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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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罠々(わなわな)バトルフィールド

15/08/04 コンテスト(テーマ):第八十八回 時空モノガタリ文学賞【 罠 】 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1728

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 給与はそこそこ、福利厚生はまあまあ。サービス残業はなく、やりがいが持てる成長企業。こんな記事がリクルート誌に載っていた。
 俺は、人生を賭ける会社はここだと確信し、入社試験を受けた。そして運良く合格。ホント嬉しかったぜ。
 ところがだ、これがとんでもない会社だったんだよ。
 社是は『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』。これってパクリだろ。だけどなんとなく、何が何でも組織はこうあるべき、てな思いが伝わってくる。
 されどもだ、実態は真逆。『情けは無用、仇は活力』、こちらの方が似合ってるぜ。
 てなてな具合で、当然社員の素行は、他人の成果は奪い取り、己の失敗は他人に押し付ける、となるよな。そのせいか職場には、罠、罠…、罠だらけなんだよ。だから毎日のお勤めは気が抜けないぜ。そんな一例が、ここに…。
 俺は仲間からの暖か過ぎるサポートを得て、スイスイと仕事してたんだよ。そしたらある日、あいつは暇ですよと上司にチクられて、いきなり3倍増しの仕事が回ってきやがったぜ。これに、ちょっと手伝ってくれよとメンバーに頼むと、手の平返したようにみんな知らんぷり。要は作戦通りちゅうやつだろう。
 それでもこん畜生と頑張ってはみたが、やっぱり出来映えは劣悪。これによりボーナス査定はD評価。とどのつまりが雀の涙。
 こんな俺に、チョーカワイソーと生中一杯だけ奢ってくれて、「次回も、みんなのボーナス原資確保のため、D評価に耐えてくれ」と迫られた。
「俺はお前らの米の粒かい? アホにすな!」と拳を上げてみても、「じゃ、お先に」と疾風のごとく消えて去って行きやがったの。

 職場にはこんな不幸物語がゴロゴロ転がっている。
 だけど、こんな文句鱈々の会社だが、俺はグンニャリとよじれながらも律儀に働いてきたんだぜ。
 で、今じゃ一端の中堅…どころジョージだよ。
 振り返れば、俺の同期なんツーのは、定番捨てゼリフ、「こんな糞会社、監理ポスト入りになっちまえ!」と吐いて、晩々と辞めて行ってしまったぜ。
 結果、我慢の残留組は俺以外に二人だけ。
「ホッホー、立派でごじゃりまする!」と相手を持ち上げて、あとはドンと地獄に突き落とす――褒め殺しのホツホー穴兄(あなにい)と、事ある毎に、「アンタ、***タデショ」と相手を縮み上がらせるタデショ姉さんだけ。
 おっと、補足させてもらいます。姉さんの「***」には、触っ/嘘吐い/誤魔化し、等々の恐怖ワードが好きに当てはめられちゃいます。
 こんなお二人さんは、戦場、そう、罠々バトルフィールドの戦友ってところかな。

 で、拙者の武器は、What ?
 うーん、これが、ないんざんす。
 それでも強いて言えば、攻め技ではなく、実にM的に、どんな罠にでも「へへへ」と笑い、一旦は生真面目に嵌まってやるという――どうでもなれ力、てなところかな。
 以前課長から、この企画のチーフはお前しか出来ない、だからやってくれ、と頼まれたことがあったんだよ。
 こんなの見え見えだよな、本来なら課長が率先垂範して進めなきゃならないプロジェクトだぜ。だけど失敗するかもとビビったのだろう、俺に押し付けてきたんだよ。俺は「どうでもなれ、へへへ」と笑い、あとは武士の情けで、「光栄のドンツキです」と罠に嵌まってやったんだ。
 ところが豈図らんや、弟知らず、成果が出てしまってさ。これで課長は得意のハシゴ外しを中止し、部長に「私の強力指導の結果です」って報告したんだよ。
 俺、蹴飛ばしてやろうかと思ったけど、「すべて課長のリーダーシップのお陰です」とここは譲ってやったよ。
 すると部長は、課長に向かって真顔となり、「君のような優秀な人材をこんな小さな部に閉じ込めておくのはもったいない。部長待遇で、大きな部署の責任者になって欲しい」と。
 課長にとってこれは嬉しいオファー、出世階段をまた一つ昇れるとニコリとし、「謹んでお受けします」とクイックレス。これに部長は間髪入れず、「常夏国の現地責任者として、帰国は永遠にないと覚悟し、向こうで骨を埋めてくれ」と堅い握手をされたんだよ。
 オッオー、これぞ後黒河(ごくろかわ)法王部長の十八番、位打ちだぞ。すなわち自分のポジションを脅かす部下に、高い役職を与えて浮かれさせ、破滅させてしまうという…平安朝の伝統罠だ。
 だいたい常夏国で業績なんて上がるわけないわな、と俺はショック死しそうな課長に祝辞を献上してやったぜ。
「夏、夏、常夏、ココナッツ、お祝い申し上げます。何かあれば、遊びに行きマンゴー」
 一方課長は半泣きで、独りごちりはりました、――「ハ・メ・ラ・レ・タ」と。

 事ほど左様に、我が職場はサラリーマンの小さな野望と大きな憎悪が絡み合う戦場、罠々バトルフィールドだ。
 だけど、これが…いとをかし…なんだよな。


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このストーリーに関するコメント

15/08/04 鮎風 遊

皆さまへ
表紙絵の写真は下記からお借りしてきました。

GATAG|フリー画像・写真素材集 4.0
著作者: Hernan Piñera
ライセンス: creative commons
ID: 201502261600

以上、よろしくご理解ください。

15/08/12 泡沫恋歌

鮎風 遊 様、拝読しました。

いや〜凄まじいというか、こんな生き馬の目を抜く会社は嫌ですね。
ライバルを蹴落としあった挙句、最後に誰が残るのか知りたい。

まあ、主人公のような「糠に釘」というか「暖簾に腕押し」「柳に風」みたいな
タイプが案外しぶとく生き残りそうな感じだよ。

軽い語り調なのが、ノリが良くて面白かったです。

15/08/14 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、拝読しました。

面白おかしく描いていて、その実情はサラリーマン社会の罠のかけあい、涙ぐましいものがありますね。

15/08/22 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメント、ありがとうございます。
その通りです。
組織では、当たり障りがない人が、結局最後まで残るようですね。
言ってみれば、それが「罠」ということを書いてみたかったのです。
よろしく。

15/08/22 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメント、ありがとうございます。
サラリーマン社会、結構スルメのような味がするところかなと。
みなさん、その時は苦労ですが、それはそれなりに面白い世界かなと。
まさに、いとをかし、です。

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