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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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6B鉛筆カッパ巻き

15/11/30 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:1012

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合言葉は、「奇人?変人?だからなに?」

中学校にもなって、乙女盛りが、
そんなしょーもないドラマに熱上げて、
同世代の子たちみたいに、ジャニーズにでも熱を上げればいいのに、
あんた、ちゃんと友達いるかね?

お母ちゃんったら、心配性。
でも大好きな母ちゃん。私には友達たくさんいたんですよ。
家が木造の土壁だったから恥ずかしくって、家に呼ばなかっただけ。ごめんね。
見栄を張るからしんどいのよって、耳にできたタコが喋り出すぐらい言ってたのにね。

だぁってぇ。
フェイスマンの吹き替えの声に惚れちゃったんだもん。
好きになるのには理由がないんだよ、お母ちゃんだって知ってるくせに。
乙女心はもう忘れちゃったかい。

でもあのドラマを見ていたことで、
今回私が遂行するべき行為における心のお守りができた。
これがなければ私、後ろ向きに倒れちゃってるよ。

愛した人が襲われた無慈悲な病。
その病を追いだしてしまう方法は、誰に訊ねても教えてはくれなかった。
お医者様も、スピリチュアルな先生も。
それなら、
尋ねる相手は一人しかいなかった。

彼の誕生日の、一月の十一日の、一時十一分。その一分間。眠る彼に、私は尋ねた。答えが必ず帰ってくる。病気を治すための答えだ。世界平和のための手立て、ではない。難関中学の面接での答え、でもない。

病は彼の体の中にある、誰だってぼろを出す瞬間はある。
殺されるのは嫌だろうから、必死に隠している自分の弱点。
それを吐露する瞬間。
それを逃さず捉えるだけ。

一月の深夜。冬は夜なんて、寒がりの私を苛立たせるようなことを、無責任に言いっぱなしの清少納言を逆恨みしながら、私はデジタル時計をにらんでその時をうかがっていた。
そして、
答えを得たのだ。

しっかしまぁ、なんという。
こんなことを実行する私は、奇人変人だ。
でも、私は知っているんだ。
これを乗り越えれば、私は
健康な彼を取り返すことができる。
一時間ごとに地獄で釜茹でにでもされているような呻き声を上げて苦しむ彼を、
救ってあげられる。
だから、
合言葉は「奇人変人?だからなに?」
ありがとう、モンキー。
ありがとうあの頃の私。いいドラマを好きだったな私。


その答えを実行するため、私は今、誰かも知らないよそ様の、お葬式に侵入している。
すし桶のお寿司の、かっぱ巻きの、キュウリを、6Bの鉛筆に差し替えるのだ。

だってしょうがないじゃない。頭がおかしいって、笑うなり蔑むなり、怖がるなりすればいいわよ。閉塞の中に、真理を一つしっかり抱いてもう、私はそこに含まれて閉じている。
何も怖くなんかない。

誰かの迷惑。そんなのは、ここの、外の常識。外に出てからいくらでも、償う。

喪服。と数珠。黒いストッキング。「このたびは」と声をかけると、無警戒に中へ通された。

もう式は済んで、親類縁者がお寿司をつまみだしている。私は、一人、誰にも頼らずに一人、Aカップのブラジャーに突っ込んだ、6Bの鉛筆、キュウリのサイズに短くカットしたそれを、
 今、とりだそうとしている。アレ、ない。

 あぁ。どこで落としたんだろう。もう。もう。


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