1. トップページ
  2. 時空革命モノガタリ

W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

投稿済みの作品

7

時空革命モノガタリ

15/12/07 コンテスト(テーマ):第九十八回 時空モノガタリ文学賞 【 革命 】 コメント:12件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1151

この作品を評価する

 できあがった作品を、さあ送信するかといつものように『時空モノガタリ』を検索したところ、なにかのまちがいかあらわれたのは『時空革命モノガタリ』という名のサイトだった。
 これはいったいなんだろう。似たような名前なので、こちらが出てしまったのだろうか。
 もしかしたら表記が変更になったのかとも思って詳しくみてみると、はたして次のようなコメントが記されていた。

 今回から駄作と思われる作品を読者の投票によって選びだし、削除することにきまりました。

―――私は絶句したあげく、目をしばたたかせながら何度もその文言を読み返してみた。 そして、いよいよこのサイトもここまでシビアなものになったのかと、しばらくのあいだ胸の動悸がおさまらずに難儀した。
 さらに怖ろしいことに、コメントはそれだけではなかったのだ。
 駄作と決まった作者は2週間のあいだその該当作品を出され続けるという、まるでさらし首のような憂き目にあうのだとか。
 なるほど、だてに『革命』を標榜したのではないことがこれで明らかになった。サイトは本気なのだ。
 とたんに私は臆病風に吹かれでもしたように青ざめて、送信予定の作品を、今一度あらためて読み直すことにした。
 第一に目立ったのは誤字脱字だったが、問題となる対象はなんといっても2000字内に書かれてあるその内容なのはまちがいないだろう。
 さっきまでは満々の自信にあふれていた私だったが、繰り返し読んでいるうちにだんだん気持ちは沈んできた。もともと思いつきだけで書いているようなところがあって、ヘタな鉄砲も数撃ちゃの諺どおり、たまにまぐれ当たりはしても、まぐれはまぐれで、あやまたずに的の中心を射抜くだけの実力など薬にしたくもない私だった。
 そんな私でも自惚れだけは一人前にあるようで、第三者の目でみればどこかに評価できる部分もみつかるかもしれないというかすかな希望にかりたてられて、めったにしないことだが家人を呼んで作品に目を通してもらうことにした。
 家人はこれまで私がそんなものを書いていることさえしらずにいた。私から事情を聞いてはじめて、私の秘密がわかってしまった次第だった。
「いつもこそこそパソコンに何かを打ち込んでいると思ってたら、そんなことをしてたのですか」
 家の仕事などひとつも手伝わない私なので、家人のその言葉にはいささか非難めいた響きがこめられていた。
 私に促されて、家人はパソコン画面にながいあいだ視線を投げかけていた。いつまでたってもいいともわるいとも何もいわずにただ、わからない………と言葉を濁したまま、用事がたてこんでいるのでと弁解しつつ、早々に私のそばから離れていってしまった。
 あるいはこれは、作品向上のためにサイト側が企てた、ひとつの励ましのようなものではないのか。と私がプラス思考で考えだしたのは、それから一時のちのことだった。
 物事はなんでも受け止め方次第でどうにでもなる。これを叱咤激励ととらえて、自らのスキルアップをはかればいいことで、このところどうもマンネリ傾向にある自分にとってはむしろ、飛躍発展のためのいい機会になるかもしれなかった。
 そう思うと、気分もずいぶん軽くなってきた。創作意欲もわいてきて、新たな作品に着手すると、ないことだがすらすらと文章もうかんで、これもまためずらしいことに最後のオチまでよどみなく書きすすめることができた。
 私は気をよくして、あらためて『時空革命モノガタリ』のサイトに作品を、今度はためらわずに送信した。誤字脱字もない完ぺきに仕上がったモノガタリだった。
 そしていつものように、サイトに載った自作を読み返そうと、コンテストページを開いてみた。
 そのときだった、ふと私の目がツイートの欄に書かれた『駄作者発表』の文字に引きつけられたのは。
 ふだんはあまりそういうのは見ない私なのだが、いったん目につくとどうにも頭から離れなくなってしまった。
 それでは対象作品は今回に限ったものでなく、過去のもの全般が該当するらしかった。
 それがわかった私は、しばらくのあいだ躊躇したあげく、もう一度家人を呼んでかわりにみてもらうことにした。
 先ほどに次いでふたたび呼ばれて家人は、本当に忙しいのにと露わな迷惑顔でこちらをにらみつけて、文句を吐いた。
「なぜ自分でみないの」
 私がまだ黙っていると、家人は核心にふれるような鋭い一言を発した。
「意気地なし」
 そして業を煮やしたように、ツイート欄の例のコーナーをのぞきこんだ。
「何々、英語とカタカナがミックスしたようなややこしい名前がみえるけど………えーと、W―――」
 不吉な予感というものは的中するようだ。せめてもの救いは、家人が私のペンネームを知らないということぐらいだった。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/12/09 W・アーム・スープレックス

篠川晶さん、コメントありがとうございました。

そこまで深読みしてくださるとは思わなかったので、恐縮しています。ほんの軽いパロディのつもりだったのですが、それがそうならずにネット上の暗部にまでつながるところが、現代社会の恐さかもしれませんね。

15/12/10 空乃星丸

あははは。家族に見せることこそが革命的。面白かったです。私は家族には絶対見せません。見せられません。そこがフィクションなのか、本当なのか。
本当に見せてるなら、さすが名前のような屈強な体と強靭な精神の持ち主に
ちがいない。合掌・・もとい、五郎丸のポーズで拝みます。

15/12/10 空乃星丸

さらにもう一コメ。この作品に惹かれたのは、自分の姿そのもの。鏡の私を見ているようで、滑稽旋盤(なんだこの誤字)。
読むたびに笑ってしまいます。最近、作文やりすぎて、鬱になってましたが、薬より効きました。アザスです。

15/12/11 W・アーム・スープレックス

空乃星丸さん、二度にわたるコメントありがとうございました。

屈託なく笑っていただいて何よりです。コメントそのものもなかなか機知に富んでいて、読んでいて楽しかったです。鬱になるぐらい作文を書かれているとは、かなりの書き手とお見受けしました。

15/12/15 霜月秋介

スープレックス様、拝読しました。

これは恐ろしい革命ですね。私もほとんど思いつきで書いてるようなものなので、こんなのが起きたら晒されまくりの削除されまくりですよ(笑)でも皆さんの創作意欲を掻き立て、よりレベルの高い作品が集うようになるのは確かですね。

15/12/15 W・アーム・スープレックス

霜月秋介さん、コメントありがとうございました。

正直なところ、この作品を投稿してもしや削除されはしまいかと、一瞬懸念
したこともありました。革命というのは常にそういう危険をはらんでいますよね。しかし当作品はとてもとても、革命とは無縁の、人畜無害のモノガタリです。

15/12/16 空乃星丸

またまた読んで笑いながらも、よく構成されているし、家族の表情も目に浮かびますし、かなり書かれているのだなあと感心しきり。源氏名ではなくペンネームはプロレスの技から来てますね。プロレスはジャイアント馬場の60歳の十六文キックが忘れられません。コーナーポストに立って、足を延ばしていると、中堅の相手のレスラーが引き寄せられるように馬場のシューズに当たり、何らかの反発力で吹っ飛び、倒れ、馬場は歩いてその上に乗り、3カウント。もはや神の技。

15/12/16 W・アーム・スープレックス

そのような神業を真剣に、一心不乱にこなしていたG・馬場さんも、形相すさまじく跳ね飛ばされていた相手のレスラーたちもみな、並々ならぬテクニックの持主だったのでしょうね。ちなみに私はザ・デストロイヤーとカール・ゴッチの両名に街中でであった経験があります。
楽しいコメントをありがとうございました。

16/01/12 光石七

拝読しました。
この革命企画、ホントにやられたら…… 私、間違いなく晒されて削除されると思います(苦笑)
主人公の姿が自分と重なる部分も多く、苦笑しっぱなしでした。でも、不思議と励まされて「頑張って書いていこう」と思えますね。
このお話自体が一つの革命ではないでしょうか。
面白かったです!

16/01/12 W・アーム・スープレックス

みなさんのコメントを読ませていただき、逆に創作にかける熱意のようなものを肌に感じとることができました。みんな一生懸命、この一語につきますね。
文中の「百の鉄砲も………」はまさに私自身の心境ですが、千の鉄砲でも当たれば命中、の意気込みでこれからも書いていきたいと思います。

16/01/12 W・アーム・スープレックス

追伸
光石七様

「百の鉄砲」ではなく「へたな鉄砲」でした。自分で間違っていたら、世話はありませんね。失礼しました。

ログイン