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左足の小指さん

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未来はどこで作られているのか?

12/08/10 コンテスト(テーマ):第十一回 時空モノガタリ文学賞【 高校野球 】 コメント:0件 左足の小指 閲覧数:1519

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小学生の頃、野球が好きでたまらなかった。
6年間野球漬けだったが、苦とも思わなかった。
楽しくって、楽しくって、みんなで甲子園に行こう!と誓い合い、大事な仲間と白球を目標に向かって追いかけるのだと思っていた・・中学2年までは・・
仲間だと思っていた・・なのに・・突然「体力が劣る」と山田から言われた・・
「私の方が、足も速いし握力だってある!点数だって、私の方が取ってる!あんたになんか負けない!」
「女は甲子園には行けないんだよ〜」
嘘だ!私の方が背だって高い、ホームランをお前が打てるか?
父さん、助けて!嘘だと言って、イチローになれると言ったじゃないか!
父親を探した。探しながら、不安で不安で涙が止まらない。
毎日していた指立て伏せ、ゴムボール握り、ダンベルでの手首の強化、中学2年でキャプテンに選ばれた時、誰よりも喜んでくれた父さん・・父さんなら、解決してくれる!
しかし、やっと見つけた父親が、娘に言った言葉は残酷なものだった・・
「お前が男だったら良かったのに・・」
世の中には、ピアノだって水泳だって、将棋だって、何だってあるじゃないか!
私が女だっていうのは、はなから分かっていたじゃないか!どうして?野球をさせたの?
他の女子が美白だ、ダイエットだと言っている頃、グラウンドでどうやったら体が大きく、強くなるかと日々、鍛えていたのは何の為?甲子園のベンチにさえ女は入れないそうじゃないか!どうやったら、明日から野球が出来るんだ?何の為にこんなに太い首になった?何の為にこんなに髪を短くしてる?
次々に陸上や野球の記録を塗り替えた・・体力測定では、部員の中で常に一番で、二年になってからは、身長も178で、副キャプテンを越し、嬉しかったのは、野球に役立つと思ったから・・
よっぽど女って嫌われてるんだな・・
体力が劣るなんて・・嘘・・言われて、目標にする事さえ禁止か・・
学校休んだ・・
山田が誤りに来た。
「体力劣ってないよ、キャプテンだし、俺、知らなくって、TVで言ってたから・・」
「うん、分かってる。教えてもらって良かったと今は思ってる。私も知らなかったんだ。大人はみんな知ってたのに・・」
「明日から、学校来るよな?」
「うん」
・・とは言ったものの、学校に行く気がしない、何しに行くか分からない・・
勉強してたのは、成績下がるとクラブ活動禁止だったから、それと高校選びたかったから、野球の強い学校に行きたかった・・
高校では、野球部に入れたとしても公式戦には出れないし・・膝を抱えて暗くなっていると母親の声がした。
「章(あきら)、おじいちゃん迎えに行って来て」
「はーい」
近くの碁会所に行く。じいちゃんは、私を見つけると「孫が迎えに来たから」と碁石を急いで片付け、逃げるようにして碁会所を後にした。
「負けてたの?」
「昔は、俺の方が強かったんだ。だから子供は嫌いだ。すぐ強くなる。奴は全国8位の杉下ダ」
「ベスト8か・・じいちゃん、女は甲子園に出れないんだって」
「あれは、古臭くってケツの穴の小さなゲームだからな・・お前は忘れただろうな、じいちゃんは囲碁を習わせたかったんだ。そしたら、今頃、杉下なんぞにでかい顔はさせなかったのに」
「じいちゃん、先に帰ってて」
私は、碁会所に引き返し、杉下君に声を掛けた。
「杉下君!碁しよう」
「いいよ、何段?級?初心者・・か、んじゃ、五並べしようか?」
「歳いくつ?」
「中2」
「私と一緒だ。高校になっても囲碁続ける?」
「今年次第、中2の夏の全国大会で4位以内に入らなきゃ、親から禁止命令が下る。受験勉強に専念させる予定だったから、去年入賞したんで親は複雑っぽい」
・・チャンスはどこにでもある訳じゃないし、誰もが恵まれてる訳じゃない、目指すものも人それぞれか・・親が助けてくれないなんて言ってる時点で甘えてるよな、杉下くんは、親とも戦ってる、甲子園の話をしてみる。
「それって、言い訳だろ?強けりゃ世界は変えられるよ」
翌日、野球部に行くと副キャプテンが、みんなの前で
「俺、兄ちゃんがいる。高校で野球部だけど3年間球拾いで甲子園だってベンチにもはいれなかった。男だって、入れない奴は入れないんだ。試合だって、出れなかった」
「有難う。もう大丈夫」
副キャプテンは、今までそんな事言わなかった。そんな事言うの辛かったと思う。言いたくなかったのに私の為に言ってくれた。仲間じゃないなんて思ったのは私の方、支えてもらってたんだ。
「男子にはかなわないな」
私の言葉に部室が揺れた・・そんなに衝撃的か・・
後から先生の怒鳴り声「去年みたいに準優勝だったらどうするんだ!」
先生のノックが始まる。
不幸ぶるのはやめよう。私は恵まれている。この学校だって受け入れてくれた。私の高校野球はまだ始まってもいないんだから・・




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