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つつい つつさん

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Aグループ

15/11/26 コンテスト(テーマ):第九十七回 時空モノガタリ文学賞 【 他山の石 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:801

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 私は地味で冴えない存在だった。背だけはひょろひょろ高いから目立つはずなのに、いつも教室の隅にひっそり座ってるだけの居るのか居ないのかわからない人間だった。同じクラスの子に「秋本ひかり」って聞いても誰だかわからずポカーンとするんじゃないかって思う。だけど、中学を卒業する時、あまりにも自分の思い出がしょぼすぎて、つまらなさすぎて、嫌になった。泣きたくなった。だから変わろうと思った。
 高校に入ると、私はありったけの勇気を振り絞ってテニス部に入部した。そこには、中学の時の学級委員で、小柄で笑顔が可愛くて頑張り屋でみんなに愛されていた奈々美ちゃんも居た。ママに奈々美ちゃんと一緒の部活なんだって話すと、嬉しそうに「頑張んなさいよ」って、言ってくれた。
 テニス部に入って一ヶ月も経つと八人居た新入部員も自然と二つのグループに分かれていた。テニスの経験者で一番巧くて、おまけに綺麗で派手な遥香ちゃんを中心としたAグループ、あとは目立たないBグループ。奈々美ちゃんはテニスは初めてだったけど、もちろんAグループで私は当然Bグループだった。Bグループは基礎体力の練習だけで、ボールも打たせてもらえなくて、球拾いばっかりだったけど、それでも私は幸せだった。こんな自分が遥香ちゃんや奈々美ちゃんみたいな目立つ人達と一緒にいられるだけで誇らしかったし、やっと買ってもらった新しいラケットを持って教室に入るだけで、なぜかクラスのみんなの視線が違う気がした。
 夏前になるとBグループの私達も練習に参加させてもらえるようになり、今まで運動なんてほとんどしたことない私も体を動かすことがどんどん好きになっていった。やっぱりAとBの間には大きな壁があって、練習メニューも違うし休憩時間なんかもほとんどしゃべらなくて、特に遥香ちゃんは私達なんかと目も合わせてくれなかったけど、奈々美ちゃんだけは優しくてBグループの子にも教わったこといろいろ教えてくれた。だけど、そんな奈々美ちゃんは最近Aグループの中でぎくしゃくしていた。奈々美ちゃんは真面目だから片づけも手を抜かないし先輩の言うこともちゃんと聞くけど遥香ちゃんは実力的には部内でトップ3に入る自分がなんで雑用なんてやらなくちゃいけないんだって、下手くそな先輩なんかには堂々と反発していた。他のAの子達も遥香ちゃんに合わせてたけど、奈々美ちゃんだけは黙々と雑用をこなしていた。もちろんBの子には選択権なんてなくて、むしろ雑用が本業だったけど。
 その日は運動部の人がよく使うトイレ掃除の順番がテニス部に回ってきた。他のBの子が違う雑用を任されていたからたまたま私とAの人達で掃除することになった。遥香ちゃんはトイレ掃除なんて一番嫌いそうだったから、「なんでこんなことしなくちゃなんないの!」って、ずっと不機嫌だった。私はBだから率先して床を磨いたり壁を拭いたり早く掃除を終わらせようと頑張った。奈々美ちゃんも一生懸命掃除していた。他のAの子達もしぶしぶ掃除していた。遥香ちゃんはめんどくさそうに眺めているだけだったけど、少しは協力する気になったのか、手持ち無沙汰なのか、なんとなくホースを持って意味もなく水をバチャバチャ流していた。しばらくして、トイレ掃除が一段落すると、遥香ちゃんが「こんくらいでいいよ。もう終わろう」って言い出した。奈々美ちゃんはムッとした様子で言い返した。
「遥香は見てるだけなんだから、いい加減なこと言わないで。ちゃんと掃除しろって先輩から言われてるんだから」
 遥香ちゃんは相当頭にきたようで近くのバケツを蹴り飛ばした。
「そんなに掃除したいなら、あんた一人でやりなよっ!」
 遥香ちゃんがそう言ってトイレから出て行くと他のAの子達もそれに続いた。私はもちろんBだから当然掃除を続けるべきだったけど、なぜかその時遥香ちゃん達に続いてトイレを出てしまった。トイレから出て来た私を今まで目も合わせてくれなかった遥香ちゃんが驚いたように見て、そして、いたずらっぽく笑った。
「ひかり、あんたうちらのグループ入んなよ。私が顧問に言っといてあげるよ」
 遥香ちゃんにそう言われてびっくりして固まってる私に他のAの子達も、「そうそう、奈々美なんかより、ひかりのほうが才能あるよ。背も高いし」と言ってくれた。
 それから私は本当にAグループの一員となった。私の無駄にひょろひょろ高い身長はテニスには有利で秋頃には遥香ちゃんとダブルスのパートナーを組むようになった。学校でも評判の美人で一際目立つ遥香ちゃんと一緒に居るようになった私の周りには自然と人が集まるようになり、部活でも学校でもAグループな存在になった。
 奈々美ちゃんはBグループになってからも変わらず頑張っていたけど、あまり笑わなくなった。そして、私はよく笑うようになった。


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