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woodmakerさん

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リメイク

12/08/09 コンテスト(テーマ):第十一回 時空モノガタリ文学賞【 高校野球 】 コメント:0件 woodmaker 閲覧数:1599

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9回の裏、満塁のフルカウント。
スコアは5−4で勝ってはいるが、
状況からして、かなり追い込まれている。
何より、今打席に立っているのは4番。

いつにもまして唸るほどの暑さ。
今日に限って。
「なぁ、この状況って、あの時と似てねぇか?」
大ピンチの今、タイムを取り集まっている。
「言うなよ。思い出すだろ!」
忘れもしない最悪の負け方をしたあの試合。
「いやだってさ、バッターまで同じじゃんか」

そう忘れたくたって忘れようがない。
3年前の夏、今と同じ状況を迎えていた。

不安そうにセカンドの智、
『どうするよ、かっちゃん…』
腹の据わったセンターの松、
『どうもこうもねぇだろ。安田は見送って、5番を仕留めるしかねぇって』
同じ考えだったサードの仁、
『そうだよ!今日の5番、スコアボロボロだろ、ヤス?』
ピンチを冷静に判断してるヤス、
『あぁ。弱点は内角低めのカーブ。笑えるほどかすりもしねぇ』
勝を安心させようとショートの亮、
『延長はきついけど、幸い俺らは9番のカズから!チャンスあるよ!』
話がまとまりかけ、ピッチャーの勝に視線が集まるその時だった。
『おいおい、坊主どもまさか敬遠じゃねぇだろうなぁ。男だろビシッとしめて終われよなっ!』
『バッ、あの酔払い。かっちゃん、気にすんなって。逃げるわけじゃないしさ』
『そうだよ。勝つために、全国に行くために、ルール違反をするわけじゃねぇんだ』
勝が視線を上げ、安田を睨む。
安田は安田で、打つ気満々。不適な笑みさえ見える。
明らかに挑発している。
『おい、みんなポジションに戻ってくれ。』
『頼んだぞ、かっちゃん!』
『勝つぞ!』
キャッチャーのヤスが最後までマウンドに残り、
『とまぁ、そういう訳だが…どうする、かっちゃん?』
『ヤス。座ってくれ。投げる。サインは無しだ』
無言のまま、頼んだぞの視線を送りつつ戻っていくヤス。
『どうする?そんなことはなぁ…』
勝は一人小さくつぶやきながら、安田を睨みつけたまま大きく振りかぶり、
『決まってんだろぉ!!』
そう叫びながら、投げた。

「あの時はみんな固まったよな」
「あっ、俺爆笑してた」
「まさか、安田のドッテ腹にあの日一番の剛速球をねじ込むんだもんなぁ」
「みんな唖然として、球場が静まりかえったもな」
「その後は、その日駄目だった5番が奇跡の長打。ゲームセット」
ピンチという気負いはすでに無かった。
「分かってるよ!もうあんなへまはしねぇ」
つかさずヤスが、
「えっ、へまなの?わざとじゃなくて」
「いや、いけると思って投げたら、ちょっと力んじゃって…」
「はいはい。まぁ昔は昔。今は目の前の安田をどうにかしようぜ、甲子園かかってるし」
甲子園。高校球児には魔法のような言葉である。
すべてがそうでなくてはならないように感じさせる。
「やることはわかってる。二度と同じへまはしねぇ。さぁみんな戻ってくれ!」
「頼んだぞ!」
今回ばかりはヤスも確認せず、戻っていく。
小さい頃からバカやって、楽しくやってきた俺たちが、
唯一マジになれた野球。
暑かろうが寒かろうが関係ない。
今年ですべてが決まり、そして終わる。
いや、今は始まるというべきだろう。

『さぁ、満塁、フルカウントからの緊張の一球。ピッチャー大きく振りかぶって…』


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