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高橋螢参郎さん

何でもいいから金と機会おくれ

性別 女性
将来の夢 二次元に入って箱崎星梨花ちゃんと結婚します
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今日も夜空に星の降る

15/12/14 コンテスト(テーマ):第九十七回 時空モノガタリ文学賞 【 他山の石 】 コメント:1件 高橋螢参郎 閲覧数:878

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「あっ、流れ星!」
 小さな女の子が気付いて指差すが早いか、澄んだ寒空に星がすーっと一瞬光の尾を引いたかと思うと、それっきりすぐに消えていった。
 あそこ、あそこと指し示した先を両親も探すものの、時すでに遅く後には暗闇が広がるだけだった。
 母親は頬を膨らませる女の子と夫に魔法瓶に入れてきた暖かいココアを淹れてから、夜風の冷たさで紅く染まった娘の小さな耳を、愛おしそうにミトンの手袋で包んだ。
「願い事、三回言えた?」
 女の子が今にも泣き出しそうな顔をして首を振ったのを見て、母親は背中から娘を優しく抱きしめ、頭を撫でた。それで女の子もようやく落ち着いた様子で、湯気の上るマグカップに口をつけた。
 同じくココアをすすっていた父親が、何もない夜空を見上げながらつぶやいた。
「五十年に一度の流星群って触れ込みだったけど、タイミングが悪かったかな。一個観れただけでもかなり運が良かったかも……ちょっ、痛っ! 痛いってばお母さん!」
 娘がその無神経な一言に再び涙を浮かべ出したのを目にして、ようやく父親は後ろから妻に叩かれた理由に気付くのだった。

「まーた性懲りもなくやるんですか」
 地球から宇宙を隔てたとある星の研究室で、助手は我々地球人と同じ二本の腕を組みながら、呆れた様子で博士の背中に語りかけた。
 博士は「うるさい」と言ったきり、振り向きもしなかった。助手はこれにむっとして、口を尖らせながら言い放った。
「いつまでもそんな事ばっかしてると、今に予算降りなくなりますよ」
 古今東西銀河時空を飛び越えても、この話題を無視できる科学者はいない。
 博士はくるりと椅子に座ったまま振り返ると、車輪の付いているのをいい事に足で地面を漕いで横着しつつ助手の目前へと移動してきた。顔色こそ葉緑素を含んでうっすらと緑に染まっていたが、それ以外は地球でよく見る中年男性と何ら変わるところはなかった。
「それは困るね。君、また何とかしといてよ」
「いや、だから流石にもう無理ですってば。宇宙にゴミをバラ撒くから金くれ、ってどう考えても筋が通らないでしょ」
「ゴミじゃない! メッセージなの! 何度言ったら解るんだね!」
「はいはい」
 声を荒げて訂正する博士に対する助手の口ぶりは、もう慣れたものだった。
「そんな大声出さなくても聞こえてますから。知的生命体が拾う事を期待してメッセージを発信する。ここまではいいですよ。予算、もしかしたら降りるかも」
「絶対降りるに決まっとる。他の研究とはスケールが違う。スケールが」
 鼻息荒く力説する博士を差し置いて、助手は続けた。
「でもですね。いるかどうかも判らない相手に向けて、無差別に、ってのがいけないと思うんです。しかも、原始的な岩に掘る、だなんて方法で。航宙省にデブリ増やすな、って言われたばかりじゃないですか」
 そう言って助手が指差した先、博士がずっと向かい合っていた机の上には、いくつもの難燃性の岩が転がっていた。そのひとつひとつに、地球で言うところのレーザーでメッセージが刻印されている。
 助手は机に近寄るとひょい、とそのうちのひとつを取り上げた。
「世界が平和になる方法。で、こっちは皆が健康なまま長生きできる方法。うわ、胡散臭さ全開。こんなん届いても……ねえ?」
「いや、必ずこの宇宙のどこかにはいるのだ。こういった箴言を必要としている人々が。今は理解されずとも、いつの日か必ず評価される。だから、今回だけ。な?」
「……この前もこれが最後だから、って言って大量に打ち上げましたよね? アレ、ウソだったんです?」
「いやだから今回が最後だよ。まだ裏にもあるから、全部飛ばそう。ほら君、早く行くぞ。また役人どもに嗅ぎつけられる前に」
「何でこんな研究室来ちゃったんだろ。本当、今回が最後ですからねー……」

「流れ星って落ちたらどうなるの?」
 深夜二時だというのに目を爛々と輝かせる娘に父親は半ば疲れながらも、昔好きだった宇宙の話を続けていた。ああ言ってしまった手前、今夜は覚悟を決めるしかないだろう。妻はとうに車へと戻り、眠ってしまった。
「落ちる前にほとんど燃えちゃうんだって」
「じゃあ燃えなかったのは?」
「地球のほとんどは海だし、陸だって人間のいるところは少ないからね。多分誰にも知られずに、そのまま地球の石になっちゃうんじゃないかな」
「ふーん……あっ、お父さん見て!」
 娘につられて父親が見上げると、夜空一面に流星雨が降り注いでいた。
「お星さま、ひろいに行きたいな……」
「うん、行きたいね……」
「あっ、お母さん起こさなきゃ!」
 車へと走る愛娘の後ろ姿を見届けながら、父親は白い息を吐いてひとりごちた。
「神様も粋な事してくれるよな」
 地球人が他山の、いや他星の石を受け取るにはまだ随分と時間がかかるようだった。


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このストーリーに関するコメント

16/01/07 光石七

拝読しました。
流星群にこんな裏側があったとは……! 違う意味でロマンですね^^
メッセージが本当なら早く気付きたいものですが、美しい流星を堪能するのもそれはそれで乙なもの。
ほほえましいお話でした。

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