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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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難攻不落

15/08/03 コンテスト(テーマ):第六十一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1239

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何百と何千という超ド級宇宙船がならんでいる光景をみると、さしもの広大無辺な宇宙空間といえども、せまく感じられるほどだった。
最初は、わずか数隻の、それも小型船どうしの遭遇にすぎなかった。
その小型探査艇ハルカ号にのっていたヤマガタ船長こそ、いまや東軍団の総司令官として全艦隊の指揮をとる立場にあった。
「あれから30年がたった」
述懐気味にヤマガタはつぶやいた。
どこのものともしれない宇宙船と、彼の艇が宇宙空間でばったりであった。蛇座のはずれに位置する、非武装領域でのことだった。
長い間のにらみあいの末、らちがあかないとみたヤマガタは、こちらからコメントを送ってみた。だがその東宇宙共通の電波信号も、相手の完全な沈黙によってはねかえされた。
そのことから彼は、もしかしたら相手からもなんらかの呼びかけがきているかもしれないという希望的観測がめばえたが、意思の疎通が不可能な現状では、本当のところはなにもわからなかった。
彼は何より、先方の敵意の有無を確かめたかった。とはいえそのために、こちらから武力行為をしめすことは厳につつしまなければならない。うっかりそんなことをしたらさいご、相手の報復攻撃に正当性をあたえることになりかねない。
相手もこちらも、偶然にも3隻だった。なんの伸展もないまま、いたずらに時間ばかりが過ぎていった。近くの基地から味方の宇宙船がかけつけてきたのは24時間後のことだった。このときほどヤマガタがほっとしたことはなかった、すでに相手方には、数隻の援軍が到着していたのだったから。
それからも味方と相手方に、じょじょに援軍が集合しだし、いくらもたたないあいだにあたりの宇宙空間にはむかいあう双方の宇宙船でひしめきあった。
ヤマガタは、第一発見者として今回の遭遇劇のリーダーを任じられた。
宇宙開拓史において、いまだかつて他の天体の知的生命体との交流の記録は一度もない。その最初の人間になれるかどうかがかかっているだけにヤマガタも、
「なんとしても先方と接触をとりたいものだ」
とおもわず肩に力がこもるのはしかたのないことだった。
だが相変わらず相手方からなんの応答もない膠着状態のまま、1年がすぎ、3年がすぎ、そして10年が経過した。その間東宇宙連邦としては考えられるあらゆる手段を講じて相手方との接触をはかったが、ただの一度もそれらが功を奏したことがないのはいまをみればあきらかだった。
10年のあいだに、相手方、またこちらの船はさらにいっそう数をまし、造船技術の向上によってその機能、おおきさも比較的に進歩し、いまや大都市並みの宇宙船が何隻も宇宙空間に浮かぶまでになった。それは相手方も同様で、まるでしのぎをけずるかのように大型化する一方の船が夥しい数、わが艦隊に対峙するようになった。
「攻撃をしかけてみてはどうですか」
血気にはやった部下が、ヤマガタにそんな提案をした。司令官は渋い顔でいいかえした。
「もうそんな時期はすぎさった。船が少数ならまだしも、いまや双方何百隻もの宇宙船が集結しているとあっては、ちょっとしたきっかけで、大戦争にもなりかねない」
だが、これまでになんどか、武力衝突がおこりそうになったのも事実だ。いまの部下のような、短気な人間がヤマガタの補佐についたりすると、なにかとけしかけては相手にむかって一発ぶちかますことを提案した。いちどなどはじっさいに、宇宙戦艦がのりだしてきて、その巨大な主砲の照準を相手方にむけたことがあった。それを抑え、おもいとどまらせたのも、ヤナガタのけん命の努力があったからにほかならない。宇宙史に、戦争犯罪人として自分の名がとどめられるなんてまっぴらな話だ。
ヤマガタはそして、いつかのときに、相手方の宇宙船が不穏な動きをしたのをみかけたことがあった。みるからに武力装備をした艦隊の前面に、ぼっかりと円状の窓のようなものがあき、その中心に青からまばゆいオレンジに光がひらめくのがみえたときはさすがに彼も非常な緊張感にみまわれた。しかしその窓の中の光がしだいに弱まっていくのをみた彼は、相手方にも自分のような、血気にはやる連中の鎮め役がいるのだと思ってなんだか安堵をおぼえた。
さらに5年がたった。そのころにはヤマガタは、全艦隊の指揮権を手にしていた。権力を手にいれると、さしもの穏健派の彼も、このこおりついた膠着状態をなんとか打破したい衝動にときにかられることがしばしばあった。
むかいあう両者の勢力たるやいまや、想像を絶するほど拡大していた。いちいち基地からでむくのも大儀なので宇宙都市が建設され、そこから何艘もの宇宙船や艦隊が出動するようになっていた。
宇宙都市では大勢の人間たちが生活し、様々な人々の人生が繰り広げられていた。大勢の子供たちがそこで誕生して育っていた。子供たちにしてみれば、ヤマガタにとっては脅威の相手も、うまれたときからみしっている単なる景観のひとつにすぎなかった。一人乗り宇宙艇に乗れる年代になるとみな、すきかってに宇宙をとびまわり、むこうからとんでくる宇宙艇となれあっていっしょに飛行するようになっていた。それが相手方の宇宙都市からやってくる自分たちとおなじような年代の子供だとわかっても、頭の固い大人たちとちがって柔軟性に富むかれらは、平気でうけいれ、まじわりあった。ヤマガタたちが難攻不落とおもっていた相手方のゲートも、若い連中にとっては軽々と越えられる敷居にすぎないようだった。
いつのまにか、双方の人々がまじわりあっている事実をしったヤマガタだが、べつにそのことにはなにもいうことなく、あいもかわらず総司令官の椅子にすわって、相手方の動きににらみをきかしていた。それ以外に自分にはなにもすることがなかった。おそらくは相手の総司令官も同様に。


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