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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
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私だけのアニメは ―断片的かつ微妙なmy historyっぽい話―

15/09/21 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:19件 光石七 閲覧数:1842

時空モノガタリからの選評

自らの脳内で作られるアニメ、それを文章化するという行為、それが「私」を癒していく……。とても共感できる内容でした。人は誰しもうつになったり人生に疲れたりする時があるものだと思います。ですが、そんな時にも創作することによって、一歩前へ進むことができる、そうした普遍的な内容に励まされる思いがするお話だと思います。

時空モノガタリK

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 それらのアニメにはタイトルが無かった。ストーリーも定まっておらず、途中で巻き戻って別な展開に進むこともしばしばだったし、未完のまま打ち切られるものも多かった。それらのアニメを観ていたのは私だけだった。作っていたのも私。私の思い描くキャラクターたちが、私の望むストーリーに沿って、私のイメージする絵柄で動き、私の思う声で喋る。その時その時で漫画やテレビなどの影響を受けながら、私は一人の少女を主人公にした何十パターンものアニメのフィルムを自分の脳内で回していた。

「何もしなくていいから。食べれるだけ食べて、ゆっくりして」
実家に戻ってきた私に家族は優しかった。だが、私は暗く混沌とした負の感情の渦の中に身を沈めていた。うつで休職中だと知られた恥ずかしさと申し訳なさ、結局職場に復帰できなかった悔しさや未練、人生が終わったような絶望感、死への憧憬……。実家での療養と退職は半ば強引に決められた。寮住まいのままでは心が休まらないことは明らかだったけれど、「お前は不要だ」と社会から切り捨てられたようで、そんな自分が情けなくて生きる価値など無いように思えて……。続く食欲不振で体力が落ちており、家の中の移動すらしんどい状態でもあった。味のしない食事をなんとか少量噛み砕いて嚥下し、義務的に薬を飲んで横になる。光は見えず、自分が笑う日など二度と来ない気がした。
 それでも東京の人混みやせわしさ、閉塞感から逃れたのは正解だったらしい。生まれ育った鹿児島の田舎の空気は、私の心身を少しずつ落ち着かせてくれた。食べ物の味がわかるようになり、食べる量も増えた。テレビも気楽な内容であれば視聴できるようになった。なんだか手持無沙汰で、弟妹の集めている漫画の単行本を拝借して読み始めた。本棚に眠っていた文庫本にも手を伸ばした。
 次第に私は漫画や小説の世界に没頭していった。時間を忘れて読み耽った。元々本は嫌いじゃない。読み出すと一気読みしてしまう性質で、学生時代、分厚い全三巻の長編小説を徹夜で最初から最後まで読み、そのまま朝一の講義に出たこともある。
「その漫画、こっちじゃ放送されてないけどアニメになってるよ」
妹が友人からDVDを借りてきてくれた。テレビアニメなんて十年近く観ていなかった。メインキャラクターの声が漫画を読みながら想像していたものよりかなり渋くて最初は違和感があったが、面白かった。体力が戻り出歩けるようになると、本屋に足を運ぶようになった。気に入った漫画がアニメ化されたものを観たりもした。
 ふとしたことで自分のダメさ加減に意識が向き心身が不調に陥ることも多かったけれど、フィクションの世界はそんな時の緊急避難所にもなった。気が付けば、家事を手伝ったり家族との遠出を楽しんだりできるようになっていた。そんな中、不意に“彼女”を思い出した。
(レイラ……懐かしいなあ。私、どんな話考えてたっけ……?)
幼い弟妹のために学校を辞めて働く少女の話。特殊能力で悪の組織と戦うファンタジーもの。女怪盗の話。時折ロマンスも織り交ぜて……。青臭いガキが自分の脳内で制作・上映した陳腐でまとまりの無い妄想アニメたち。だけど、それがとても楽しかった。学校からの帰り道に、あるいは勉強の合間に、あるいは布団に入ってから眠りに落ちるまでの時間に、私はレイラの様々なストーリーを妄想していた。だが、大学に進んでからだろうか、そんな妄想の時間は徐々に減っていき、いつのまにかすっかり忘れてしまっていた。
 かつての妄想の友と再会した私は、再び彼女を主人公に脳内アニメを作り始めた。過去の上映作品に手を加えたり、全く別な設定で新たなストーリーを考えたり。まだ精神的な不調の波が来ることもあったけれど、どん底まで沈み切らずに済んだのは、家族の支えと楽しいと思えることが増えたおかげだろう。
 そうしていくつか季節が過ぎた頃、私はふと思った。
(妄想を形にしたらどうだろう?)
なんだか無性にやってみたくなった。だが、某ネコ型ロボットの似顔絵すらおぼつかない私は、キャラクターたちの容姿もその世界の風景も絵で表現できない。自分の画才の無さがもどかしい。
(文章で、なら……?)
絵よりはまだ可能性がある。私は毎日パソコンに向かうようになった。Wordを立ち上げ脳内のアニメ映像を文章化しようとするが、度々描写に苦戦し行き詰まる。だが、拙いながらも自分の妄想が形状化していくのは大きな喜びだった。
(へえ、小説の投稿サイトなんてあるんだ)
ネットの世界に疎かった私は初めて知った。こういう形で残すのも悪くないかもしれない。誰からも何も反応が無くても構わない。
(半端な人間の陳腐な自己満足的妄想アニメが、稚拙な文章に変化しただけだしね)
 見知らぬ人からの好意的な感想コメントに驚いたのは、初投稿から一週間後だった。


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このストーリーに関するコメント

15/09/23 つつい つつ

何かを形にする、表現する、そして、発表する場があることは、普段の生活や日常から得られないものをもらっているなと、改めて思いました。

15/09/23 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

もともとアニメーションは架空の世界のお話で、けれどそれが人の心に訴えるものがあるのは、
人の心の中に架空の世界に同調できる場所があるからだと思います。
心とは不思議なものですね。病気になった心を救ったのもまた心であるということ、わかるような気がします。
私も創作することに力をいただいています。

15/09/24 泡沫恋歌

光石七 様、拝読しました。

創作することで心が上向きになっていくことが一番良かったですね。
これからは光石七さんの作品を読むことで、癒されて、力をもらう読者もいることでしょう。

私にとって創作は生きる喜びです。
死ぬまで・・・いや、ボケるまで頑張って続けていきたいと思っています。

15/09/25 光石七

>篠川晶さん
コメントありがとうございます。
ほぼまんま私の過去話です。
“彼女”を思い出したきっかけや妄想を形にしようと思ったきっかけを具体的に書けたらもっと話としての収まりが良かったのでしょうが、本当に“不意に”だったもので(苦笑) 漫画や小説やアニメに浸るうちに心に積まれていくものがあったからだろうと思っていますが。
自分の妄想が形になることが、そしてそれを共有してくださり反応を返してくださる方の存在が、これほど大きな喜びとなり自分の支えとなるとは。
改めて皆様に感謝したいです。

>つつい つつさん
コメントありがとうございます。
もし形にすることを思いつかなかったら、発表できる場の存在を知らないままだったなら、今の私は無かったかもしれないと思います。
確かに、創作活動は普段の生活とはまた別の異質な体験と言えるかもしれませんね。そしてそれを発表できる場があることで、さらに特別なものを私たちは得ていて……
月並みな言い方しかできませんが、やはりありがたいですね。

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
架空の世界のお話でも感動するのは、そこに描かれている人の心を感じるからかもしれませんね。心を動かすのは心、という言葉もありますし、心で心を感じるのではないでしょうか。
心身を休められる環境とか、薬の効果とか、家族の理解と支えとか、うつが快方に向かった要因は一つではありませんが、妄想癖(笑)の復活と創作活動を始めたこともプラスに働いた気がします。

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
自分だけのものだったはずの妄想アニメを文章という媒介を通じて他の方も共有してくださっている、未だに不思議な気もします。
改めて処女作(他サイトに掲載)を読み返すと本当に拙くて、映像を文章化したはずなのにキャラクターの容姿の記述がほとんど無かったり(苦笑)、ツッコミどころありまくりですが、やはり特別な思い入れがあります。この後“彼女”以外の物語も妄想するようになり、こちらの掌編サイトに出会ってまた違う書き方もするようになるわけですが、原点はここだと思っています。
自分の脳内から外に出したら、こんなにも感じる喜びが違う。気付けてよかったです。
そして読んでくださる皆様に、改めて心から感謝を。

15/09/27 滝沢朱音

主人公の「私」さんに、とてもとてもとても共感を覚えました!
私もまったく同じでした。子供のころ、頭の中でストーリーを走らせて、
つたないイラストを書きながら、セリフをぶつぶつ呟いたりしてました。
いろんなことを経験し、ずいぶんたった今になって文章で綴ってみようと思えたのは
この投稿サイトに出会えたからでした。
文章での「妄想の形状化」。ようやく、自分の唯一の道具、武器?に巡り会えた気がしています。
もしかして「私」さんもそうなのかな、なんて(*^^*)

15/09/27 冬垣ひなた

光石七さん、拝読しました。

おつらい状況を乗り越え創作をされている姿に、心打たれました。
妄想アニメ、光石さんの揺るぎなく安定した構成力の原点をみたような思いがします。
私も妄想の友がいて、今回の拙作の絵に抱かれた豆腐ちゃんはその一人です。
豆腐メンタルだからすぐ崩れるのですが、描くのが楽だからよく遊んでます。
小さな達成感って、治療の為にも非常に大切なものだと思いますが、
コメントもらえるというのは凄く嬉しいですね。
人に疲れ人に癒され。私は光石さんの作品もですが、猫ちゃんの写真にもいつも癒されております!

15/09/29 光石七

>朱音さん
コメントありがとうございます。
朱音さんも子供の頃、物語を空想しておられたのですね。
画才があれば私もとうの昔にイラスト描いたり漫画にしたりしていたと思いますが、そっちの才能は壊滅的だったため(苦笑)自分の頭の中のみに留めていました。
文章化という手段とそれを発表できる場の存在に出会えてよかったと思います。素敵な方々とのご縁も頂きましたし。
武器としてのレベル、上げていきたいですね。

>冬垣ひなたさん
コメントありがとうございます。
当時は自分の苦しさ・辛さでいっぱいいっぱいで…… 家族や周りの人は大変だったろうと思います。
冬垣さんも妄想の友をお持ちなんですね(はっきり尋ねたことは無いけれど、皆さん、います(orいました)よね……?)。豆腐ちゃん、かわいいし遊びやすそう。
コメントは本当にありがたいですね。一番の励みになります。
プロフィールの愛猫の写真がお役に立っているようで、うれしいです。撮る人間が下手ですが(苦笑)、投稿と同時に新たな写真に差し替えています。

15/10/07 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。

アニメを創作に変えての想い良かったですね。誰かに読んで貰うことは私も凄く励みになります。光石さんはこの時空でも、時間が許す限りたくさんの作品を読んでおられて素晴らしいと思います。

創作によって病気が癒されては私にもわかります。私もできればボケテ書けなくなるまで書いていたいと願っています。最近はうまく書けなくなってきて悩みはつきませんが、死ぬまでに少しでも何か残せればと頑張ろうと思っています。

15/10/07 光石七

>草藍さん
コメントありがとうございます。
「テーマに合っていないのではないか?」「こんな個人的な暗い微妙な過去話で読まれる方に不快感を与えないだろうか?」という懸念もありましたが、実際に私の妄想(笑)はアニメ映像で流れることが多いし、だんだんテーマから無理矢理話をひねり出すことが増えてきていたので、原点に戻る意味も兼ねて書いてみました。
話としての構成も具体性もあったものではありませんが、「そこらへんはサブタイトルに書いたから良しとしよう」と開き直っております(苦笑)
まさか自分の妄想を誰かが共有してくださる日が来るとは、高校生の頃は想像もしていませんでした。インターネットの普及のおかげで素敵な書き手さんたちとも知り合え交流でき、ありがたいです。
書くことは時に苦しいけれど、楽しさと喜びがありますよね。

15/10/16 光石七

>清水孝敏さん
コメントありがとうございます。
ほぼまんま、です。主観のみで断片的・部分的に書いてますし、記憶違いもあるかもしれませんが。
私自身が原点に戻る意味合いも兼ねて書かせていただきました。

15/10/16 光石七

すみません、↑のコメント、お名前を誤って打っていました。
志水孝敏さん、ですね。
本当に失礼しました。申し訳ありません。

15/10/20 泉 鳴巳

拝読致しました。
今でこそちいさな歯車となってせこせこ動いている私も、心身を病んで望んで就いたはずの職を退職した経験があるので「社会から切り捨てられたよう」という部分には大変共感を覚えてしまいました。
淡々と綴られているようで、文章に込められた“熱”がひしひしと感じられ、思わず身震いしてしまうような作品でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。

15/10/20 光石七

>泉 鳴巳さん
コメントありがとうございます。
冷静に考えれば他にも仕事はあるし、それで人生終わりというわけでもないはずなのですが、当時はそう思えなくて。悲観の沼にどっぷり浸かっていたのだと思います。
今回“物語”を仕上げるという意識はあまり無かったのですが、書き手である皆さんだから、創作を通じて得る、何らかの共通するものを感じてくださるのかもしれませんね。
こちらこそ、過分なお褒めの言葉、恐縮です。

15/10/24 鮎風 遊

確かに、
私たちは自分の妄想を文章で映像化してるのかも知れませんね。
納得です。

15/10/24 光石七

>鮎風 遊さん
コメントありがとうございます。
小説は文字・文章だけれど、読むことで視覚的・聴覚的(時には嗅覚や味覚、触覚まで)イメージも湧きますし、それは作者がその場面を思い描きながら書いたからだと思います。
個人的な暗い過去を含んだ話になってしまいましたが、元々は実際に絵があって動くわけでも声がするわけでもないけれど妄想も一つのアニメと言えなくもないなと、案の一つに入れたのがきっかけでした。
皆さん書き手でいらっしゃるので、創作活動における共通したものを感じ取ってくださったようで、ありがたいです。

16/05/07 犬飼根古太

光石七さま、拝読しました。

タイトルを拝見した印象と違って、暗い出だしに驚きましたが、優しい雰囲気の感じられる作風で素敵でした。

特に「フィクションの世界はそんな時の緊急避難所にもなった」という言葉は、凄く共感できました。
また、「妄想アニメたち」の話もリアリティがあって、私自身は経験がなくとも、どこか懐かしいと感じました。

主人公が一歩前へ進めたラストと相俟って、読後感も良かったです。

16/05/09 光石七

>犬飼根古太さん
コメントありがとうございます。
掌編の場合は本文を書き上げてからタイトルを付けることが多いのですが、今作は読み返してみて思ったことをそのままサブタイトルに入れてしまいました(苦笑) 確かに前半暗くて重いので、ギャップがあったかもしれません。
過分なお褒めの言葉、恐縮です。
自分の心の栞として……というには雑な書き方でしたが(苦笑)、皆様に共感していただけたり、深く感じ取っていただけたり、ありがたいです。

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