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火星人と生徒会長

15/09/07 コンテスト(テーマ):第九十回 時空モノガタリ文学賞【 祭り 】 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:900

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「佐々木君、何番?」
「えっ?」
 びっくりした。とてもとてもびっくりした。僕はその時西暦5078年の宇宙にいたのだが、大気圏だとか着陸だとか難しい手続きを経ることなく、一気に地球に戻ってきた。僕が座っていた中庭の一角に戻ってきた。そして、よくわからないヒップホップミュージックが強烈な勢いで僕の耳に入り込んできた。
 優勝争いに毎年入る実力を持つ女性が、毎年最下位争いをしている僕に笑顔で話しかけてきた。これはどういうことなのか。お気に入りのイルカのしおりをはさむことも忘れて僕は読みかけのSF小説をブレザーの内ポケットに慌ててしまい込んだ。かなり動揺していた。
 何番・・・、あぁ、そうだ!男子には水色の紙、女子にはピンク色の紙、それぞれ番号が書いてあり、それを今朝配られたっけな。
「エヘン、これは『ラブゲッチュー』というゲームです。全校生徒に今この紙が配られています。そう、1年生から3年生まで。で、これを文化祭の間ずーと首からぶら下げておいてください。そして、あなたと同じ番号の異性を発見したら、その人と一緒に運営本部まで来てください。景品がもらえます。」
 文化祭実行員の杉山君が、恥ずかしそうにみんなの前で原稿を読んでいたな。僕はその紙をすぐに鞄にしまったことを思い出した。
「ねぇ、何番?」
 少し近くないか。彼女は体操服の短パンに、クラスオリジナルの紺色のTシャツ、という姿だった。僕は目を合わせないように努力した。下を向いていたが、白い太ももが生々しく僕の視界内でウロチョロする。
 僕は基本宇宙に属する人間であり、一日の大半は宇宙にいる。体質的な理由で地球にあまりいることができないので、僕の部屋の本棚には常時ストックがある。SF小説のストックだ。なければ不安になる。地球の人間、しかも花道を歩き続けている人間、今度生徒会長に立候補する人間が、なぜ宇宙人に話しかけてくるのか?歌謡曲風に言うと、地球の男に飽きたということなのか。
 顔が熱くなってきた。彼女は太陽なのか。僕は下を向いていたが、僕の顔が赤くなっていることはばれているに違いない。イニシアチブは完全に取られた。もうどうすることもできない。
「ねぇ、なんで制服着てるの?」
 文化祭中制服着用禁止、ということなのか。それにしても更に近くなっていないか。どういうことなのか。もしや!いやっ、それはないそれはない。安心しろ、それはないから。
 わかった!選挙活動の一環だ!そういうことだったのか。政策で勝負するのではなく、太ももで勝負しようということなのか。なるほど。だが、この仮説もあまりしっくりこない。バスケ部の山崎君のところに行くのであればわかる。彼に推されれば、最低でも50票くらい獲得したことになるから。僕がいくら頑張って推したとしても、一票は一票。宇宙に友達はたくさんいるが、彼らに投票権はない。
 ということは・・・、いや、やめよう、そういう考え方は。偏りすぎている。
「ねぇ、さっきまで何読んでたの?」
「あっ、これはね、火星に住んでいる宇宙人が地球を攻めるというストーリーでね。何がすごいって、博士が光より速く飛ぶ戦闘機を作ったんだよ。モチロン宇宙でも飛べるんだ。まだ試作の段階なのだけどね。この戦闘機にはすんごいレーザービームが搭載されていて、そうだな、月くらいの距離から北海道丸ごと無くすくらい、簡単にできてしま、、、」
 うわぁ!やってしまった。僕は我に返った。またやってしまった。
 彼女は立ち去った。ちょっと気になったので彼女の後姿を横目で覗いてみた。そしたら、女子4人と合流しこちらを指さしてキャッキャッと騒いでいた。なるほど。なるほど。罰ゲームか。なるほど。だから地球が嫌いなんだ。
 僕は再び宇宙へと旅立った。火星人が地球を攻めようとしているところだった。ガンバレ!!僕の清き一票は火星人に投じられたのである。


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