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seikaさん

かつては女子中学生でした。

性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
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出「奇人の家」記

15/11/05 コンテスト(テーマ):第九十六回 時空モノガタリ文学賞 【 奇人 】 コメント:0件 seika 閲覧数:1196

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戸舞家では戸舞賛歌に一切口答えすることは出来ない。何かいおうものなら
「うるさい、文句言うな。黙っていうこときけ。イヤならこの家から出て行け。」
と怒鳴られ殴られる。さらに戸舞賛歌は家族の対人関係をすべて自分経由にしているので家族が知らないところで誰かと接点を持たせないようている。またテレビや雑誌なども戸舞賛歌の許可なしに見ることは出来ない。戸舞賛歌が「これは良い番組だ。」などと推奨したテレビ番組や書籍のみ許されるしそれだけではなく視聴する義務がある。
そんな戸舞賛歌の職業は翻訳家、朝から晩まで家に居てクラシック音楽を聴きながら仕事をしている。
 そんな戸舞賛歌は藤沢市から東北は山中の町、怒涛市へと引っ越してきた。日本中が晴れてぽかぽか暖かくてもここだけ暗く肌寒い怒濤市の気候が気に入り棲み付いてしまったのだ。もちろん家族は何もいえない。すべて戸舞賛歌の顔色を伺い、戸舞賛歌にこの家にすることを許可してもらうしかないのだ。
やがて戸舞家長女脳子は高田馬場の先にあるW大学文学部に入学した。カレシはもちろん友達も出来てない。結局W大学を中退して何かを求めて外国放浪の旅に出る。しかし結局日本に帰ってくるしかなかった。
 脳子にとってW大の先輩でもある杉並阿佐ヶ谷の有機野菜販売店店主膵夫と女性従業員腸恵が脳子を唯一相手にしてくれる人たちだった。外国から帰ってきた脳子を店主は
「おまえ、あの家出るか・・・。今なら間に合う・・・。」
という。隣にいる腸恵も
「うん。」
という。そのとき、脳子は膵夫のこの言葉の意味はわからなかった。しかしこの二人の言葉は脳子の心の奥底に響いた。しかし結局脳子は怒涛市の実家に帰るしかなかった。
「こんどは古代地中海にあったバルタン国をやろうと思っている。」
戸舞賛歌は娘が大学から帰ってきたことなどどうでもいいというかんじで、今やっている研究のことで頭が一杯だ。
「まだ日本でバルタンをやったヤツは居ないからな・・・。」
と自分が日本におけるバルタン王国の第一人者になれるとご満悦だった。しかし翌日の朝刊をもて戸舞賛歌は愕然とした。そこに霊村という学者が書いたバルタンの本の広告がのっていたからだ。
「・・・畜生、霊村に先を越された・・・。」
戸舞賛歌の顔色が曇る。こうするとしばらくの間不機嫌になる。家族への八つ当たりは必須だ。とにかく耐えて耐えて耐え抜くしかなかった。
 そして再び脳子は外国放浪の旅に出て、そして帰国した。再び阿佐ヶ谷の膵夫と腸恵のもとに行くしかなかった。
「脳子ちゃん、あの家出よう。脳子ちゃんにとって最後のチャンスだから・・・。」
この腸恵の言葉に脳子の心は動いた。
「うん・・・。」
こうして脳子は神奈川県三浦市にある膵夫の仲間で大根を作っている泌尿木腎輔のところで働くことになった。ここで初めて自分が生まれ育った戸舞家というのはいかにおかしい家なのか、自分が尊大な知的指導者だと思い込んでいた戸舞賛歌がなんとも奇人変人なのかということがわかった。家族同様に自分を受け入れてくれる泌尿木家に居場所を見つけた脳子はもう戸舞家に戻るつもりはなかった。しかし母髄美のことが気がかりだった。戸舞賛歌は髄美を縛り付けているだろう・・・母髄美に手紙でも書けば戸舞賛歌に読まれて母が酷い仕打ちに遇うだろう・・・。しかし幸い、戸舞賛歌は登山という趣味があり、子分のミナトたちを率いて山に出かける。そのとき、脳子は世話になっている泌尿木家の人たちと車で怒濤市の戸舞家にやってきて、母髄美を救出するとともに、戸舞家に置いてある自分の私物をすべて車に積んで持ち帰った。家族同様に受け入れてくれる泌尿木家の人たちに母髄美も心を動かされ、もう戸舞賛歌の許に戻る気にはならなかった。
 それからしばらくして隋美が弟の脊彦たちと怒濤市の実家に乗り込んだ。するとエプロンをした女性が出てきた。胸腺銀行の三十台半ばの美人行員呼吸木肺子だった。このために戸舞賛歌と髄美の協議離婚は成立した。そして戸舞賛歌と呼吸木肺子は結婚した。が肺子は髄美のように従順ではなかった。まもなく戸舞家には肺子の友達をつけてきた。戸舞賛歌がバルタン国の話をしても誰も聴いていない。これではバルタン国の研究どころではない。戸舞賛歌は
「いいかげんにしろ。僕がバルタン国の研究していることは知っているだろう。僕は日本一のバルタン研究者になるんだから協力しないんだったらこの家から出て行ってくれ。」
と怒鳴る。すると肺子はすんなりと家から出てしまった。その後脳子と髄美は三浦市で幸せに暮らしたが、戸舞賛歌はどうなったかはわからない。

 


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