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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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読者を死に至らせる作者の罠

15/07/25 コンテスト(テーマ):第八十八回 時空モノガタリ文学賞【 罠 】 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1338

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この作品を読んでいるみなさんへ、忠告します。
いますぐ読むのをやめなさい。
読んでもためにならないとか、面白くないとかいうことではありません。
その理由なら、これまでの私の作品すべてについていえることで、わざわざ断るまでもないでしょう。
この作品に関して読むのをやめろというわけは、こうです。
この作品を最後まで読み終えたとき、あなたはまちがいなく死んでいることでしょう。
病死とか、ショック死でなく、それは殺人という方法で。
あなたはこう反論するかもしれない。お前の作品は、およそ毒にも薬にもならないしろもので、そんなものを読んだからといってなぜ、生死の問題におよぶのかと。
もしもこれが雑誌に掲載とか、あるいは書物で著わされていたなら、その昔、米のミステリー作家の書いた短編に、自作の掲載された書物を手にした人物を復讐目的で作者自身が背後から銃でねらい撃ちするという内容の作品がありました。ウェブで発表される作品でどうして特定の人物を殺害したりできるというのか。とあなたはいいたいのですね。まことにごもっとも、それは不可能というものです。だいたい私自身が何者で、どこの馬の骨ともしれない人間なのに、その人間がサイトに発表した作品に目をとおす人物を特定するなど、それは神様にだってできない相談です。
私はこれまでただの一度も特定の人物などといったおぼえはありません。ターゲットは、不特定多数の読者なのです。そうです、これを読んだすべての人が、一人残らず殺されるといっているのです。
では、どんな方法で。それをこれから説明します。一言いっておきますが、いまここで読むのをやめれば、あなたは無事でいられます。話はとびますが幕末の時代、京都は壬生の屯所で、あの鬼の副長土方歳三が新しい隊士を徴募しているときに、いったん新撰組にはいったものには破れば切腹という厳しい戒律があるが、いまならこのまま立ち去っても大丈夫だといったのとおなじです。いまならあなたは大丈夫なのです。いたずらに好奇心のおもむくままに、活字を追いつづけているとろくなことにはなりませんから念のため。
ところで、その殺人方法ですが、じつはそれはラストまで読まないことにはわからないようになっていて、途中で明かすわけにはいかないのです。映画レビューのネタバレ禁止と同じです。どうしても知りたいという人は、どうぞ、末尾まで一足とびにお読みください。とめはしません。
もうこのあたりでたぶん、このページをのぞいているものは一人もいなくなったのではないでしょうか。それはなにも、殺人がどうのこうのというより、話の進め方がなってないからかもしれません。それは認めます。
それでは、いよいよ本題にはいりたいと思います。
この作品にはひとつ、恐ろしい罠が用意されています。いったんかかると、二度と脱け出すことの不可能な罠です。この罠にかかったら最後、あなたは死ぬまでそれからぬけだすことはできないのです。その罠が何かは、これまたラストまで読まないことにはわからない仕掛けになっています。
もしかしたらここまでおつきあい願っているかもしれない稀有な読者にといかけます。あなたは夜よく眠れていますか。食欲はおありですか。健康のためになにかをやっていますか。交感神経ばかり酷使して攻撃的なアドレナリンの分泌を盛んにしているのではありませんか。ゆっくり深呼吸してください。複式呼吸です。4秒かけて吸い込んだ空気を6秒かけて吐き出してください。それを5回もくりかえせば、副交感神経があなたをリラックスさせ、いらだちや興奮をしずめてくれることでしょう。一度窓を大きくあけて、室内に新鮮な大気を呼び込みましょう。このストレス社会に生きていれば、毎日神経を逆なでされるような経験ばかりの連続で、まともな人間関係を築けないのが現状です。
いまはやりの、断捨離と言う言葉がありますよね。いらない物、ガラクタを捨て、執着から離れることとウェブのコトバンクにのっています。
あなたも、あなたという執着を、一度絶ってみてはいかがです。あなたの中にはいま、いらないものがいっぱい詰まっています。そのため心が澱んで、血行が滞っているのではありませんか。
あなたの悩ませている様々な苦労の種を、ゴミとみなして、きれいさっぱり捨ててごらんなさい。そんなことできるものか。その苦労の種こそが俺自身なんだからというあなたの反論がきこえてきそうです。おっしゃるとおり、それがいまのあなた自身なのです。あなたが大切にかかえこんでけっして離そうとしないあなたです。
一度ゴミ箱を空にしてみませんか。なにもかも捨て去ってはじめてみえてくるものもあるのです。それが新しいあなたかもしれない。そのあなたと向き合ってみる勇気をもつのも悪くはないと思いますよ。

―――こうして過去のあなたは死にました。


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このストーリーに関するコメント

15/08/11 光石七

拝読しました。
ショッキングな冒頭ですが、本当に読むのをやめたらこの作品の面白さを味わえないわけで……。途中の再三の警告も無視して最後まで読みました。
結果……確かに私は作者の罠にはまってしまったようです(笑)
こういう趣向もいいですね。
何だか心が軽くなりました。

15/08/12 W・アーム・スープレックス

この作品は、途中考え考えしながらようやくラストに辿りついといった迷走型で、最後のオチがなかなかみえてこないのが楽しみでもあり不安でもありました。
警告を無視した方が何人おられるかはわかりませんが、光石さんの心が少しでも軽くなっただけでも、大きな成果だったと思います。

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