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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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俺達は我が道をゆく

15/11/23 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:1032

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 俺、大石良太は走っていた。全速力で町を駆け抜ける。
 一軒のスーパーを見つけると、俺は店のレジへと向かった。
「すみません、乾燥わかめありったけ全部ください!」

 両手にビニール袋を六つぶら下げ、俺は区民センターの会議室に入った。
「お疲れ様、劇団長」
「俺はただの部長だ」
 会議室に入るなりサークル一の変わり者、佐々木狂介(本名)が声をかけてくる。俺はこいつに言われて乾燥わかめを買いに町へ出たのだ。
「これ何に使うんだ?」
「ふやかして衣装に使うんだよ。派手で良いだろう? もちろん使用後はスタッフがおいしくいただきます」
 狂介の言葉に唖然とする。そんなくだらない理由で町中の乾燥わかめを買い占めさせたのか。まったく、こいつはやはり名前通り狂っている。

 俺達は大学で演劇のサークルをやっている。そこでの俺の立場は部長、狂介が演出と脚本だ。
 うちのサークルがやる演劇はかなり人気があった。というのも狂介のイカれた演出と脚本によるところが大きいだろう。今まで狂介は五連続夢オチや登場人物全滅オチなど破天荒な脚本を書いてきた。それでも最終的にはしっかり素晴らしい脚本になっているところが狂介の凄いところだ。
 狂介が無茶をし、俺が謝る。俺らは二人で一人の演劇人だった。

 狂介と会議室で待つ事五分。役者が集まってきた。大学サークルの演劇では校内に場所を借りられなかった時、こういう区民センターの会議室を借りて練習を行うのだ。
 そうこうして練習を始めようと思った時、一人の女性が慌てて会議室に入ってきた。サークルで裏方を担当している子だ。
「どうした?」
 狂介が冷静に尋ねる。すると裏方の子は必死にその問いに答えた。
「借りる予定だったハコが使えなくなっちゃったんです!」
 放たれた衝撃の一言。その場の空気は一瞬にして固まった。

 ハコとはいわゆる舞台の事を指す。公演を行う際、事前にハコを抑えておくのが演劇では鉄則だ。
「耐震偽装が発覚したとかで、施設が使用禁止になっちゃったんです」
 裏方の子が目尻に涙を浮かべながら事情を説明する。
 公演まで残り二週間。これからハコを借りるのは至難の業だ。
 今回借りようとしていたハコは、この地域でも最安値の場所だった。つまりハコを借りる時間だけでなく、予算も問題になってくるのだ。
「他の劇場はどうだった?」
「ほとんど予約で埋まっていました。空いていても予算が……」
 うちはあくまで大学のサークルだ。チケットノルマもないし、資金はかなり少ない。そうなると料金の高いハコは借りられないのだ。
 役者達が不安そうに俺達を見つめてくる。俺自身には妙案がない。そうなると。
「どうする?」
 狂介に問いかける。何かこの状況を逆転させる手は無いものか。そう藁にもすがる思いで狂介に声をかけた。
「……ふふふ、ははははは!」
 すると突然狂介が高笑いをした。この追い詰められた状況で頭がおかしくなってしまったか。いや、頭がおかしいのは元からだった。
 すると突然狂介が机を手で叩く。
「皆、安心してくれ。俺にとっておきの策がある」
 会議室内がざわつく。とっておきの策。その一言に俺は不安を覚えた。しかし今この場で建設的な意見を言えるのは狂介のみ。俺達は狂介の言葉に耳を傾けた。

 それから二週間後。新宿、アルタ前。その広場に俺達は集まっていた。
(作戦通りに行くぞ)
(了解)
 メンバー一同でその時に備える。
 そしてそれは始まった。
「人殺し!」
 女性の悲鳴がアルタ前に響く。一体何事かと通行人が足を止めた。
 一人の男が地面に倒れる。同時に包丁を持った別の男の姿が現れた。
「違う、俺じゃない。これは誰かの罠だ!」
 アルタ前で修羅場が展開されていく。人々はすっかり足を止め、その修羅場に見入っていた。

 お分かりいただけただろうか。実はこれ、全て俺達の芝居だ。佐々木狂介作『新宿アルタ前殺人事件』この二週間で既存の脚本を書き換えた新作の脚本だ。
 ハコが借りられないのなら、無料の場所でやればいい。その結果がアルタ前でのゲリラ公演だった。なかなか人も集まり、公演としては成功だ。だが、
「君、困るんだよねー」
 俺と狂介は警察署で説教を受けていた。ゲリラ公演なんてやったんだ。叱られるのは当然だ。
「これだから俺は最後まで反対したんだ」
「でも最後は賛成しただろう? それにこういう時叱られるのが劇団長の仕事でしょう」
「それは」
 言い返せず思わず無言になる。
 すると警官が不思議なものを見るように声をあげた。
「君、さっきから一人でぶつぶつ何を喋っているのかね」
「ああ、それは」

「「俺達多重人格なんです。こうやって会話できるように」」

 大石良太と佐々木狂介、俺らは二人で一人の演劇人だった。


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このストーリーに関するコメント

15/12/28 光石七

拝読しました。
こういうオチでしたか。そういう意味で「奇人」なんですね……
でも、魅力的な演劇人だと思いますし、作る舞台も面白そうで観てみたくなります。
面白かったです。

15/12/28 海見みみみ

光石七さま>ご覧いただきありがとうございます。
はい、そういう意味での『奇人』です。
彼らの作る演劇を観れるものなら私も観てみたいです(*^_^*)
それでは感想ありがとうございました!

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