飲み過ぎて下痢をしたという話はよく耳にする。
なんとか冷たいコーラを飲んでも腹をこわさない方法はないものかと考えた末に、コーラの湯割りを思いついた。コーラをコップに半分ほどいれたなかに、沸騰した湯をそそぎいれると、シュワ―と泡がふきあがる。味は、要するに湯で薄めたコーラで、それ以外のものではない。水っぽさは否めないが、とにかく私は安心して飲むことができた。友達には、まさかいまさら冷えたものはだめだともいえないので、新しいコーラの飲み方を思いついたといって、ためしてもらうことにした。
案の定彼は、それを聞くとけげんそうに私を見返した。炭酸を湯で割るという発想が、おそらく彼の遺伝子には刻みこまれていなかったのにちがいない。
しかし、私の提案を無碍にはねつけるような彼ではないので、ヤカンにわかした湯を、コップに半分満たしたコーラの上にそそぎいれた。
ついでに私の分も作ってくれて、ふたり、意味もなくグラスをかちんとあわせてから、コーラの湯割りを口にした。彼の表情は飲む前とまるでおなじ、いぶかしそうなままだった。私も彼から、うまいとか、これはいけるとかの賛辞は期待してなかったので、とにかく自分の分はごくごくと飲みほした。
その後、彼の家で湯割りのコーラをのむのは私ひとりにかぎられ、彼はこれまでどおりの冷えた百パーセントコーラにもどった。私たちの友情はいまも変わりなく続いている。念のため。


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