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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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こちら国分寺アニメーション!

15/08/24 コンテスト(テーマ):第九十一回 時空モノガタリ文学賞 【 アニメ 】 コメント:4件 海見みみみ 閲覧数:1540

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 誰しもなりたい職業という物がある。私がなりたかった職業、それはアニメ制作に関わる仕事だった。

「平本、原画残りいくつ!」
「私の分は高田さんの原画を回収すれば完了です!」
「それなら早く回収行ってこい!」
「はい!」
 威勢のよい声に追いやられ、私は走りだした。
 ここは国分寺アニメーション。その名の通りアニメを作る会社だ。ここで私、平本ナミは制作進行という、担当するアニメの話数の責任者に当たる仕事をしている。今もデスクの林さんに急かされ、アニメの原画を回収しに行くところだ。
 ちなみに現在我が社が担当しているアニメは『たいむ・すとりっぱー!』と言う、タイムスリップする度に女の子の服が破けるという萌え系アニメだ。露骨なお色気アニメではあるものの、私はこのアニメの設定が好きで、仕事に関しても楽しみながら行っていた。
 昔から関わりたいと思っていたアニメ制作の仕事。その夢が叶って私は幸せだった。

 高田さんから原画を受け取り、会社へと帰社する。するとデスクの林さんが、私の同期である同じ制作進行の小倉さんを怒鳴りつけていた。林さんの顔は真っ赤。小倉さんの顔は真っ青だ。
「どうしたんですか?」
 私は仲裁すべく二人の間に割って入った。するとデスクの林さんは顔をどす黒くしながら声をあげる。
「小倉が担当していた原画マンが夜逃げしたんだよ!」
「えっ、でも小倉さんの回の締め切りって」
「明日までだよ! あの野郎、原画ごと消えやがったから、仕上がっている原画はゼロ枚。この穴を埋める事なんてほぼ不可能だ! ……終わった」
 そのまま林さんが頭を抱えてその場に座り込む。小倉さんも必死に何度も頭を下げていた。
 これは緊急事態だ。このままでは原画が仕上がらず、アニメ作りがストップしてしまう。そうなれば待っているのは、低クオリティの作品を発表するか、総集編を挟んでお茶を濁すか。そのどちらかだ。
(そんなの絶対嫌だ!)
 気がつくと、私は走りだしていた。この緊急事態をなんとかするのも制作進行の役目。ならば手段も選べない。私は車に乗り込むと自宅へと向かって行った。

「ただいま戻りました!」
 それから一時間後、会社に戻ると中はお通夜ムードだった。皆この局面をなんとかしようとしているのだが、うまく行っていない様子だ。
「平本、お前どこに行っていた!」
 デスクの林さんが真っ黒を通り越して暗黒色の顔で私に詰め寄る。私は林さんに一つの袋を渡した。
「なんとか全部原画を回収して来ました!」
「お前、何を言って……」
 袋の中身を見て、林さんの顔色が変わる。袋の中には小倉さんが回収できなかった原画が全て入っていた。
「お前、一体どんな魔法を使って?」
「そんな事はどうでも言いですから、早く作監チェックに回してください!」
「あ、ああ!」
 そのまま原画が作画監督の元に送られる。結果、問題なし。こうして私達はこの緊急事態を無事乗り切ったのであった。

 その晩、私は家に帰るとまず大きく深呼吸した。
(なんとか問題を解決できた。でも)
 目の前にある『それ』を見つめる。球体型の機械。正真正銘のタイムマシンだ。
 実は私、平本ナミは未来からやってきたタイム・トリッパーだ。
 未来の世界ではアニメーション制作の文化が消滅してしまっており、私は今回その文化を取り戻すべく、未来からこの時代に飛んできたのだった。
 先ほど持ってきた原画は、数週間後の未来から持ってきたものだ。『一体最初にその原画を描いたのは誰なのか』というタイムパラドックスが起きてしまったが、まあこの程度なら許されるだろう。
 冷蔵庫からビールを取り出し、一気に飲み込む。私は最高の気分だった。



 翌日。
「平本! 平本はいないのか!」
「先程電話がありました。なんでも『タイムパトロールに追いかけられているから、今日は出社できない』そうです」
「なんだ、あいつも追い詰められ過ぎて、アニメと現実の区別がつかなくなっちゃったか」

「わっはっは」


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このストーリーに関するコメント

15/08/24 戸松有葉

面白かったです。綺麗にまとまった小気味いい流れとオチの言葉でした。

15/08/24 海見みみみ

戸松有葉さま

ご覧いただきありがとうございます!
面白かったと仰っていただけて大変嬉しいです。
コンパクトにオチをつける話は難しいので、時空モノガタリ様は本当に勉強になります。
それでは感想ありがとうございました!

15/08/24 泡沫恋歌

海見みみみ 様、拝読しました。

アニメ制作会社の内情に詳しいのかしらと思える作品ですね。

アニメーターってすごい薄給で、ハードな仕事をこなしてる気の毒な人たちですが、
彼らの頑張りのお陰で日本のアニメは世界中で評価されています。

テンポが良くて、楽しいお話でした。

15/08/24 海見みみみ

泡沫恋歌さま

ご覧いただきありがとうございます!
アニメ業界の内情は「SHIROBAKO」や「アニメーション制作進行くろみちゃん」を参考しています。
アニメ業界の人々には、面白い作品を作ってくれてありがとうと心から感謝したいですね。
それでは感想ありがとうございました!

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