1. トップページ
  2. じいちゃんの宝物

るうねさん

性別
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

じいちゃんの宝物

15/10/19 コンテスト(テーマ):第九十五回 時空モノガタリ文学賞 【 秘宝 】 コメント:0件 るうね 閲覧数:1098

この作品を評価する

 じいちゃんが死んだのは夏だった。
 アブラゼミの声が雨のように降りしきる中。真っ白い病院の真っ白い病室の真っ白いベッドの上で、息を引き取った。
 看取ったのは僕一人。
 当時、小学生だった僕は毎日のようにじいちゃんを見舞っていた。父と母は共働きで、病院に来ることはほとんどなかった。もともとじいちゃんと父母の折り合いは良くなかったせいもあり、じいちゃんを見舞いに来るのは、一ヵ月に一度ぐらいだった。僕自身も父母との仲はあまりよろしくなく、自然、じいちゃんのことを慕っていた。
「それは宝の地図だよ」
 死ぬ間際、じいちゃんは一枚の紙を僕に渡して、そう言った。
「じいちゃんのとっておきの宝物だ」
 それが僕が最後に聞いたじいちゃんの言葉になった。
 じいちゃんの葬式が済み、落ち着いた頃に僕はその宝を探しに出かけた。
 宝は、僕が通っていた小学校の裏山に埋めてある、と地図には書かれていた。
 正直なところ、宝自体はどうでもよかった。宝を探しに行く行為自体が、僕とじいちゃんの絆の証。そんな風に考えていたのだと思う。じいちゃんが亡くなったことで、心にぽっかりと穴が開いたような喪失感を少しでも埋めようとしていたのかもしれない。
 地図に書かれた場所にたどり着くと、僕は持って来たスコップを使って地面を掘り始めた。
 『宝』はすぐに見つかった。もとはクッキーの缶らしいアルミ製の直方体が、浅く埋められていた。
 その缶を開けると、中に一枚の紙切れが入っていた。
 地図だった。
 今度は別の場所を掘るように、という指示が書いてある。
 僕は再び山を登り始めた。
 地図の指定した場所に着くと、再び穴を掘る。また缶が埋めてあって、その中に地図が入っていた。
 それを何度か繰り返していると、すっかり日が暮れてしまった。
 いつしか、僕は山頂に来ていた。
 一番星が空にきらめいている。
 僕は地図に指定された場所を掘った。埋めてあった缶の中に、やはり一枚の紙が入っていた。また地図かと思ったが、それは短い手紙だった。
『前を見てごらん』
 指示通り、僕は前を見た。
 遠くに海が見えた。今まさに沈み切ろうとしている太陽の残照が、夕焼け色に海を染めていた。
 漁火だろうか。徐々に暗くなっていく海面に、ぽつりぽつりと白光が灯りだす。空にも星々が現れ、まるで星の光が海に映り込んでいくような幻想的な光景だった。
 これが、じいちゃんの言っていた宝だったんだ。
 僕はいつまでも、その光景を眺めていた。


 大人になって、僕はカメラマンになった。撮るのは、もっぱら風景写真である。これまで、いろいろな景色を見てきたが、あの日、じいちゃんがくれた宝物に勝る景色はまだ見つかっていない。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン

ピックアップ作品