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アシタバさん

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幸せのアニメをもとめて

15/09/08 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:0件 アシタバ 閲覧数:1139

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 昨日。30歳手前のひきこもりの姉が言っていた。
 この世には見たものを幸せにできるという『幸せのアニメ』があると。
 僕は思う。姉よ。
 都市伝説を語っている暇があったら、そのジャージを脱ぎ捨てて、さっさと職か結婚相手を探した方がよいのではないか?


 一日の大半はアニメを見ることに費やしている姉に頼まれて、大学生の貴重な休日に僕は近所の古本屋にやって来た。
 ここは本や漫画以外にもDVDや音楽CDなんかも取り扱っている。ただ、チェーン展開などしていない、ひなびた小さな店だった。
 手動の扉を開けると「いらっしゃいませ」と声が飛んできた。見ると若い男がひとりレジに立っていた。店内は本やDVDなどがぎっしり詰まった大きな棚がはばをきかせて通路がほとんどない。
 しかし、今日はこの雑然とした空間に用はないのだ。あらかじめ目的の品物を電話で確認し予約していたので、店員から受け取るだけの楽なお使いだった。
「電話予約していた者です」
「はい。えーと、こちらになりますね」
 店員が会計をしながら話しかけてくる。
「これまた随分とマニアックな一品をご存知ですね」
「姉がアニメを好きでして」
 それを聞いた店員がうれしそうに笑う。
「そうなんですか。僕もアニメ好きなんですよ」
 ふと、昨日姉が言っていたことを思い出したので聞いてみた。
「見た人が幸せになるアニメって知っています?」
「ああ、そんな都市伝説ありますね。夢があっていいと思いますよ」
「どんなアニメなんですか?」
「詳しくは知らないけど、パッケージは目が痛くなるほどの金色で、宝船に乗った七福神が出てくるギャグアニメらしいですよ」
「へえ、そんなものが現実にあったらいいですよね」
「まったくですね」
 2人で笑いあっているともう一人客が入ってきた。いかにも金持ちといった風貌で場違いな印象極まりない。すると。
「買取りで」
 袋から取り出されたそれはまばゆいほどの金色で神々しささえ感じられた。おもわず見とれてしまう。
「あ、ふ、古DVD買取りで300円になります」
 我にかえった店員から、金を受け取ると男は
「世話になったな。今度はどこかの誰かを幸せにしてやってくれ」
 そう呟いて手動のドアを開けて去って行った。
 店に静寂が訪れる。
 店員がおもむろにレジのドロアーを開き、自らの財布を取り出して金を入れる。
 そして、DVDをエプロンのポケットにしまおうとした。
「ちょっと待った!」
「え、なんでしょうか?」
「それ買います」
「ダメです」
「だって、あなた信じてなかったでしょう」
「あなたこそ」
「今の人見たら考えが変わりました」
「奇遇ですね。私もそうです」
 両手をあわせて店員に言う。
「頼みます。どうしようもない僕の姉に、それを見せて引きこもりから脱出させたい」
 店員は大きく首を振った。
「わたしだって、生まれてこの方彼女が出来たことがない。これで人生初めての彼女をゲットするんだ」
「それをよこせ!」
「やるものか!」
 狭い店内に2人の男の殺気が満ち溢れる。
 すると、また客がやって来た。
 黒いスーツとサングラスの三人組でこれまた異様な雰囲気を出している。そのうちの一人が携帯電話を取りだして話しだす。
「発見した対象は、本日、例のブツを古本屋に売り渡しました。ただちに回収します」
「何だ! あんたたちは!」
「悪いがそれを渡してもらおうか」
 スーツの男が威圧的に言う。だが、負けるわけにはいかない。
「何言ってやがるんだ! 帰りやがれ!」
「そうだ! そうだ!」
 店員と2人で喚き散らすが、黒服の男は動じずに懐から何か黒く光るものを取り出す。それをこちらに向けた。それは映画でしか見たことのない恐ろしい『アレ』であった。
「早く渡せ」
 静かになった店員はあっさりとDVDを手渡した。
「任務完了」そして、男達は帰り際に一言。
「あまり落ち込むな。そのうちいいことがある。楽しみにしておけ」
 店は再び静かになった。2人で目をあわせて溜息をつく。
 あれは一体何だったのだろう。あの男達は一体。最後の言葉の意味は? あのアニメは本物だったのか? 考えても無駄だった。もう確かめる術はないのだ。
 しかし、あきらめようとしていたころにそれは起こった。


 その日、テレビの全てのチャンネルはジャックされてあるアニメが流れた。恐らく日本の国民のほとんどがそれを見ただろう。そう、あの七福神を。そして、間もなく日本はバブル期に逆戻りしたのだ。
 浮かれる世の中で、姉は見事に社会復帰し、そして、例の古本屋の店員とひょんなことから出会い交際がスタートしたのだった。


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