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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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疑心暗鬼

15/11/11 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:906

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「床の間の皿はかつて秘宝と呼ばれた名品だ。売れば一千万以上になるだろう。お前の今後のために役立てなさい」
 妙子の父はそう言い残すと、病院のベッドで再び深い眠りに入った。無事に寝ている事を見届け、妙子は座っていた椅子から立ち上がる。
 妙子の人生は暗いものだった。母を幼い頃に無くし、父と二人暮らしの日々。大学を卒業し就職しようとしたところで父が病に倒れ入院した。父を介護するために就職を断念。それから十年近い日々を父の介護に費やしてきた。気づけば婚期も逃し、人生はお先真っ暗だ。父が死んだらどうするのか。それが妙子の悩みだった。
 だがそれも父の話を聞いて一転。幼い頃から床の間に古びた皿があるとは思っていた。だがそれがまさか一千万円以上もするお宝だとは。これさえあれば人生やり直せるはず。そう妙子は浮かれていた。

 父の病院から帰宅し、家の前に着くと一人の女性が立っていた。エリカ、妙子の幼なじみだ。
「どうしたの、こんなところで?」
「あんたに会いに来たのよ。ずっと待っていたんだから」
 そう言われてスマートフォンを見てみると、エリカからのメールが何通か届いていた。これは申し訳ないと妙子は平謝りしながらエリカを家へ通す。場所は自然と床の間のある和室になった。
 妙子はお茶を淹れ、エリカの元へ運んだ。エリカはお茶を受け取り一口飲むと、いつもの調子で口を開いた。
「それにしてもその床の間の皿、いいお皿よね」
 床の間の皿。その言葉に妙子は過剰に反応した。なぜ今、皿の話題が出てくるのか。嫌な予感に妙子の胸がざわつく。
「そう? ただのガラクタよ」
 とりあえずはそう言ってごまかす。
 もしかしてエリカはこの皿が名品だと知っているのだろうか。だとしたらこの皿は狙われている事になる。だが実際のところはまだわからない。
 妙子はエリカにカマをかけてみる事にした。
「エリカ、今日何かいつもと様子違わない?」
「そうかしら」
 そう言ってエリカは視線を逸らした。エリカはウソをつくとき、視線を逸らす。妙子がエリカの幼なじみだからこそ知っている癖だ。
 妙子はいよいよ考えこんだ。エリカは何か秘密を隠している。それはこの皿を奪い取ろうとする計画かもしれない。どこで情報を仕入れたのかはこの際関係ない。皿が狙われているかもしれない事実だけが妙子にとって重要だった。
 ふと妙子は思い出す。そういえば小学生の頃、クラスでお金が無くなった事があった。その時犯人だと疑われたのがエリカだった。もしかしてエリカには物を盗む癖があるのではないか。そう考えだすと疑心暗鬼が止まらなくなる。
「ちょっと妙子。あんた目が怖いよ」
「ごめん。トイレ行ってくる」
 そう口にして妙子はわざと一端和室から離れた。それから物置に向かい大きめのカナヅチを手に取る。妙子はカナヅチを後ろに隠し持つと、そっと影から和室にいるエリカを盗み見た。エリカはキョロキョロと辺りを見回し、何やら不審な動きを見せている。それが妙子の疑心暗鬼の心により火をつけた。
 何か秘密を隠し、過去から盗み癖があり、今こうして怪しい動きを見せている。
(私の皿を、私の未来を奪われてなるものか)
 妙子はカッと目を見開くと、後ろからエリカの頭をカナヅチで殴った。鈍い音が響く。同時にエリカは白目を向きその場に倒れた。
 妙子はエリカに近づき頬を叩いて生きているか確認する。完全に意識がない。エリカは死んだのだと妙子は確信した。
「私の大事な皿を奪おうとするからだ! このお宝は、絶対誰にも渡さない!」
 そう高らかに宣言し、妙子は笑い声をあげた。その姿は疑心暗鬼と狂気に取り憑かれた魔物のようである。
 するとふとエリカのカバンに入っている箱が目に入った。なんだろうと妙子は箱を手に取る。するとそこにはリボンの下にメッセージカードが挟まれていた。妙子はメッセージカードの内容に目をやる。
『いつもお父さんの介護お疲れ様。お誕生日おめでとう』
 それを見て、一気に妙子は正気に戻った。慌てて包装紙を破き、中身を確認する。中には新品のおしゃれなお皿が入っていた。スマートフォンを開き、日付を確認する。今日は妙子の誕生日だった。
「私、介護で忙しくて、誕生日も忘れて……」
 妙子の手からカナヅチが滑り落ちる。
 エリカは誕生日をサプライズで祝うために来てくれたのだ。それが隠し事の正体。それを勝手に勘違いし、妙子はエリカに襲いかかった。後悔してももう遅かった。
「私はなんて事を」
 妙子は涙を流しながら新品の皿を抱きしめた。父の言う秘宝の皿より価値のある、幼なじみからの大切なプレゼントを。

 だがこの時、妙子は気づいていなかった。自分の背後で、エリカが目を覚まし、落ちていたカナヅチを手にとって、妙子に襲いかかろうとしている事を。


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このストーリーに関するコメント

15/12/13 光石七

拝読しました。
疑心暗鬼って本当に怖いなあ……と思っていたら、ラストに更なるオチが。
家にお宝があるのも考え物かもしれませんね。
とても面白かったです。

15/12/14 海見みみみ

光石七さん>ご覧いただきありがとうございます。
今回はオチに力を入れてみました。
お宝があるから幸せになれるとは限らないようです。
それでは感想ありがとうございました!

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