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つつい つつさん

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リセット

15/09/12 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:4件 つつい つつ 閲覧数:1113

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 教室に入ると有希乃が真っ青な顔で私のほうへ駆け寄ってきた。
「美沙、今月でスタレボ終わるんだって!」
「嘘でしょっ……そんな」
 スタレボは男性アイドルがデビューしてトップに登りつめる様子を描いたアニメで、もう三年以上放映が続いていて、私は小学生の頃からスタレボにハマり、この前も劇場版アニメの第三弾を有希乃と観に行ったばかりだった。
「美沙、私、秋人君にもう会えないなんて耐えられない」
「私も、翔太命だったのに。スタレボが終わったら、生きていけないよ」
 その日、私は有希乃の家にお泊まりして、朝までスタレボについて語りあった。あの場面が忘れられない。秋人君のあのシーンが好き。翔太のあの歌が一番心に響く。どんだけ言い尽くしても、次から次からスタレボの思い出が溢れてきた。明け方、私達は泣きすぎて目が真っ赤になり、まぶたは腫れていた。
 確かに、メンバーはもうトップアイドルになってはいたけど、だからといって終わるなんて思ってもみなかった。これからもずっと続いて、そして、ずっと応援するもんだって決めつけていた。ネットの掲示板を見ると、他のファンもみんな、終わるのが信じられずにいた。スタレボが終わったら何を楽しみに生きていけばいいんだって悲しんでいた。私もそうだ。翔太は私の初恋の人だ。本気で好きだった。CDだってDVDだって全部持ってるし、誕生日には番組宛にちゃんとプレゼントだって送ってたし、これからも翔太とずっと歩んでいくんだって思っていた。
 スタレボの最終話の放映がされる前日、有希乃からラインがきた。
「私、秋人君がいない世界に生きていたくない。死ぬ」  
 確かに、ファンサイトではそういったコメントがたくさんあった。この作品が終わるなら死にますって、直接放送局に手紙やメールを送りつけるファンもたくさんいた。でも、その気持ちは痛い程わかった。
「私も同じ気持ちだよ」
「じゃあ、美沙も死のうよ。このサイトに苦しまない首の吊り方がのってるよ」
 私はサイトでその方法を確認した。
「わかった」
 私はそう返事して、ベッドに入りふとんの中で泣いた。
 次の日、朝起きても気分は憂鬱だった。今日の放映を見ようかどうか迷っていた。本当に終わってしまうのを受け入れるのが怖かった。有希乃に相談しようと思ったけど、有希乃は学校に来ていなかった。
 昼頃、担任の高田先生が悲痛な表情で入ってきた。
「今日、山田有希乃さんが亡くなりました。詳しいことはまた話しますが、まずはみんなでご冥福をお祈りしましょう」
 私はその場で泣き崩れた。先生もクラスのみんなも有希乃と一番仲の良かった私が泣くのを同情して心配してくれた。しばらくしても泣きやめない私を心配した先生はママを呼んでくれて、その日はママと一緒に学校を早退した。 
 それから、家に帰ると、私は有希乃ちゃんの家に呼ばれた。警察も来ていて、昨夜のラインについて聞かれた。私は正直に掲示板でもそういった話が盛り上がっていたし、それくらいの気持ちは持っていたけど、まさか本当に死ぬなんて思っていなかったって話した。
 結局、全国で私と同じ年頃の中学生の女の子が有希乃を含め五人本当に自殺した。世間では大問題になっていた。私は、有希乃とラインしていたことがばれて、同情されたり中傷されたりした。三日くらいは学校も大慌てで通学路にはTVのリポーターなんかも来ていて、絶対にインタビューを受けないことって注意された。特に私は要注意人物として、親に送り迎えしてもらうことになった。そして少し騒ぎが落ち着いた頃、有希乃の葬儀があった。私達のクラスは全員で参列した。葬儀の間、私は有希乃ちゃんのママの顔をまともに見れず、ずっとうつむいていた。でも、有希乃ちゃんの棺桶を乗せた車が出発すると、私は涙が止まらなくなった。そんな私の傍にクラスの女子五、六人集まってきて、みんなで泣きじゃくった。夕方のニュースを見ると、その様子がTVに映し出されていた。でも、顔にはモザイクがかかっていて、ちょっとだけ残念だった。
 春になって、中学三年生になり、新しいクラスに替わった。あの出来事以来、あまり私に近寄ってくる人はいなかった。この一年間どうやって過ごしていったらいいのかわからなかった。
 最初の昼休み、顔を上げるのが怖くて、顔を伏せたままお弁当箱を開けた。誰か一緒に食べてくれる人を捜すのに周りを見渡すことさえ出来なかった。
「一緒に食べよっか?」
 今まで話したこともない有村さんが私の隣に座った。。
「うん、うん。食べよ、食べよ」
 私は嬉しくて、何度もうなずいた。
「美沙ちゃんて、アニメとか好きなんだよね? 私も好きなんだ。でも、話合う人いなくて」
「うん、好きだよ。そうえいば昨日始まったあれ、見た?」
「見た、見た、見た。すごく、かっこいいよね」


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このストーリーに関するコメント

15/09/13 クナリ

読み終えてから、改めてタイトルの表す意味にはっとしました。
面白かったです。

15/09/22 つつい つつ

クナリ 様、感想ありがとうございます。
世の中、はやりすたりとか、移り変わりが速いなと思って、書いてみました。

15/09/23 そらの珊瑚

つつい つつさん、拝読しました。

身近な人の事件が起きても時間がたてば風化して、だから人は生きていけるのかもしれませんね。
どんなにのめり込んだアニメでも最終回が来て、また新しいものが始まりますし。


15/09/25 つつい つつ

そらの珊瑚 様、感想ありがとうございます。
風化したり忘れるのは悪いことだと感じる時期もありましたが、最近ではそれもまた、いいことなんじゃないかとも思ったりします。

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