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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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ターザンの石

15/11/21 コンテスト(テーマ):第九十七回 時空モノガタリ文学賞 【 他山の石 】 コメント:7件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1865

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ついに俺の才能も枯渇したか。
と私は、今回のテーマの『他山の石』をしるなり、頭をかきむしった。なんと難解なテーマだろう。これをいったいどう物語にすればいいのか、考えれば考えるほど混沌として、こんとばかりは完全にお手上げだった。
今回はパスしようかとマジで考えた私だが、一度パスする癖がつくと、とくに私のような弱い意思の持ち主は行き詰まる度にバスするのではという懸念が頭をもたげた。
それで私は、こういうときのための助け舟にすがりつくことにした。
「もしもし、やあ。ちょっとアイデアに詰まってね。うん、そうなんだ。いい知恵があれば参考にしたいんだけど。テーマがね、『他山の石』なんだ。そうだろ、とっかかりさえつかめないんだ。一週間あるから、それまでにヒントでもなんでもいいから、思い浮かんだら電話してくれないか。頼むよ。もつべきものは友だ」
その同じコメントで私は5人に連絡をとった。5人とも、私の創作の理解者で、これまでの私の全作品を読んでいていつも、感想と批評、ためになるアドバイスをしてくれていた。だが、そんなかれらも、さすがに今回のテーマには難渋しているとみえ、それから日がすぎても誰からも連絡は入らなかった。ひとり、半崎という女性から電話があったのは、期日の一週間目のことだった。
「ごめん。遅くなっちゃった。あれから私なりに考えてみたんだけど、結局何も思い浮かばなくって、それでね、私の知人たちにも連絡してみたの。若い連中にも、年配者にもあたっているうち、ひとり、面白いテーマだなと答えた人がいたの。その人も、一応物書きで、ひとつそのテーマで書いてみるよっていうから、きょうにでもあなたのメールアドレスに送ってくるはずよ。参考になるんじゃないかしら」
私は、そこまでやってくれた彼女に感謝し、その一応物書きという人物から送られてくるメールを心待ちにすることにした。
昼過ぎにPCのメールをあけてみると、はたして彼女から聞いていた名前と、作品名がみとめられた。
私は、期待に胸躍らせて、さっそくメールを開いてみた。以下がその全文だった。

『ターザンの石』

密林の王もいつも冒険ばかりしているとはかぎらない。たまには木の上で退屈をもてあますこともあるだろう。そんなとき本があるわけでなし、もちろんゲーム機などあるわけもない。それで彼は地面から拾ってきた石で、最初はお手玉のように空中に放り上げて遊んでいたのが、そこはやっぱり密林の王者、そんな女の子のお遊びには飽きたらずに、握りしめた石を枝の上からジャングルにむかって力いっぱい投げつけた。見えるものといえば、びっしりとうめつくされた繁みばかりで、そのすぐ下に巨大なゾウが潜んでいることなど、彼にわかるはずもなかった。しかもそれがゾウのリーダーで、いきなり額にガツンと固いものがぶちあたった拍子に、びっくりして跳びあがったところを、周囲にたむろする仲間のゾウたちにみられた手前、このまま何事もなかったではすまされない状況になってしまった。ここは一番、巨体にものをいわせてひと暴れしてやれと、いきなり木々をなぎ倒して駆け出した。みんなにはいったい何がおこったかわからなかったが、リーダーに従わないわけにもいかず、おなじように鼻を鳴らしながら巨体をゆすって前進をはじめた。すさまじい地響きでジャングルが振動するなか、必死に木にしがみつきながらターザンは、非常にまずいことになったと顔を曇らせた。いまさら、あの石は自分だったともいえず、しかしこのままほっておくとジャングル中のなにもかもが巨ゾウたちに踏み潰されかねず、枝の上で彼は茫然とたちすくんだ。そこへ、仲よしのチンパンジーがむきだし笑いしながらちかづいてきた。
彼は周囲をみまわしてから、まだもっていた石を、チンパンジーに握らせた。
「あとは頼んだ」
といい残して彼は、一等ながい蔓にぶらさがるなり、繁みの中を大声をあげながらゆきかった。
「みんな、いまのはチンパンジーのしわさなんだ。赦してやってくれないか」
するとそれを聞いていた当のチンパンジーが怒って、こちらに飛んできたターザンむかって石を投げつけると見事、その石は彼の顔面に命中した。ターザンは密林のまっただなかに落ちていき、直後にその辺り一帯に巨象たちの荒々しい足音が轟きわたった。

―――読み終えたとたん私は、こいつなにを考えているのだと、正直憤慨した。『他山の石』がなんで『ターザンの石』なんだ。人をからかうのもいい加減にしろ。さすがに私はあきれ返った。
人に頼ったりするからこんなことになるのだ。私はようやく冷静さをとりもどして自分にいいきかせた。結局、自力で書く以外にないのだ。あれ以上ひどい作品にはならないだろうという変な自信がわいてきた。『ターザンの石』を『他山の石』にして、ひとつ精進してみることにしよう。


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このストーリーに関するコメント

15/11/25 密家 圭

冒頭で今回のテーマの難しさに同意して読み始めました。ターザンの石が出てきてからの勢いの良さがすごいですね。とにかく勢いの良さにやられました(笑)

15/11/25 W・アーム・スープレックス

haruさん、コメントありがとうございました。
今回のテーマを難解に思っているのが私だけではないことがわかって安堵しました。
haruさんは第一回『新宿』にも出品されているのですね。旧友とお会いしたようでわけもなく嬉しいです。

15/11/30 アシタバ

拝読しました。「他山の石」難しいテーマですよね。しかし、「ターザンの石」とは驚きました(笑) 創作の様子が面白おかしく描かれていてとても楽しかったです。

15/11/30 6丁目の女

初めまして♪新参者ですがよろしくお願いいたします!

拝読しました。
ラストの一行、スカッとしました!お見事‼

それにしても、他山の石…思い浮かびそうにありません。
パス濃厚です!( ̄0 ̄;



15/11/30 W・アーム・スープレックス

アシタバさん、コメントありがとうございました。
楽しんでいただいてよかったです。難しいテーマと思ったのは本当で、他山の石、他山の石……ターザンの石となり、最初はまさかこれで何か書くとは思ってもいなかったのですが、結果的にこのような作品になりました。


6丁目の女さん、初めまして。コメントありがとうございました。
スカッとされて何よりです。
パスなどといわずに、どうぞ私の作品を他山の石にして、傑作を書いて下さい。

16/01/06 光石七

拝読しました。
「他山の石」→「ターザンの石」(笑)
コメントを拝見するまで、「もしかしてW・アーム・スープレックスさんの実話?」と思っていました。
作中の『ターザンの石』のお話、私は結構好きです。私の駄作よりもずっといいですよ(真顔)。
やはり皆さん、テーマに苦しんだり創作の苦労があるのですね。私も頑張って書いていきたいです。

16/01/06 W・アーム・スープレックス

私もみなさんからいただいたコメントをみて、誰だってそんなとんとん拍子に書いているのではないことがわかり、安堵もし、また励みにもしたいと思いました。逆にあんまりすらすら書けたものって、案外つまらなかったりする場合が多いような気もします。すらすら書けなくても、つまらない場合も、もちろんありますが。私の場合。

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