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アニメの世界に入ったところで、主人公にはなれないのよ?

15/08/24 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:2件 るうね 閲覧数:1170

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「あー、アニメの世界に行きて―」
「なに馬鹿なこと言ってるのよ」
 独り言のつもりだったぼやきを、隣を歩いてきた幼なじみが聞きとがめたようだ。
「んだよ、美佳」
「アニメの世界に入りたいって、卓郎、それ本気?」
「悪いかよ」
「アニメの世界に入って、どうしようってのよ」
「そりゃもちろん、可愛い女の子たちとキャッキャウフフするに決まってんだろ」
 俺がそう言うと、美佳はまなじりを吊り上げた。
「ふーん、要するにモテたいわけね、卓郎は」
「その通り!」
 我ながらいい笑顔で親指を突き出す。
「なら、いいものがあるわよ」
 そう言って、美佳は鞄から何か取り出した。
 ……眼鏡?
「なんだよ、それ」
「うちのお父さんが作った、アニメの世界に入れる特殊な道具よ」
「なに、そんな夢のようなアイテムが!?」
「試しに使ってみてくれ、って言われてたんだけど、わたし、アニメには興味ないし」
「分かった、俺が使う! いや、使わしてくれ!」


 というわけで、俺はいまからアニメの世界に旅立つところだ。
 あでゅー、同好の士たち。私、いまから夢の世界へ旅立ちます。
 というわけで、いま一番ホットなアニメ、『学園ラブコメを観ている者は友達が少ない』の世界へ。ラノベ原作の学園ラブコメものだ。
 えーと、眼鏡についているコードをテレビに繋いで、アニメを流せばいいのか。簡単簡単。
 みゅよよよん。
 妙な効果音とともに、俺はアニメの世界へやって来た。
 おお、たしかにこの町並みは見覚えがある。主人公とヒロインたちが暮らす町だ。たしかT県のS市がモデルなんだよな、これ。
 おおっと、あそこに見えるは、メインヒロインのお菊ちゃんじゃないか! メインヒロインにも関わらず幽霊という設定で、物議を醸しているキャラだ。さっそく声をかけねば。
「お菊ちゃーん!」
 俺は叫びつつ、お菊ちゃんに駆け寄る。
 お菊ちゃんは、きょとんとした顔で、
「? どなたですかぁ?」
「俺、いや私は真野卓郎といいます。いやぁ、会えて光栄だなぁ」
 と、いきなりお菊ちゃんの態度が豹変した。
 ちっ、と舌打ちをし、
「なんだ、ただのモブかよ」
「お、お菊ちゃん?」
「モブに用はねー、すっこんでな」
「い、いやあの」
「あ、秀介さーん」
 再び、態度を豹変させるお菊ちゃん。見ると、主人公がこちらに歩いてくる。主人公はまとわりつくお菊ちゃんを鬱陶しそうに払いのけていた。
 くそう、あんな男のどこがいいんだ。
 むぅ、やはりいきなりメインヒロインは荷が重すぎたか。仕方ない、ここはサブヒロインで幼なじみのゆららちゃんに狙いを変えよう。
 お、ちょうどゆららちゃんがこちらに歩いてくる。
「ゆららちゃーん」
 俺はそう言ってゆららちゃんに駆け寄るが、ゆららちゃんは見向きもせず、主人公に向かって猪突猛進。
「秀介ーっ! あんたまたお菊ちゃんといちゃいちゃしてーっ!」
「ぶげらっ!」
 ちょうど進路上にいた俺は、ゆららちゃんに跳ね飛ばされてしまう。
 く、くぅ、負けるもんか! 次のターゲットは……。


 で、結局は、全てのヒロインに名前すら覚えてもらえなかった。


「ぐすん」
「ま、案の定よね」
 翌日、俺の話を聞いた美佳は小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「だって、だってよう、主人公がずるいんだ。あいつ、補正がかかってるんだもん」
「当ったり前でしょー。そんなこと、この機械を試す前に気づきなさいよね。アニメの世界に入ったところで、主人公にはなれないのよ?」
 勝ち誇ったように言う美佳。うう、腹が立つ。
「だから、さ」
 不意に、美佳の声音が変わった。
 長い付き合いだ、それぐらいのことは分かる。
 俺が顔を上げると、美佳は顔を真っ赤にして、
「現実で……わたしで妥協しておきなさいよ」
 ?
「どういう意味?」
「ええと、だからその」
「お前、顔赤いぞ。ちょっと異常なくらい。熱でもあるんじゃないのか」
 そう言うと、美佳はますます顔を赤くして、
「知らない! 鈍感!」
 と、鞄で俺の頭をひっぱたいて、速足で学校の方へ歩き出した。
「なに怒ってんだよ!」
「うるさい、馬鹿! 死ね!」
 死ねとまで言われた。
 なんたる理不尽。
 わけが分からないまま、俺は美佳の後を追いかけるのだった。


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このストーリーに関するコメント

15/08/24 戸松有葉

>『学園ラブコメを観ている者は友達が少ない』
なんて正しいタイトルのラノベだ! はまちとはがないはこのタイトルに至るために生まれてきたと言っても過言です。

ラブコメ展開については異性幼馴染がいる段階で予想できましたが、主人公がハーレムラノベ主人公スキル「鈍感」を保持しているとまでは思いませんでした。この後どうなるのでしょう。

15/08/24 るうね

るうねです。
コメント、ありがとうございます。

うん、過言ですね。
これで「難聴」まで備えていれば、完璧です。
劇中劇で主人公にはなれなくとも、劇中では主人公だ、という。
今回の投稿作、『アニメだらけの世界で』の構成をマイルドにした感じですかね。
お読みいただき、ありがとうございました。

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