1. トップページ
  2. 『眼球博士登場の巻』眼球紳士・短篇集04

海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

『眼球博士登場の巻』眼球紳士・短篇集04

15/08/25 コンテスト(テーマ):第六十二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1159

この作品を評価する

 これは様々な眼球の眼球による眼球のための物語(フィクション)である。



 僕の名前は眼球紳士。名前の通り、世界一の眼球コレクターだ。僕の屋敷には大量の眼球が、特別に調合された薬剤に浸かり、保管されている。
 なぜ眼球を集めているのかって? そんなの決まっているじゃないか。眼球が美しいから。ただそれだけだ。
 今回はそんな僕の眼球コレクションの中から一つ、とっておきの物を紹介しよう。ほら、この眼球を口に頬張って舐めてごらん。すると記憶が浮かんでくるはずだ。さて、今回はどんな記憶が浮かんでくるかな?



 私には昔から物を鑑定する能力があった。この目で見るとその物の本質が見えるのだ。私はこれを審美眼と名付け、自らの職業に活かしていた。

「開闢! どれでも鑑定屋! 本日もスタートです」
 司会のお笑い芸人が声を張り上げる。テレビ番組の仕事が今日も始まった。
『開闢! どれでも鑑定屋』は依頼者が持ってきたお宝を鑑定するという内容の番組だ。私はその中で鑑定士として毎週お宝を見ては、審美眼の能力で本物かニセモノかを判別してきた。
 さて、今日はどんな品物が出てくるか。ゆっくり拝見させてもらおう。
「続いての依頼者はこちらです!」
 そう言って出てきたのは、いかにも貧乏そうな中年の男だった。男の手には古臭いツボが握られている。
(あれが依頼の品か)
 私は早速審美眼の力を使い、男の持ってきたツボを鑑定した。
(こ、これは!)
 そしてその価値に驚かされる。男の持ってきたツボ。それは国宝レベルの品物で、値段をつけるのであれば一億円はするであろう物だった。
「それでは鑑定のお時間です!」
 司会者がそう告げ、鑑定の時間が始まった。どうする。一億円のお宝が目の前にあるのだ。これはなんとしても手に入れたい。
 その時、悪魔のささやきが私の脳内に響く。
(そうだ、その手があった)
 私はその悪魔のささやきに躊躇せず乗った。
「早速鑑定価格を見てみましょう!」
 司会者の声と共に価格が表示されていく。一、十、百、千。千円。鑑定価格は千円と表示されていた。
「これは出来の悪いニセモノですね。お土産物屋で買えるレベルの品です」
 私は堂々とウソをついた。当然落ち込む依頼人。そこで収録は終了となった。

「ちょっとすみません」
 番組の収録を終えてから、私はすぐ先ほどの依頼者の元へ向かった。
「どうも、先生。鑑定ありがとうございました」
 何も知らずに男が頭を下げる。どうやら男は先程の鑑定結果を信じきっているらしい。
「実は先ほど収録では厳しく言ってしまいましたが、個人的にそのツボが気に入りましてね。一万円で譲っていただけないでしょうか?」
 すると依頼者の男は目を丸くした。
「千円のツボなのにいいのですか?」
「はい。先程は収録で酷い事を言ってしまいましたから、そのお詫びも兼ねてです」
 すると男は喜んでツボを売ってくれた。一万円で、一億円はするだろう国宝級のお宝を。

 その晩、私は上機嫌でタクシーに乗っていた。胸にはあの国宝級のツボが箱に梱包され抱かれている。一億円のお宝を手に入れたのだ。これで浮かれない方がおかしいという話だ。
「先生、なにやら上機嫌ですね」
「ちょっと色々ありましてね。ちょっとした幸運が」
 運転手の言葉にも上機嫌で答える。
 本当になんという幸運だろう。これで自分自身の運を全て使い果たしてしまったのではないかとすら思える。私は鼻歌混じりで、早く家に着かないものかとそわそわしていた。
 そんなタクシーに、突然女が一人ぶつかってくる。
 強い衝撃。私は慌てて腕の中のツボを抱きかかえた。
 一体何が起きたのか。目の前を見るとカラスのようなゴシックドレス姿をした女性が血まみれで倒れていた。事故だ。
(なんて不運な)
 自分の乗っているタクシーが事故を起こすなんてなんという不幸だろう。さすがに一億円のツボを手に入れた幸運の反動があったようだ。
 運転手が慌てて車を降り、女性に向かって駆け出す。運転手は女性に声をかけた。すると立ち上がる女性。
 同時に運転手がその場に倒れた。
「えっ?」
 立ち上がったゴシックドレスの女性は、その右手に注射器を持っていた。額から流れる血を女性が自らの舌で舐め取る。女性の目は左右で色が変わっていた。オッドアイだ。普段着に着るとはとても思えないゴシックドレスが不気味さに拍車をかける。その光景は異様過ぎて、私は腰を抜かしていた。
 女性がこちらまで歩いてきて、ドアを開ける。
「ようやく会えた。私、眼球博士。あなたのお宝をもらいに来たの」
 ゴシックドレスの女性、自称眼球博士はそう口にして怪しく笑ってみせた。
 お宝とは、まさかこの一億円のツボの事だろうか。だとしたらとんでもない。
「こ、このツボは渡さないぞ! 去れ! 去れ!」
 必死に眼球博士から逃げようとする。すると眼球博士は不思議そうな表情を浮かべた。
「ツボ? そんな物には興味無いけど。私が欲しいのはあなたの」
 そのまま眼球博士が私に近づいてきた。血の匂いが鼻につき、恐怖心を煽る。
「その、眼球」
 眼球博士が私の目玉を舐める。
(私の眼球が欲しい? 一体なんの事だ)
 そこまで考えてふと気づく。私の眼球には審美眼の能力がある。この眼球博士と名乗る女は、私の審美眼を奪いに来たのだ。
「冗談じゃない!」
 私は慌てて反対側のドアから逃げ出した。そのまま一気に走り出す。なんとかこのまま逃げきれるか。これ以上、不運さえ起こらなければ。
 そんな時に限って、私は目の前を歩いてきた青年とぶつかってしまった。尻もちをつき、すかさすツボを確認する。ツボは腕の中、包みを開けて見ると、幸い割れていなかった。
「随分と高価そうなツボだね」
 ぶつかってきた青年がのんきにそう口にする。私はそれを無視して再び走りだそうとした。
「でも君の瞳の方が、もっと高価そうだ」
 青年が私の肩を掴む。その時になって私はようやく青年の姿をハッキリとみた。シルクハットをかぶり、黒いコートを身にまとっている。左目は凛と美しく輝き、右目は長い前髪によって隠れていた。
「僕は眼球紳士、君の瞳を奪いにきた」
(博士の次は眼球紳士か!)
 私はわけがわからなくなっていた。一体目の前で何が起きているのか。さっぱり理解できない。
「あら紳士、あなたも来たの」
 すると追いかけてきた眼球博士が、眼球紳士に声をかけた。
「なんだ、博士か。悪いが彼の眼球は僕のものだよ、オカマちゃん」
「オカマじゃなくて性別がないだけよ。彼の眼球は私のものよ、お坊ちゃん」
 紳士と博士、二人が睨み合う。
(あれ、これって逃げるチャンスなのでは)
 二人が言い争っている今が逃げるチャンスだ。なんという幸運。私は静かに逃げ出そうとした。
「でもわざわざ争う必要はないのか」
「そうね。眼球は二人で分け合えるもの」
 突如紳士と博士の二人がこちらを向く。
「目玉は二個ある」
「一人一個で文句ないわね」
 眼球紳士は鞄から銀色のメガネのような物を取り出すと、私の顔に取り出した。
「や、やめて」
 私の審美眼が眼球紳士と博士の二人を鑑定した。『狂人』その鑑定結果に震え上がる。
「それじゃあ」
「「いただきます」」
「あああああー!」
 私は叫び声をあげた。



 いかがだったかな? これがこの眼球に秘められた記憶だ。
「良いツボですね。どこでもらってきたんですか」
 すると通りがかった執事アルフレッドがそんな事を言い出した。実はあの時どさくさに紛れてツボももらってきてしまったのだ。
「『開闢! どれでも鑑定屋』で千円の値がついたツボだよ」
 僕はあえて意地悪するようにそう口にした。するとアルフレッドがほほ笑みを浮かべる。
「たとえ他人が千円と評価しても、私にとっては良いツボですよ」
 なるほど、それは確かに言うとおりだ。審美眼、別に必要なかったかな。そう考えながら僕は審美眼をコロコロと舐めた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン