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W・アーム・スープレックスさん

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祭り爆弾

15/08/17 コンテスト(テーマ):第九十回 時空モノガタリ文学賞【 祭り 】 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1197

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敵は、てごわかった。
この数日、惑星上において熾烈な戦いが繰りひろげられた。
我々地球軍が、白鳥座のはずれにある宇宙空間に地球型惑星を発見したのとほとんど同時に、敵方もその惑星をみつけた。両者は惑星に着陸するなり、戦いの火ぶたを切った。
双方の武力はほぼ拮抗していた。こちらの攻撃に対して相手は、たちどころにそれを跳ね返すシードをはりめぐらした。こちらもまた相手の攻撃に対抗するためのシードをはった。
「膠着状態とはこのことだ」
ノモ隊長は苛立ちを隠せなかった。
こちらも必死なら、相手も必死だった。めったにあるものじゃない地球型惑星が目の前にぶらさがっているのだ。敵もおそらく、この星を移住先にと企んでいるにちがいない。どこの惑星においてもいまや飽和状態にたっしている人口問題は深刻な問題だ。
「それにしても隊長、このまま戦いが続けば、お互いパワーを使い果たして、共倒れということになりかねません、問題は、相手とこちらの戦力がほぼ均等だというところにあると思います」
副官のカダの発言に、ノモは、
「それを破る、なにかいい方法はないか」
「こういうときのために、とっておきの秘密兵器があります」
「秘密兵器」
「ご存じのはずですよ」
ノモもじつは、カダが秘密兵器といった時点に、記憶の片隅に疼くものを感じていた。
「そういえば………」
宇宙船が搭載している武器の数は多い。相手の戦力に応じて武器の種類が変るのはいうまでもない。今回のように両者互角の場合に使用が許可されている最終兵器があることをノモはおもいだした。一度も使ったことはないので、威力のほどは未知数だったが、最終兵器といわれるほどだから、おそらくはかりしれないほど強力なのはまちがいなかった。
彼はただちに副官とともに宇宙船の武器庫にむかった。
最終兵器の保管庫をあけた二人は、その中央におかれた数トンはあるかとおもえる巨大爆弾に目をみはった。
「これは凄い」
「止むを得ん。この膠着状態から脱却するためだ」
「胴の中央に、爆弾の名前がしるされています。…なになに、祭り爆弾」
「なんだか恐ろしい名前だな。祭りのように大々的に爆発するというのだろうか」
できることならノモにしても、こんな物騒な代物は使いたくなかった。しかし我々はなんとしても第二の地球を獲得しなければならない。
「すぐに、投下準備だ」
爆弾をつみこんだ無人機はとびたった。
敵のレーダーに捉えられることなく低空を飛行して機は、敵陣営のほぼ中央地帯に爆弾を落とした。
「不発か」
投下後、何の変化もおこらないのをみてノモは、失望もあらわにいった
「なにやら音響がきこえてきます」
カダはセンサーの出力をあげた。するとノモたちの耳に、きいたことのない物音がきこえてきた。
「なんだ、これは」
その音は、しかし妙に心にしみいってきて、他の隊員たちもその音にあわせて体でリズムをとりはじめた。
「もう少し、様子をみよう」
3日後、無人偵察機が敵陣営の映像を送ってきた。爆弾が何らかの効果をあげたことは、その後相手側から一度の攻撃もないのをみても明らかだった。ノモは期待に胸をふくらましてモニターをながめた。
その彼の顔が、当惑げに固まった。画面ではいま、法被姿の若者たちが大勢で、神輿をかついでいた。コンピューターによる画像解析によって法被とか神輿のことをあとでしったノモだが、その後にあらわれる縁日の屋台や、その屋台を見て回る浴衣姿の大人や子供の楽しそうな顔つきをみていると、自分のなかの根源的なものを心地よく刺激されるような気持ちになった。
また別のモニターでは、これはきらびやかな衣装をまとった人々が踊っている。肌をあらわにした女や男たちが、歓喜に酔いしれダンスに興じていた。どのモニターにも、そんな人々の光景で満たされていた。その中には、どうやら敵とおもわれるみなれぬ服装の人間たちが大勢まじっていた。ただし誰も武器は所持していなかった。かれらの顔には一様にどこか子供のような無邪気な表情がはりついていて、周囲に展開する祭りの光景に我を忘れて魅入っている様子だった。
これらはみな祭り爆弾によって紡ぎだされた祭りの、音も臭いも感触もかねそなえたリアル立体映像だった。敵の連中がこれをみて、心を動かされ、好奇心に負けてながめにあらわれるところを、一斉攻撃するために作られた爆弾だった。
しかし、長期間宇宙船の機械に囲まれて過ごすノモたちにも、人間の温もりが熱く伝わってきそうな祭りの光景はたまらなく魅力的に映った。センサーからひっきりなしに聞こえ続ける祭囃子に、心を奪われない隊員が一人でもいただろうか。
みんなはいっせいに、戦うことを忘れ、武器を投げだして、祭りの中心地である敵の陣営めざして先を争うようにしながらかけだしていった。






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このストーリーに関するコメント

15/09/08 光石七

拝読しました。
なるほど、祭りは人を惹きつけ加わりたいと思わせるもの。
先に投稿されたスープレックスさんの作品でも思いましたが、祭りには平和へのヒントが隠されているのかもしれませんね。
面白かったです。

15/09/09 W・アーム・スープレックス

白鳥座の彼方の惑星で、祭囃子と法被姿の若者たちの担ぐ神輿が、どこまで祭を盛り立てるかはわかりませんが、そんな野暮なことはいわずに心から楽しみ浮かれるのが祭りと思い、その思いを爆弾に詰め込みました。
光石七さん、コメントありがとうございました。

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