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FRIDAYさん

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タイムカプセルに埋めたもの

15/11/04 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:2件 FRIDAY 閲覧数:1733

時空モノガタリからの選評

爽やかな作品で魅力がありますね。掃除をきっかけに出てきた、古いタイムカプセルを示す地図。掘り出された、10年後の自分へ宛てた手紙。それは、「俺」の心の中に秘めていた思いを、再認識させる役割を果たしたのでしょう。彼はこれからもずっと彼女への思いを心に秘め持ったまま生きていくのでしょうか。その思いは純粋で美しいものだと思います。しかし、一人の人間への思いを抱えたまま、果たして人は幸せになれるのか……。その苦悩というものは、なかなか深いものではなかろうかと、その後が気になる作品でした。

時空モノガタリK

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「タイムカプセル?」
 頓狂な声を上げた拓真に、俺は軽く頷いた。
「小学校を卒業する時だよ。あの頃つるんでた五人で埋めた。覚えてないか?」
 問うと、拓真はビールのジョッキを傾けつつ記憶を探っているようだ。
「埋めた気もする…はっきり覚えてないけど。でもそれが?」
「確か、十年後に掘り出そうって話だった。でも俺らももう二十七だ。十年どころか十五年経ってる。…思い出したのはつい最近だけどな。とにかく、折角だから集まって掘り出さないか」
 その話をするため拓真を呼び出したのだ。すぐに連絡のつくのは拓真だけだったから。
 ふむ、と拓真は頷く。
「あの頃の五人っていうと、あとは博嗣と瑠奈と春だな。博嗣と瑠奈は地元にいるからすぐに連絡つくとして…春だけはかなり難しいぞ」
「…ああ」
 そこは、俺も知っている。何せ春は、
「フランス人と結婚して一緒にフランス行ったんだからな。よしんば連絡ついても、来るのはかなり難しいだろう」
「まあ、それでいい。俺は誰の連絡先もわからないから、お前から連絡を取ってくれないか。日取りの調整は俺がするから」
「おう、わかった。話がついたら連絡するよ」
 頼むよ、と俺も小さく笑って、ジョッキをカチンと打ち鳴らした。

 集まる機会は思いのほか早かった。集合場所は俺たちが卒業した小学校。その校門に四人で集合する。
「春はやっぱり無理だった。皆によろしくってさ」
 拓真の言葉に俺は頷き、瑠奈と博嗣は、フランスだもんなあ、と笑う。
「でも、よく思い出したね。言われるまで忘れてたよ」
 瑠奈が俺に向かって言えば、博嗣も横で頷きながら、
「僕なんて言われても思い出せなかったよ。中に何を入れたのかなんてさっぱり」
 なあ? と振られて、俺は曖昧な笑みを返した。
「ああ…俺も覚えてない」
「なーんだ。なら宝探しだね、これは」
 スコップを振り回しながら、瑠奈が言う。
 成程、宝探しか。
 そうかもな、と拓真も笑った。
「じゃあ、早速発掘しに行こうぜ…って言っても、場所も覚えてないんだよな。遼、お前は覚えてるのか?」
 ん、と俺は頷いた。
「そもそも思い出したきっかけでな。掃除してたら地図が出てきた」
 ポケットから抜いたそれを広げる。傷んだ紙だが、判読はできる。手書きの地図だ。小学校の俯瞰図と、バツ印。
「このバツ印が、埋めた場所だろう」
「よっしじゃあ行こうぜ。久々にわくわくするんだ」
 拓真が先に立つと、博嗣と瑠奈も続く。皆楽しそうだ。その最後尾に続く。
 高揚感は、ない。

 意外と覚えているものだ。迷うことなく件の地点に到着した。
「よし、掘るか」
 用意してきたスコップは二本。拓真と博嗣が率先して刃先を地面に突き立てる。瑠奈はわくわくと、俺は無言で見守る。
 やがて出てきたのは、ポリ袋に入れられた金属缶。
「これか」
 多少の緊張を滲ませながら取り出し、拓真が唾を呑む。
「――開けるぞ」
 全員の頷きをもって開封したそれを一斉に覗き込む。そこに入っていたのは、
「玩具がひとつずつ…と、手紙だな」
 それぞれ人数分ずつ入っていた。ああ、と博嗣が頷く。
「思い出した。一番大切なものと、十年後の自分への手紙を一通ずつ。それを入れたんだな」
 そうだったな、と頷きながらめいめいに自分の宝物と手紙を手に取る。俺が宝物として入れたのは、一枚のカード。当時流行っていたカードゲームの一枚だ。
 手紙を、開く。
 そこには短く、これだけが書かれていた。


 十年後の自分へ。
 ひとつ訊く。

 まだ、好きでいるか?


 それだけだ。
 一見しただけではただの生意気な文だ。けれど、それを書いた本人には、わかる。
 便箋を覗くと思った通り、もう一枚同封されていた。
 一葉の写真。
 五人の少年少女が横一列に、手を繋いで写っている。十五年前の、拓真と博嗣と瑠奈と俺と、そして、
「……」
「おう、どうだった? 俺のはバカなことが書いてあったぞー」
 笑みを噛み殺しながら拓真がやってきた。俺はさりげなく手紙と写真を隠しながら、浅く笑って返す。
「俺のもそんな感じだよ」
 今も変わってないようだけど。
「よし、じゃあ折角こんなに集まったし、呑みにでも行くか!」
「お、いいねえ。行こう」
 瑠奈の号令に拓真と博嗣も続く。立ち止まっていた俺を、拓真が振り返る。
「遼、お前も行くだろ?」
「…ああ、行くよ」
 頷いて、俺も歩き始める。手紙と写真は、便箋に戻してポケットにしまった。
 …ああ。
 想うのは、かつて俺と手を繋いでいて、今この場にいない、あいつのこと。
 俺は笑った。でもどうして笑ってしまったのかはわからない。

 まだ、好きでいるか?
 ああ、好きでいるとも。
 いつまでもずっと、未練たらしく、誰にも言わない秘密の宝物として。


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このストーリーに関するコメント

15/12/08 光石七

拝読しました。
とても素敵なお話ですね。
決して伝えることは無い、秘めた想い。でも、我知らず笑ってしまった主人公の姿に、好きな思いを抱えながらも前に進んでいくんだろうな、と希望を感じました。
仄かな切なさが混じる温かな読後感でした。

15/12/15 FRIDAY

コメント有り難うございます。
過去の想いを抱え続けるのは幸せなのか、それとも辛いだけなのか。主人公にとってはどちらとも言い難いものなのだと思います。
お読みくださり有り難うございました。

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