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リアルコバさん

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フレ〜フレ〜

12/08/05 コンテスト(テーマ):第十一回 時空モノガタリ文学賞【 高校野球 】 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:1885

時空モノガタリからの選評

最終選考

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「県立東山代高等学校〜校歌〜斉唱〜」
一回の表我が校の攻撃が始まった。吹奏楽部のの有志が鳴り物を鳴らす。

「それ〜ぇ」
スタンドは学生より父兄OBの数方が多い位だ。今時母校愛などないのだろう。
「それ〜ぇ」
我が東山代高校が(バンカラの東山)と呼ばれたのも今は昔。
「フレ〜〜フレ〜〜 トウヤマッ フレッフレットウヤマフレッフレットウヤマソリャ〜〜〜ぁ」
そんな校風は薄れ我等応援団も、俺を含め3年が4人2年が1人廃部の危機である。
「其では城南学院の健闘を祈り〜エールを贈る〜」
それは時代というものか。
「フレッフレッ城南〜」
既に一回の表の攻撃は終っていた。

今日の試合は準決勝戦。我が校18年ぶりの快挙だ。相手は部員75名の県下有数の甲子園常連校だ。
『ウワァー』
歓声と共にブルーのユニホームが二人、ホームを駆け抜けた。
紅白のポンポンが揺れる三塁側スタンドはお祭り騒ぎだ。
「江口水っ」
「押忍」
バケツから柄杓で掬った水を口に含む。
「水沢ファイト〜行きます」
水沢信二はエースで4番。俺の幼馴染みである。
「ファイトォ〜」《ドン》「ミ・ズ・サ・ワ」「ファイトォ〜」《ドン》「ミ・ズ・サ・ワ」
短い檄を飛ばし振り向くとマウンドで汗を拭う奴と眼があった。
俺は胸を大きく張り、白手袋の手を青空に伸ばしてから素早く後に組んだ。
真っ青な空には白銀の太陽がグラウンドを容赦なく照りつける。
汗は滝のように流れスタンドが陽炎で歪む 。


2点で凌いだ我が校のユニホームが全力で一塁側ベンチへ走る。
「大団旗掲ぇ〜」
団旗持ちは田辺淳夫、根っからのバンカラ応援団である。巨体と体力を買われ1年の時から団旗を任された逸材だ。
「押〜忍」
重さ38キロの伝統の大団旗がスタンド後列に揚がる。
「応援歌一番〜」
《ドン》
大太鼓は大畑勇。吹奏楽部の彼を無理矢理応援団に入れたのは俺だ。
「三三七拍子〜」
《ドンドンドン ドンドンドン》
淡白な攻撃は直ぐに終りまた城南の長い攻撃が繰り返された。


「おっ0−2、粘ってるじゃないか」
徐々にスタンドに学生が増えてきた。今日から始まった夏期講習の午前ガイダンスを受けてきた連中だろう。
副長の剣崎圭介が座席を指定し少しでも応援の声が纏まるように配置する。
剣崎は怪我で野球を諦めた者だ。


5回が終り3対0だ。
「江口水掛けろ」
「押忍」
バケツの水を学ランの上から浴びる。
「こっちも頼む」
団旗と一体化した田辺の静かな太い声にバケツの水がキラキラ光ながら舞った。
《ドン》
「応援歌第三〜力の限り〜」
《ドン》
「全員ご起立願います」
伝統のラッキーセブン応援だが《力の限り》を歌える学生はもう少ない。
歌詞カードを剣崎が配る。
トランペットの音を背に左手をグランドに伸ばし右手の拳で突きを繰り返す。
(頼む打ってくれ)
過去2年 この力の限りを歌い終わる前に攻撃が終っている。
《キーン》
快音は歓声に掻き消されたが、白球はセンター前に転がった。
「それ〜っ」
一瞬コンバットマーチに変更しようかと思ったが応援歌を続行した。
《コツ》
山田のバントは絶妙だった。 一塁クロスプレー、土煙が舞い審判の手が広がる。
純白のユニホームに染みた土の勲章を拳で叩く。
「我々は〜力の限り〜この戦いに〜勝利する事を〜・・・」
ムッとする熱気のなかに俺の声はこだまして、 一塁側スタンドが今確実にひとつになった。


9回表、逆転劇を演出してくれるほど勝利の女神は甘くはない。


団旗が下段にされて田辺の膝がガクガクと震える。
俺たち応援団員は後ろ手に組み低頭の姿勢で相手の校歌を聞いていた。
江口がしゃくりあげている。
俺の足下にも汗か涙かわからない水溜まりができる。
三塁側が歓喜の歓声に包まれる。
俺はゆっくり振り返り最後の声を張上げた。
「城南学院の勝利を称え〜決勝戦での〜健闘を〜祈願し〜エールを贈る〜」
《ドン》
「全員起立っ」
剣崎の声が裏返る。
《ドン》
大畑の顔もくしゃくしゃだ
《ドン》
田辺が歯を食い縛り暑さと疲労に顔が歪ませながら、団旗を再び上段に掲げる。
「江口お前が切れ」
「押忍」
伝統の型《勝者へ送る》だ。
「フレ〜」
力強く白手袋が灼熱の中に舞う。
(良い型だ)
俺は肩幅に開いたままの足で回れ右してグランドを向いた。
グランドに整列した水口が泪を拭いて笑う。
よくぞやった。強豪相手に5失点完投そして九回表のツーランホーマーは最高だった。
『フレッフレッ城南フレッフレッ城南』
三塁側から拍手が湧き起こる。

かんかん照りの太陽が照りつけるコンクリートのスタンドで、俺達の夏は終った。


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