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つつい つつさん

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ショートサマーランドの神秘

15/11/03 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:2件 つつい つつ 閲覧数:935

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 その村には一つの伝説があった。百年に一度咲くと伝えられるショートサマーランドの神秘と名付けられたその花を捧げられた女性はたとえ相手がどんな男性であろうと、プロポーズを受け入れると。それほどまでにその花は美しく、その花を捧げられることはその村の女性にとって名誉なことであった。そして、今年がちょうど、前回その花が現れてから百年目の年と言われていた。
 僕はこの村一番の美人エレーヌに惚れていた。いや、僕だけじゃない。この村の若者は皆エレーヌに惚れているにちがいなかった。淡い栗色の柔らかそうな髪、真っ直ぐで綺麗な瞳、凛とした立ち姿、そして慈愛に満ちた表情、誰もがエレーヌに魅了されていた。だけど、このまま放っておけばエレーヌは村長の息子のマイケルと結婚することになってしまうだろう。エレーヌの一六歳の誕生日の来月には結婚が正式に決まってしまうのはわかりきっていた。だから、僕は必死であの花を探していた。それは、僕だけじゃなかった。アーサーもエルマーもスティーブンもみんな探していた。だから、僕は親友のテオにも協力してもらうことにした。必至で頼み込む僕に、おとなしくて心優しいテオは穏やかに微笑みながら「いいよ、ブレット」って言ってくれた。
 テオに協力してもらったのは、テオが優しいからだけじゃなかった。村はずれの山小屋に住むテオは木こりをしていて誰よりも山に詳しかった。マイケルは何十人も人を雇ってあの花を探しているけど、山深い場所にに咲くというあの花を探すにはテオに協力してもらうのが一番だってことを僕は知っていた。だけど、内心焦っていた。初雪が降るまでに探さないといけないのに、日に日に寒くなってきている。このままでは二、三日中には雪が降りそうだった。やっきになって花を探していたマイケルも最近では花が見つからないことに安心して、もう探すのを辞めたって噂だ。 探し始めて一週間、今日も見つからず帰り際にテオの山小屋に寄ると、ちょうどテオも山から戻ってきたところだった。テオは僕を見つけると微笑み話しかけてきた。
「やあ、ブレット。花は見つからないね」
 僕はイラっとした。テオには花が見つかろうが見つからなかろうがたいした問題ではないかもしれない。だけど、僕にとっては人生が懸かっていた。エレーヌみたいな素敵な女性と結婚出来るチャンスなんて、これを逃したら一生ないだろう。それがわかっているからこそ、こんなに真剣に探しているのに、そんな僕の気持ちに気づかず平然としているテオに腹が立った。
「テオ、もっとちゃんと探してくれよ。僕は本気なんだよ。遊びじゃないんだよ」
 テオはうつむき、何回も何回もうなづきながら「わかってる。ちゃんと探すから」って、約束してくれた。
 それから二日経ち、いよいよ夕暮れにもなると村はめっきり冷え込み、明日には雪が降るだろうと予想出来た。僕はがっくりして、疲れ果てた身体を引きずるようにして山から降りた。本当はもう少し探していたかったけど、花探しを諦められなくて山から戻って来ない人が毎回何人もでるってことを知っていたから、泣く泣く戻る決心をした。家に戻る途中、テオの山小屋に向かった。僕のわがままに付き合ってくれた親友にちゃんとお礼を伝える必要があった。山小屋に着くと、テオはまだ戻っていなかった。しばらく待ってもテオは戻らず、もうそろそろ道も暗くなりそうだったから、仕方なく帰ることにした。
 村まで戻ると、ひょっとしたら誰か花を見つけて、エレーヌにプロポーズしていないか心配でエレーヌの家の様子を窺うことにした。エレーヌの家まで来ると、大きな木に隠れて同じように様子を窺っている人影があった。近寄ると、それはテオだった。テオは僕に気づくと、びっくりして、体を飛び上がらせた。そして、体の後ろに慌ててなにかを隠した。僕はなんでこんなところにテオがいるのかもわからず、ただ、きょとんと突っ立っていた。すると、テオはぎこちなく微笑み両手を前に突き出した。その手に握られていたのはあの花だった。深いエメラルドの花が月明かりに照らされ優雅に輝いていた。
「ブレット、ちょうどよかった。見つけたよ」
 僕は驚き、喜びの余りテオを跳ね飛ばすかのような勢いで抱きしめた。テオは「そんなに抱きつかれたら、せっかくの花が折れちゃうよ」って、笑いながら僕に花を差し出してくれた。
「ブレット、こんなことしてる場合じゃないよ。早くエレーヌの元に行かないと」
 僕はテオに促されて、一目散にエレーヌの家に駆け込み、そして、プロポーズした。
 僕とエレーヌはめでたく結婚し、新たな伝説として語り継がれることとなった。だけど、ちゃんとお礼を言おうと再び山小屋に行くとテオの姿はなかった。そして、テオが村に戻ることは二度となかった。


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このストーリーに関するコメント

15/11/20 こうちゃん

つつい つつ様、拝見させていただきました。百年に一度咲く花、ショートサマーランドの神秘。求婚された女性は名誉な事であり、必ずプロポーズを受け入れなければならない。本当に好きな女性が目の前に現れたら、死ぬもの狂いで手に入れたいですね。テオのその後はどうなったのか…気になります。

15/11/20 つつい つつ

こうちゃん 様、感想ありがとうございます。
テオは自分のことが嫌になったのかもしれないですね。自分なりの幸せを見つけてくれたらいいんですけど。

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