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上村夏樹さん

はじめまして、上村と申します。 公募に挑戦するワナビです。突発的にショートショートを書きたくなる面倒くさい生き物。 最近、初めて買って読んだ詩集で泣きそうになるという、やはり面倒くさい生き物。 物書き、そして読者のみなさん、よろしくお願いします!

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アニヲタ観察日記

15/09/10 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:6件 上村夏樹 閲覧数:1655

時空モノガタリからの選評

日記の発表という形式が、分かりやすい構成につながっていますね。「アニヲタ」を冷静に観察、発表するという、言ってみればバカバカしい行為と、前園君のツッコミが、よくできた漫才のようで、理屈抜きでおかしかったです。「ツンデレ」な終わりかたも、結局は仲のいい二人なのだろうと思わせてくれる、後味のいい終わり方でした。

時空モノガタリK

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 私の名前は新田美月。中学三年生の女の子だ。

「今日は夏休みの自由研究を発表してもらいます。発表したい人は挙手してください」

 理科の先生が尋ねるけど、教室内は静まり返っている。無理もない。一番手というのは、得てして緊張するもの。みんながやりたがらない気持ちはわかる。
 ここは学級委員の私の出番だ。私がトップバッターとなり、みんなの緊張を和らげよう。私は黙って手を挙げた。

「では新田さん。お願いします」

 指名されたので、席を立って教壇に移動した。教室内を見渡し、口を開く。

「私の自由研究は、アニヲタの生態についてです」

 みんなの視線が一斉に私の体を貫いた気がする。でも無視して続けた。

「この夏、私はアニヲタの観察日記をつけました。観察対象は前園君です」
「俺!? 毎日俺の家に遊びに来るなコイツって思ってたけど、そういうことだったの!?」

 前園君は立ち上がり、泣きそうな顔で叫んだ。彼は私の幼なじみで、重度のアニヲタである。

「では、観察日記を読み上げます」
「俺のプライベートを公開するだけだよね? 最悪だ……」

 前園君は死んだ魚の目をしていた。でも続ける。

「八月〇日。前園君は録画していたアニメを観ながら、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、何か言っている。その言語は理解不能だった。もしかしたら、アニヲタだけが用いる言語かもしれない。私はこの言語を前園語と命名する」
「何この日記。俺に対する悪意しか感じないんだけど」

「一つだけわかった前園語がある。前園語では、アニメに登場する少女の名前の後ろに『たん』をつける。これは日本語の『〇〇ちゃん』に相当すると推測される」
「真面目に観察されているせいで、余計に恥ずかしい……」

「前園君は『みぃたんは俺の嫁』と、結構な頻度でつぶやいていた。この世に存在しないアニメのキャラが嫁とはどういう意味だろう。この言葉の真意については、終ぞわからなかった」
「もう殺せよぉー! 早くもメンタル崩壊したよぉー!」

「八月×日。今日も前園語が炸裂した。『萌え』という言葉だ。使うタイミングは、普段はツンツンしているキャラが『か、勘違いしないでよね! あんたのためにやったんじゃないんだからっ!』などと、急にデレたときに用いる。思うに、彼女は情緒不安定すぎやしないだろうか? まだ若いのに更年期かもしれない」
「勘違いしているのはお前だ」

「八月◇日。今日は前園君と一緒にギャグアニメを観た。鑑賞後、前園君は『××テラワロスww』と、不気味な笑みを浮かべていた」
「さっきからなんなの? 事あるごとに、俺は不気味な笑みを浮かべてるの?」

「テラワロス……テラとは寺のことだろうか? おそらく住職の息子に対する悪口の隠語だろう」
「ここにきて考察が適当になってる……」

「八月□日。今日も前園君はアニメを観ている。一緒に遊ぶ友達はいないのだろうか。テラワロスww」
「テラワロス使いこなしてるじゃねぇか! つーかいるわ友達!」

「今日も前園語は絶好調。今日は『神回』という言葉が飛びだした。アニメを観た限り、神など登場しなかったのだが……真のアニヲタだけが見える霊的な何かか?」
「なんかもうツッコミ疲れたよ……」

「八月◆日。前園君が『あーマジ可愛い後輩に「先輩のこと、ずっと好きでした」って言われてぇわ』と妄想を押しつけられた。テラキモスwww」
「それみんなの前で言っちゃう? もう社会的に死んだわ俺……つーかお前、完全に前園語使いこなしてるよね? アニメ用語に限らず、ネットスラングもカバーできてるよね?」

「いや拙者、ヲタクではござらんのでwww」
「それぇ! それもう完璧なヤツだから!」

「いや失敬ww 拙者、アニヲタを始めとするヲタクを研究している変わり者でしてwww 故に拙者、ヲタクではござらんのでwww コポォww」
「ヲタクの完全究極体だろそれ!」

「――以上が、私の研究成果です」

 観察日記を読み終えた私は、終始怒っていた前園君を見た。

「私の自由研究は前園君の協力なしでは完成しませんでした。私がアポなしで訪問したときも、彼は笑顔で私を家に招き入れてくれました。そんな彼に感謝の言葉を捧げます。私に優しくしてくれてありがとう、前園君」

 気持ちを伝えると、前園君は頬を真っ赤に染めた。

「か、勘違いすんじゃねぇし! 幼なじみのよしみで仲良くしてやっただけだ! べつにお前のことなんてなんとも思ってねぇから!」

 そう言い残し、前園君は教室を出ていった。
 このシチュエーション……あれだ。前園君が『萌え』と言ったあの場面とそっくりだ。
 自然と頬が緩むのを感じる。

「男のツンデレ……テラキモスww」

 うん。やはりアニヲタという人種は理解できない。


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このストーリーに関するコメント

15/09/13 クナリ

テンポよく進む前園君の公開処刑が、なんとも面白かったです(悪いなァ…)。

15/09/13 上村夏樹

>クナリさん

お読みいただき、ありがとうございます。

そう言っていただけて、ほっとしました。前園君も顔を赤くして「う、嬉しくねぇから!」と喜んでいると思います。

15/09/22 光石七

拝読しました。
一見真面目な観察日記と前園君のツッコミに笑わせていただきました。
捨て台詞を残して教室を出ていく前園君と頬が緩む主人公に萌えました。
面白かったです。

15/09/23 上村夏樹

>光石七さん

お読みいただき、ありがとうございます。

掛け合いが見どころ……いえ、むしろ掛け合いを取ったら何も残らない話ですので、そこを評価していただけて救われました。ありがとうございます。
なお、二人が交際を始めるのは、まだ先の話です……(続かない)

15/10/07 草愛やし美

上村なつきさん、初めまして拝読しました。

アニヲタ用語、凄く勉強なりました。ワロスにテラに(6 ̄  ̄)ポリポリえ〜〜と、キモス 
前園君良い奴ですね、掛け合いが面白くて笑いながら読み、何だかほっとして読み終えました、若い方の作品、知らないこと多くて目からうろこです、凄く面白かったです。

15/10/07 上村夏樹

>草藍やし美さん

お読みいただき、ありがとうございます。

あまりアニメやネットスラングをご存知でない方でも楽しめたようで嬉しいです。クセがあるネタでしょうから、読者様の「笑えたの」一言で、自分の笑いの感性を信じることができ、救われる思いです。ありがとうございます。

なお、新田さんが大学で「オタサーの姫」と呼ばれるのは、そう遠くない未来の話(続かない)

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