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海見みみみさん

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『眼球オークションの巻』眼球紳士・短篇集03

15/08/22 コンテスト(テーマ):第六十二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:1536

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 これは様々な眼球の眼球による眼球のための物語(フィクション)である。



 僕の名前は眼球紳士。名前の通り、世界一の眼球コレクターだ。僕の屋敷には大量の眼球が、特別に調合された薬剤に浸かり、保管されている。
 なぜ眼球を集めているのかって? そんなの決まっているじゃないか。眼球が美しいから。ただそれだけだ。
 今回はそんな僕の眼球コレクションの中から一つ、とっておきの物を紹介しよう。ほら、この眼球を口に頬張って舐めてごらん。すると記憶が浮かんでくるはずだ。さて、今回はどんな記憶が浮かんでくるかな?



 私には夫にも隠している趣味がある。それは眼球集めだ。死んだ人間の眼球をコレクションする。それが私の趣味だ。
 当然私の趣味を「悪趣味」だとか「気持ち悪い」と言う声もあるだろう。でもこればかりは一度ハマってみなければ魅力がわからない。眼球集めは実に私を興奮させてくれる。
 一つ疑問が浮かぶ人もいるだろう。果たしてどこで眼球を手に入れているのか。実はインターネットのサイトに『眼球オークション』なるものがあるのだ。ここは眼球のみを扱ったオークションサイトで、私は今までさまざまな眼球を落札してきた。
 中でも自慢できるのは名女優と呼ばれたマリアンヌの眼球だろう。数多くいる眼球コレクターにウソの情報を流し、出し抜いて手に入れた逸品だ。その透き通ったブルーの瞳は実に美しく、私を満足させてくれる。
 こうして私は日々オークションで落札しては、眼球を秘密のコレクションルームに収蔵しているのだった。

「よし、落札完了!」
 私は勢い良くエンターキーを押し、眼球の落札を確認した。今日は前から欲しかった双子の眼球セットを手に入れる事ができた。大収穫と言えるだろう。
 我が家は広大な一軒家だが、そろそろコレクションを置くには手狭になってきた。家のローンはまだ残っているが、他にコレクションルームを借りてもいいかも。そんな事を考えながら私は眼球オークションの出品者とやりとりをしていた。

「……ただいま」
 それから一時間もしないで、突然夫が帰宅した。時間はまだ午後の三時。帰宅するには早過ぎる。私は眼球オークションのサイトを閉じて夫の元へ向かった。
「おかえりなさい。今日は随分早かったのね」
「ああ」
 そう短く夫が答える。その目には生気がなく、何かあったということが一目でわかる。
「どうかしたの?」
 あくまでも優しい口調でそう尋ねる。すると夫はポツリとこうつぶやいた。
「……リストラされた」
 その言葉の意味を私はよく理解できなかった。
(夫が、リストラ?)
 そんなバカな。夫は仕事もできて、会社内でも高く評価されていたはず。それがリストラなんて。
「俺の所属していた部署が廃止される事になったんだ。それで同じ部署にいた奴らも全員含めて、一斉にリストラに」
「そんな!」
 それじゃあ、この家はどうなる。夫が会社をリストラされた今、ローンを払う当てなんて無い。
「それじゃあこの家は」
「売却して、引っ越しをする事になる」
 そんなの冗談じゃない。私の眼球コレクションはどうなる。既に一室を占拠しているというのに、今より小さな家に引っ越す事になったら、私のコレクションは置き場がなくなってしまうではないか。
 いや、そもそも夫に私の趣味がバレる事自体がマズイ。なんとかしなくてはいけない。少なくとも、当面暮らしていけるお金さえあれば。
 その時、私の中であるアイデアが思いついた。そうだ、その手があった。
「とりあえず、当面百万円あればこの家は売らなくて済む?」
「それだけあればなんとかなるけれど、そんな貯金なんてあったのか?」
 貯金なんてものはない。だが代わりに私には大切なコレクションがあった。

 夜。私は夫にゆっくり休んでいるよう伝えると、コレクションルームへと向かった。そこで眼球コレクションの写真を撮影する。
 あとはパソコンで眼球オークションのサイトを利用するだけだ。
『眼球コレクション百点(写真)』そうタイトルをつけ眼球オークションに出品する。即決価格は百万円。さあ、どうなる。
 すると少しずつ入札が増えていった。最初は一万円だったのが、すぐ十万、二十万と増えていく。そして三時間もしないで即決価格の百万円に到達し、無事に落札された。
 これで目標の百万円は手に入った。さて、それでは私はコレクションを売りに出すのか。
(まさか!)
 そんな事はありえない。私の出品したタイトルをもう一度確認して欲しい。そう『写真』私は写真を出品したのだ。それをバカな落札者が勝手に眼球のコレクションだと勘違いして落札したというわけだ。
 これじゃ詐欺じゃないかって。こんな違法すれすれのサイトで誰も訴えてくる人間なんているわけがない。警察にも被害届を出せず、泣き寝入りというわけだ。
 これで私達は家を売ることなく、コレクションも維持する事ができる。なんて私は賢いのだろう。私は思わず高笑いをした。
「なにがそんなに笑えるのか、僕には理解できないね」
 すると突然、青年と思わしき人物の声が辺りに響いた。一体どこから聞こえてきたのか。ふとパソコンの画面に目をやる。すると画面に人間の目が映し出された。左右で違う色をした瞳。それがパソコンの画面に映ったかと思うと、中から腕が突然飛び出した。
「ひい!」
 思わず叫び声をあげる。
 すると画面から腕の次は頭が出てきて、最後には人一人が姿を現す。その青年はシルクハットをかぶり、黒いコートをまとっていた。左目は凛として美しく、右目は髪の毛によって隠されている。
 一目見て不気味さを感じさせる、そんな人物だった。
「僕は眼球紳士。君が出品した眼球を受け取りにきた」
 その一言にハッと我に返る。先ほど百万円で即決落札した人物。それがまさに眼球紳士と名乗る男だった。
「でも、一体どうやってここに?」
 当然の疑問を口にする。すると眼球紳士は自らの髪の毛をかき上げ、その右目をこちらに見せてきた。黄色の蛍光色をした瞳。それは明らかに通常の人間の物とは違っていた。
「僕は右目を失くしていてね。他人の眼球を右目にハメると、その力が使えるようになるんだ。この右目は電子眼、電子の海に潜る事ができるようになる眼球さ」
 一体この男が何を言っているのか。さっぱり意味がわからない。ただこの男が常軌を逸した何かである事は間違いなかった。
「それで、君の眼球コレクションを受け取りたいのだけれど」
 男、眼球紳士が私に詰め寄ってくる。私は額に汗を浮かばせながらそれに答えた。
「私が出品したのはコレクションの写真よ。コレクション自体を売るなんて一言も言ってないわ!」
 すると突如、眼球紳士が声をあげて笑い始めた。それから鞄を出し、中から銀色のメガネのような物を取り出す。
「君が言っているのは屁理屈だよ。僕達の世界では通用しないクソのような理屈。そんな理屈で僕ら眼球コレクターを君は侮辱したんだ。君は罰を受けなくてはいけない」
 眼球紳士が私に無理やり銀色のメガネを装着させる。私は恐怖心から動く事ができなかった。
「君のコレクション百点、それに罰として君自身の眼球をもらい受けるよ」
 眼球紳士はそう口にすると、銀色のメガネを操作した。すると私の瞳から眼球が恐ろしいくらいするりと抜け落ちていく。気づくと私は両目を失っていた。
「返して、私の両目を返して!」
「それは聞けないお願いだ。せいぜい自分の浅はかさを悔いる事だね」
 そのまま眼球紳士の気配が消えていく。
「返して、返してー!」
 私は何も見えなくなった両目で、叫び声をあげ続けた。



 いかがだったかな? これがこの眼球に秘められた記憶だ。
「随分と後味が悪い話でしたね」
 アルフレッド、君はそう思うかい。それじゃあもっと後味の悪い話をしようか。
「大体察しておりますよ。この女性の夫が勤めていた会社、そこを買収して部署を潰したのはご主人、あなたでしょう?」
 そこまでバレていたか。やはり君は優秀だ、アルフレッド。
「しかしなぜそこまでしたのか、それがよくわかりませんね」
 なに、理由は単純。あの女が僕ら眼球コレクターを騙して手に入れた『名女優マリアンヌの瞳』それを奪還するためさ。
「その口ぶりですと、あの女性は眼球コレクターでは無いようですが」
 ああ、あんなのは眼球コレクターにふさわしくない。真の眼球コレクターはただ眼球を鑑賞するだけでなく、味わうものだからね。今も僕の口いっぱいに広がっているよ。彼女の恨みと憎しみに満ちた眼球の味が。


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