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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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オリンピックランチ

12/08/15 コンテスト(テーマ):第十二回 時空モノガタリ文学賞【 オリンピック 】 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:8233

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「オリンピック」という創作料理のお店があるというので、主婦四人でランチを食べに行くことになった。メンバーは関西の気さくな奥様の琴美さん、おっとりしているが芯の強い翡翠さん、一見平凡な主婦だが実は武術家のポポさん、そして天然おばさんの蓮子こと私である。
 そのお店は駅から歩いて五分ほどの距離にあり、ビルの一階で店舗の周りには五輪の旗や万国旗でデコレーションされていた。お世辞にも趣味が良いとは言えない店である。だが、グルメな琴美さんの情報によると料理は美味しいし、面白いイベントでお客を楽しませてくれると言うのだ。
 イベント? その言葉に興味を惹かれたし、料理が良いなら文句無し!

 カラーンとカウベルを鳴らして、店内に入ると写真やメダルなどのオリンピックグッズが所狭しと並べられていた。しかもホールの真ん中にはマットを敷いたステージまである。四人は目が点になってしまった。
「ようこそ、オリンピック会場へお越し下さいました」
 四十代後半、藤岡 弘風の店主らしき人物が挨拶をした。そして、恭しくテーブルに案内してくれた。
「当店のランチは三つのコースからお選び頂けます」
 メニューを見てビックリ! 銅コース三千円、銀コース千五百円、なんと金コースはたったの百円である。しかも値段の安いコースほど料理が豪華なのである。主婦たちは躊躇なく百円の金コースを選んだ。 

「皆様、金コースをお選びですね。承知しました」
 いきなり店内にファンファーレが鳴り響き聖火を持ったランナーが料理を運んで来た。金コースの前菜は「伊勢エビのパピヨット キャビア添え」とある。なんて豪華な前菜、早速食べようとフォークを持った瞬間に、
「ストップ! 金コースは召し上がる前にオリンピック競技をして頂きます」
「えぇー!?」
「まず、貴女! 今から五分以内に駅まで行って戻って来てください。駅の券売機の横に小旗を置いてあるので、それを持って来るのです」
 いきなり、琴美さんが指名された。
「スタート!」
 タイムウォッチを片手に開始を告げた。その声に琴美さんは脱兎の如く店から飛び出した。店主の説明によるとランナーが五分以内に戻らないと失格。全員が前菜を食べられないのだ。残された私たちは豪華な料理を前に祈るような気持ちで琴美さんの帰りを待つ。
「ハイ! 残り十秒」
 琴美さーん! 全員で声援を贈る。
「三秒!」
 カラーン! 勢いよくカウベルが鳴って琴美さんが旗を手に倒れ込むように戻ってきた。間に合った、私たちは前菜を食べることができた。
 次は「カボチャの冷製スープとフォワグラのテリーヌ」これも豪華だ。
「次は華麗に舞って貰いましょう!」
 今度は翡翠さんが指名された。お淑やかな彼女が人前で踊れるのだろうか? ホール中央のマットの上に立つ翡翠さんをスポットライトが照らす。すると彼女はマットを丸めて端に置いた。スカートの裾を摘まんで巻くしあげると、カツカツと踵を鳴らしステップを踏む。そう、フラメンコを踊っているのだ。情熱的な踊りに皆の視線がくぎ付けになった。「オーレ!」
「評価十点!」
 スープ頂きまーす! 翡翠さんにそんな隠し技があったとは驚いた。
 メインディッシュ「松阪牛の極上ステーキ」の登場に涎が出そう。競技に指名されたのはポポさん。
「さあ、私と闘って貰いましょう!」
 ポポさんを武術家と知らずに指名するとはバカめ、私たちは内心ほくそ笑んだ。フェンシングの剣を手にした店主と麺棒を持ったポポさんとの対戦。スタート「めーん!」瞬殺だった。足元に倒れた男。
「失格でーす!」
「ウッソー、なんで?」
「オリンピック競技に剣道はありません」
 ちょっと待てよ。さっきのフラメンコはOKだったじゃないか。私たちは抗議をしたが料理は下げられてしまった。最後のデザートは「夕張メロンのシャーベットと女峰苺のパンナコッタ」これは絶対に食べたーい。
「水中で長く息を止めた者が勝ち!」
 ついに私の番だ。大きなずん胴に水が張ってあり、スタートの合図でそこへ顔を突っ込む。一分、二分……必死で息を止める。ああ、苦しい意識が遠のいていく……。

 気が付いたら、皆の心配そうな顔があった。私は気を失って溺死しそうになっていたらしい。当然失格デザートは撤去され、しょんぼりと私たちは店を出ようとしていた。
「敗者復活戦がありますよ!」
 えっ? その声に振り向くと店主が手に大きな北京ダックを持っていた。
「これを私から奪って、テーブルにタッチしたら貴女方の勝ちです」
 もう絶対に負けられない。
「バーゲン、残り一点よ!」
 その掛け声に主婦たちのモチベーションが一気に上がった。巧みな連携プレイで勝利を奪い、たった百円で北京ダックを満喫できた。

 そして「なでしこおばさん」のオリンピックは閉会した。


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このストーリーに関するコメント

12/08/15 そらの珊瑚

恋歌さん、笑いながら拝読いたしました♪

「バーゲン、残り一点よ!」この一言が最後の勝敗を決めましたね。
100円でこんなに楽しめるレストランがあったら、是非行ってみたいものです。

12/08/16 泡沫恋歌

珊瑚さん、読んで頂きコメントまで有り難うございます。

今回はドタバタ喜劇風に書いてみました。
私たち主婦はネットの世界では「主婦ニート」だとか、ヒドイ呼ばれた方をされてます。
毎日家に居るだけで家事などいろいろあるんです。365日、無休で病気の時も休めません。
学校に持って行く「お弁当」は誰が早起きして作っているんだと言いたいね。 

さて、ちょっと愚痴ってしまいましたが、縁の下の力持ち4人の主婦たちを活躍させる話はまだまだ書き足りないと思っています(笑)

12/08/16 ドーナツ

すごく面白い!
この店 行ってみたいですよ。4人のおばさんが競技してる姿 想像すると吹き出してしまいました。

敗者復活戦、おばさんパワー炸裂で、すごい!
北京ダック100円 で火が付いたのかな。

サッカーチームよりも強力ですね(笑

12/08/17 泡沫恋歌

ドーナツさん、コメントありがとうございます。

おばさんパワーで敗者復活戦を勝ち抜いて、まんまと北京ダックを
掌中に収めた、恐るべし主婦力でしょう?(笑)

この作品はネタとして楽しんで書くことが出来ました。

12/08/18 草愛やし美

バーゲン、残り一点は絶対譲れません。(爆笑)

12/08/18 泡沫恋歌

草藍さん、コメントありがとうございます。

「バーゲン、残り一点」は主婦にとってモチベーションを上げるための
魔法のコトバですよ。

他、「タイムセール」「期間限定」「先着○○名様迄」この言葉に命を
掛けられます!(嘘)

12/10/12 くまちゃん

うふ♪(* ̄ー ̄)v
戦って頂く料理も( ´∀`)ですね¥100でも全力投球。
バーゲンはお手の物ですもの男性は勝てないでしょうね^^ 楽しかったです。

12/10/14 泡沫恋歌

くまちゃん、コメントありがとうございます。

主婦なら「バーゲン、残り一点よ!」はモチベーションが上がる魔法の言葉ですね。

追い詰められた主婦は強しですp( ̄0 ̄)/ エイエイオ〜!!

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