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リードマンさん

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送り火

15/08/25 コンテスト(テーマ):第六十一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 リードマン 閲覧数:1044

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この眼球には火葬が焼き付いている。

あの日からオレは、うかつに目を開けられない人間になっちまった。村中に散らばった皆の亡骸を弔った夜。闇の中、送り火をじっと見つめていたオレは、その炎が消えてくれない事に気付いたんだ。瞳に焼き付いた炎はオレの意思とは無関係に重なった対象を数瞬で焼き尽くす。危険な力だ。そうして、オレは生きていく為に、殺人鬼になるしかなかったんだ。

生まれつき気配を読む能力に長けていたオレは、目を閉じたままでも生活するのに不自由する事は無かったけれど、いつも目を瞑っている人間を雇ってくれる職場は中々無かった訳で、最初の犯行は金目当てだった。

山を降りてからというものロクなものを口にしていなかったオレは何処かの路地裏でとうとう倒れ込んでしまった。意識が朦朧としていたオレに活を入れてくれたのは、その街の不良達だった。連中は、家出中の少女を強引に暗がりに連れ込み、よろしくやろうとしてようなのだが、一足先に倒れこんでいるオレを見て邪魔に思ったのだろう。いい蹴りを入れてくれた。餓死寸前とはいえ連中を始末して金をせしめる事は犯罪だと解っていたし、決して善人では無かったが、当時はまだ悪人でも無かったオレが凶行に及んだのは、彼女が理由だった。

「助けて下さい」

目を閉じている間、オレには周囲の状況が灰色の世界になって視えている。モノクロの中、後に演技だったと判明するのだが、泣きじゃくる彼女は、息を飲むほどの美少女だった。だからこう告げた。

「助けてもいいが、今度はオレに襲われるだけだぞ、アンタの容姿は美し過ぎる」

急に泣き止んだ彼女は、何故か笑って

「アンタっていつもそうね」

気心の知れた夫に対してするように、呆れたように呟いたのだ。完全に風景と化していた不良達は、オレ達のやり取りを数瞬茫然と見守った後で、襲いかかってきた。オレは、ゆっくりと目を開けた。そして、紅蓮の炎が男達を包み込み、瞬く間に焼き尽くした。そこで気付いた、あ、金まで燃えたな、と。

「オレは、腹が空いている」
「そう? ならまずは食事にしましょうか」

そんな始まりだった。深夜のファミレス、他に客は無く、二人きりだ。なんでも彼女はオレを探していたらしい。金髪碧眼の美少女なんて見覚えさえ無かったのだが、向こうは一方的にオレの事を覚えているとか。正確に言うならば、オレの前世をだが。

「アンタのとんでも話を黙って聞いているのは、オレ自身がとんでもないのと、アンタのキレイさがこれまたとびっきりにとんでもないからなんだぜ?」
「ありがと、それから、アタシの事はリリスって呼んでね。アタシはアンタをアダムって呼ぶから」

なんでも、オレと彼女はとても仲の良い夫婦だったが、オレは色々あって人格に難があり、彼女が目を離した隙に悪酔いして自殺してしまったらしい。しかも、オレが自殺したのは初めてではないそうだ。その度、彼女がこうして迎えに来ているとか。ハッキリ言おう、ごめんなさいと。

「何度生まれ変わっても情緒不安定になりやすい?」
「そう。アタシといる時はマトモなんだけどね」
「それで、これからどうする?」
「お仕事よ、お仕事。世の中に蔓延る悪を事前に裁く処刑人になって貰うわ。今日のアレが初仕事ね」

彼女達、本の旅人は、それぞれの世界の中で、様々なロールをこなして生活しているのだそうだ。今回は

「処刑人か、うん、でもそれ、もちろん非合法なんだろう?」
「一応合法なんだけど、捕まったら見放されるかもね」
「・・・オレはリリスといられるならそれでいいよ」
「当然、アタシもよ」

まずは、オレの故郷の山村を全滅させてくれた連中への復讐戦となるらしい。リリスがサポート全般。オレが実行。幸いオレの能力はまさしく処刑人向きだろう。だがオレには一つ、忘れてはならない事があった。夫婦だと言うのなら遠慮もいらない。

「ところで、お前を襲ってもいいっていう話は有効か?」
「・・・確約した覚えはないけれど、こちらとしても話が早くて助かるわ。ホテルへ行きましょう、そこでじっくりと、ね」
「うんうん。いいね、凄くいい」
「言っておくけれどアタシ、溜まってるからね」

そんな素敵なやり取りがあって初めての夜は更けていった。また、二人旅が始まる。


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