1. トップページ
  2. 涼宮ハルヒは憂鬱なんかじゃない

海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

投稿済みの作品

1

涼宮ハルヒは憂鬱なんかじゃない

15/09/21 コンテスト(テーマ):第九十三回 時空モノガタリ文学賞【 憂鬱 】 コメント:3件 海見みみみ 閲覧数:1290

この作品を評価する

 僕は憂鬱だった。退屈な日々が続いていくこの世界。なにか事件でも起きないものか。僕はそう強く願っていた。

 高校の授業中、僕はいつも隠れて本を読んでいる。本を読んでいる時、僕は少しだけ憂鬱を忘れられた。
 今日僕が読んでいる本は『涼宮ハルヒの憂鬱』という有名なライトノベルだ。この本を読んで僕は感銘を受けた。僕と同じ悩みを共有する涼宮ハルヒという少女に恋をしたのだ。
 そして僕のクラスには涼宮ハルヒにそっくりな少女がいる。椿アカネ、彼女はその見た目や憂鬱そうな表情が涼宮ハルヒにそっくりだった。
(彼女も僕と同じ憂鬱を共有しているんだ)
 教室の離れた位置から椿さんを見る。僕は内心彼女に仲間意識を抱いていた。

 高校からの帰路。辺りは田んぼに囲まれ、人の姿も見かけない。
 憂鬱だ。そうつぶやこうとした時、一人の幼女が目に入った。何やら道に座り込み、地面に絵を描いて遊んでいる。
 その時、僕の中の何かがつぶやいた。あの幼女を田んぼに突き落としたら、ちょっとした騒ぎになるのではないだろうかと。そうしたら僕の憂鬱で退屈な気分も少しは晴れるはず。
 僕はなるべく足音を殺し幼女に近づいた。幼女がこちらに気づき、僕の事を見つめてくる。僕は幼女の背中を押すと、そのまま田んぼの中へと突き落とした。
(やった! やったぞ!)
 なんて爽快な気分だろう。急いで現場から逃げ出す。僕はこの瞬間、憂鬱さを忘れていた。

 それから僕は上機嫌で過ごしていた。自室のベッドで一人、笑いを堪えられずにいる。あの幼女の怯えた表情、実に最高だった。
 すると玄関の呼び鈴が鳴る。こんな夜遅くに誰だろう。そう思っていると母が応対に出て行ったようだ。興味本位から部屋を出て、二階の影から会話を盗み聞く。相手はどうやら警察官のようだった。
「まあ、木村さんの家のお嬢さん、亡くなられたんですか」
「田んぼに落ちて、そのまま溺死したそうです」
 母と警察官の会話を聞いて凍りつく。
(田んぼに落ちて、死んだ?)
 それはまさかあの幼女の事だろうか。そんな、あれはただのいたずらで、幼女を殺すつもりなんてなかった。それなのに、バカな。
 僕は急に怖くなり、自室のベッドの中に潜った。

 翌日の学校。僕は授業に集中できず、一人震えていた。このままでは僕は逮捕されるかもしれない。そうなったら人生おしまいだ。不安と憂鬱が加速していく。
 当初は憂鬱を晴らすためだった行為。それが僕に更なる憂鬱を与えていく。
 すると突然前の席の男が紙を渡してきた。なんだろうと思い紙を開く。それは手紙だった。差出人は、椿さん。疑問に思いながら手紙の中身を開ける。
『私はあなたの秘密を知っています』
 その一文を見た瞬間、僕の全身を冷気が駆け抜けていった。

 放課後。一人教室に残っていると、少女が中に入ってきた。椿さんだ。
「一体なんの用かい?」
 僕は平静を装って問いかけた。すると椿さんは表情を変えぬままポツリとつぶやく。
「私、見ていたの」
 その一言で理解する。やはり椿さんは僕の犯行を目撃していたのだと。
「自首して。私はただそれが言いたかっただ……」
「僕はこの退屈で憂鬱な世界から脱出したかっただけだ! 君にもわかるだろう? この僕の気持ちが!」
 そう椿さんに詰め寄る。だが次の瞬間、椿さんは僕の頬を叩いた。痛みと驚きで目を見開く。
「一緒にしないで。退屈を理由に人を殺すなんて、最低」
 その一言にカッとなり、僕は椿さんの首を締めた。手に力を込める。椿さんが鈍くうなった。
「君ならわかってくれるだろう。この世界が如何に退屈で憂鬱なものかって。君だってそれに辟易していたはずだ。椿さん、いや、ハルヒ! ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ!」
「あなたの言う、ハルヒが誰かは知らないけれど、きっとそのハルヒさんも、あなたを軽蔑、しているわ」
 その一言に怒りのタガが外れる。骨が砕ける音。僕は椿さんの首をその両手でへし折っていた。
 椿さんがその場に倒れる。また殺してしまった。それも今度は故意に。
(もう、逃げられない……)
 深い絶望。気づくと僕は三階建ての校舎から飛び降りていた。

 意識が覚醒する。目の前には真っ白な天井。僕は病院にいるようだった。
「それで息子は」
 母の声が聞こえてくる。その声は憔悴しきっていた。医師と思わしき人物が母の問いかけに答える。
「脳にダメージがあるようです。植物状態、そういった状況にあります」
 それを聞き母がわっと泣き出す。
(僕が植物状態? これだけハッキリ意識があるのに? 嘘だろう)
 しかし、何度動かそうとしても、体はぴくりとも反応しなかった。

 これから僕は今まで以上に退屈で憂鬱な世界で生かされ続けていく。そこに救いはない。僕の憂鬱は続いていく。延々と、延々と。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

15/09/21 海見みみみ

角川スニーカー文庫
谷川流著作
『涼宮ハルヒの憂鬱』
のタイトルを引用しました。

15/10/19 光石七

拝読しました。
憂鬱・退屈を晴らすためのちょっとしたいたずらのつもりだった行為が、更なる長い憂鬱を招く。
なんとも皮肉で救いのない結末ですね。
でも、自業自得だとも思います。憂鬱を晴らしたいなら、別な方法もあったはず。
実際にそういう動機で事件を起こす人もいることを思うと、やるせないです。
インパクトのあるお話でした。

15/10/21 海見みみみ

光石七さん

ご覧頂きありがとうございます。
これは間違いなく自業自得ですよね。
身勝手な男が陥る憂鬱の蟻地獄。
もっと別の方法で憂鬱を晴らしていれば、この男も涼宮ハルヒのようになれていたかもしれませんね。
感想ありがとうございました!

ログイン