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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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『眼球を譲りたい男の巻』眼球紳士・短篇集05

15/09/01 コンテスト(テーマ):第六十三回 【 自由投稿スペース 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:1200

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 これは様々な眼球の眼球による眼球のための物語(フィクション)である。



 僕の名前は眼球紳士。名前の通り、世界一の眼球コレクターだ。僕の屋敷には大量の眼球が、特別に調合された薬剤に浸かり、保管されている。
 なぜ眼球を集めているのかって? そんなの決まっているじゃないか。眼球が美しいから。ただそれだけだ。
 今回はそんな僕の眼球コレクションの中から一つ、とっておきの物を紹介しよう。ほら、この眼球を口に頬張って舐めてごらん。すると記憶が浮かんでくるはずだ。さて、今回はどんな記憶が浮かんでくるかな?



 私はある大富豪の執事をしている黒崎と申します。今日、私は主人の命令にしたがい、とある屋敷へと向かいました。
 森の奥底にある不気味な屋敷。そこにその人物はいると言うのです。
 車で屋敷の前まで来ると、私は玄関のベルを鳴らしました。すると扉の向こうから声が聞こえてきます。
「どちら様でございましょうか」
「私、四ツ橋工業社長の執事をしている黒崎と申します。こちらに眼球紳士なる方がいらっしゃると聞き訪ねて参りました」
「眼球紳士は当屋敷の主人ですが、一体どのような用が?」
「眼球を譲りたい。それも特別な。そうお伝えください」
「……少々お待ちください」
 それから数分。玄関が開き、中から一人の青年が出てきました。シルクハットに黒いジャケットをまとい、右目は前髪によって隠れています。しかし左目は凛としており美しい芸術品のようでした。
「あなたが眼球紳士様ですか」
「その通り。でも様はいらないよ。今回は興味深い話を持ってきてくれたようだね」
「はい。早速で悪いのですが、私の主人がいる屋敷までご同行願えますか?」
「構わないよ。さあ、すぐに行こう」
 眼球紳士は疑う様子も見せず、私の乗ってきた車に乗り込みました。私の事を信頼しているのか。それとも自分の腕に相当の自信があるのか。
 私は車を走らせ、主人の暮らす邸宅へと向かいました。

 目的地に到着し、私は眼球紳士を主人のいる部屋へと案内しました。
 主人、四ツ橋誠一郎はその年令に相応しい白髪と強面な顔つきが印象的な男です。若者であれば思わず話をするのに躊躇をするような相手。それが私の主人です。
 しかし眼球紳士は臆する事なく主人に話しかけました。
「やあ。はじめまして。僕は眼球紳士。眼球を譲りたいというのは君かな?」
「私は四ツ橋誠一郎、君の問いかけに答えるならイエスだ」
「自分の眼球を譲りたいなんて変わった話もあるものだね。詳しく聞かせてくれるかな?」
 主人が話をする前に、紅茶の入ったティーカップを二人にお配りします。すると二人は紅茶を口にしながら話し始めました。
「私は一代でこの四ツ橋工業を大企業へと発展させた。それは部下達の努力もあるが、それ以上にある物が関係している」
「君の眼球だね」
「わかるかね」
「今回はそのために呼ばれたからね」
 眼球紳士がおどけた様子を見せた後、紅茶を口にします。その光景はまるで友人とくつろいで話をしているかのようでした。
「私の目は未来を視る事ができたのだ。未来のわずか一瞬を切り取った断片の映像だけだが。しかしそれでも未来を視る事が出来るのは大きかった。その能力を使い会社を発展させてきたのだ」
「ちょっと待って欲しい。視ることが『できた』という事は、今は視る事ができないのかい?」
「無理だ。私の目は酷使し過ぎたのか、能力が暴走するようになってしまったのだ」
「暴走?」
 そう眼球紳士が尋ねたのと、主人が目を押さえ絶叫をあげたのは同時でした。
「ぐあああああ!」
「どうした?」
 眼球紳士の問いかけに対し、主人は絶叫をあげる事しかできません。私は慌てて鎮痛剤を取り出し、主人に注射しました。すると数分間を置いて主人が正気を取り戻します。
「……これは見苦しい所をお見せした。私の目は時々こうやって痛みをもってうずくのだよ。まるで過去にこの目を使ってしてきた悪事を責めるかのように」
 そう語る主人の目は血走っています。その姿は先程までとはまた違う意味で恐怖心を与えるものでした。
「なるほど、能力の使い過ぎで力が暴走すると」
「因果応報というわけだ」
 主人が落ち着いた事を改めて確認し、私は主人を寝室へと案内しました。
 それから私はいよいよ眼球紳士と二人になり話を始めます。主人の眼球を売るという商談を。

「つまり、この眼球を取ってしまえば四ツ橋誠一郎の発作はなくなると」
「我々はそう考えています」
 私の言葉に対し、眼球紳士は考えこむような姿を見せました。
「過去にしてきた悪行を責めるように、目がうずき出す。そう主人は言っています」
「四ツ橋誠一郎は過去に何か悪事を働いたのかい?」
「……小さな町工場をここまでの大企業に発展させたのです。それまでの間にさまざまな事があってもおかしくないでしょう」
「なるほど、そういう理屈ね。でも僕が視るに、四ツ橋誠一郎は善人だよ。間違いなくね」
「それは一体どういう意味で?」
「今回僕が持ってきた瞳、審美眼は見たものの本質を見抜く力を持っている。だからひと目見てわかるんだよね。四ツ橋誠一郎の紅茶にだけ毒が入っている事も」
 眼球紳士は自らの前髪をかき上げると、その右目を露出しました。左右で色の違う瞳。眼球紳士の言う審美眼はギョロリと動くと私の顔を見つめました。
「この審美眼で視ると、よくわかるんだよ。君のような極悪人が」
「何の話でしょうか?」
 私の背中に冷たい汗が流れて行きます。
「君は四ツ橋誠一郎の眼球を僕に売りつけ、多額の金を懐に入れる予定だった。さっきの発作は君が定期的に四ツ橋誠一郎に毒を盛っているから起こるものだ。眼球が暴走しているなんて事実はない」
 いよいよ私は冷静ではいられなくなってきました。ここまで計画がバレているのなら仕方ありません。眼球紳士、彼を殺すのみです。
 私は懐から拳銃を取り出しました。護身用のものですが、至近距離で撃てば殺傷能力は十分あります。
「あなたに問います。ここまで真実を知った上で、主人の眼球を買い取るつもりはありませんか?」
「愚問。それよりも僕はもっと面白い眼球をもらっていくよ」
 私が拳銃を発砲したのと同時に眼球紳士は跳躍しました。そのまま銃弾を避けると、私の顔を掴み、銀色のメガネのような物を鞄から取り出します。それを私の顔に無理やり装着しました。
「君のような腐った悪人の眼球が欲しかったところなんだ。それでは」
 私の眼球がえぐり出されていく感覚。それに私は叫び声をあげます。
「やめろ、やめろお!」

「いただきます」

 そこで私の視界は暗転しました。



 いかがだったかな? これがこの眼球に秘められた記憶だ。
 こう言った腐った悪人の眼球も、なかなかの珍味で味わい深い。ちなみにこの執事はその後警察に連行され、四ツ橋誠一郎は病院で適切な治療を受けたそうだ。
 いつか彼、四ツ橋誠一郎の眼球も譲ってもらいたいものだな。そんな事を考える。
「紅茶を淹れました。どうぞ」
 すると執事のアルフレッドが紅茶を僕に差し出した。
「……まさか毒が入っているなんて事はないよね?」
「何をバカな事を言っているんですか」
 アルフレッドが呆れたようにそう口にする。どうやらうちの執事は信用しても大丈夫なようだ。


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このストーリーに関するコメント

15/09/04 海見みみみ

志水孝敏さま

ご覧いただきありがとうございます。
こういったダークな雰囲気の作品を書いた事はあまりないので、とても良い勉強になっています。
キーワードの『眼球』が重要な要素ですよね。
こういったグロテスクな題材でもそれを受け入れてもらえると嬉しいです。
それでは感想ありがとうございました!

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